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暗部所属の新人工作員です。初任務として皇帝陛下の偽妃を演じていたら溺愛されてしまいました。……これっておかしくないですか?  作者: たけのこ


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48.面接?

オーバーラップ公式ブログより、刊行日、担当イラストレーター、あらすじ等が公開されました!


是非ともご確認ください!

「い、いいのかよ? おばさん坊や呼びしてるけど、宮廷勤めの偉い人なんだろ?」


「わ、わからぬ……」


「アンタらは静かにしてなさい」


 シリルとこそこそ話してエマ姐さんに注意されている間にもデボラおばさんの面談? 面接? は続く。

 デボラおばちゃんが陛下を坊や呼びしてるのを止めたいけど、陛下はマジで気にしてなさそうなのがね。


「てっきりレイシーの上司はあの眼鏡だと思ってたんだがね」


「……彼も上司の一人ではあります」


 眼鏡って多分ベルナール様の事だな。確かに最初に私を見付けて連れて行ったのはあの鬼畜眼鏡である。

 実際に直属の上司だし、おばちゃん達が面識あるお偉いさんと言えばベルナール様しか居ない。


「そうかい、んで私達の可愛い家族にいったいどんな仕事させてんだい?」


 大臣達の前でイチャイチャバカップル演技をしています――とは言えないな。


「それは言えません、機密事項も多いので」


 偽妃の正体が私である事はもちろん、暗部に所属しているなんて事も漏らしちゃいけない。

 つまりデボラおばさんに話せる事はほぼ皆無と言っても良い。

 果たして、何も答えていないに等しい回答に満足してくれるのか……ここは何とか引いて欲しいが。


「定期連絡も帰省も途絶えて、私達家族がどれだけ心配していたか……アンタに分かるのかい?」


「弁解のしようもない。ただ我々には彼女が――レイシーの力が必要だったのです」


「ふん、どうだかね……この娘に妙なことしてないだろうね?」


 大臣達の前でバカップル演技やるのは妙なことの内に入るのだろうか? ……入りそうだな。


「むしろレイシーがあの眼鏡の上司に悪戯をしていますね」


「……レイシー?」


「あー、いや、うーん? そんな事もあったような、なかったような……?」


 やべぇ! こっちに飛び火して来た! 陛下もなんでそんな事をバラすのさ!? お陰でエマ姐さんのこめかみに青筋が立ってんじゃん!


「――はぁ、なんだい、良い関係を築けてるみたいじゃないか」


 あぁ、デボラおばちゃんにそんな呆れた目で見られるなんて……いやまぁ、いつもの事か。問題なし。天気明瞭、空気清浄、元気りんりん勇気100倍。


「現実逃避で誤魔化してんじゃないよ」


「レイシー、真面目にしようぜ」


 解せぬ。エマ姐さんとシリルの二人に怒られた。


「何処ぞの馬鹿貴族に手篭めにされてやいなかと心配してたんだがね……むしろウチの馬鹿娘が迷惑をお掛けしていたようで」


「いえいえ、彼女が居るだけで職場が明るくなりますから」


「はっ! 物は言いようさね」


 その場に居るだけで周囲を明るく照らす光のレイシーちゃんとは私の事よ。

 先ほど私を注意した二人にドヤ顔をしてみせる。


「それで? アンタはレイシーとどんな関係なんだい? ただの上司部下じゃないんだろ? こんな掃き溜めまで着いて来るくらいだ、なんかあるんだろうさ」


 うーん、まぁ、皇帝陛下と新人工作員だから……確かにただの上司と部下ではないかも?


「夫婦です」


 そうそう、夫婦でもあるから単純に上司と部下です! っていうのもなんか違う気が――


「「「……は?」」」


「「「「「えっーー!!??」」」」」


「ちょちょちょちょちょ」


 間抜けな声を出すデボラおばさん、エマ姐さん、シリル、そして驚きのあまり叫んでしまう覗き見していたチビ達。

 それらに少し遅れて何を言われたのか理解した私の口から言葉にならない声が連続する。


「シル? シル? 何を言っているんですか? みんなビックリしてますよ!」


「そうだな、やはり事前に大まかな事情をしたためた手紙を寄越すべきだったか……お前が急に実家に帰らせて貰うなんて言うから、何も準備ができなかった」


「言った! 言ったけど!」


「眼鏡の前で三行半を叩き付けられた私の気持ちが分かるか? 新婚なのに妻から愛想を尽かされたのかと焦ったのだ」


 待て待て待て待て落ち着け落ち着け、これは陛下の罠だ! 私を揶揄って遊んでるんだ!


「お姉ちゃんサイテー!」


「意外とやるわね、大人のオンナだわ!」


「お姉ちゃん喧嘩したの?」


「そんな……お姉ちゃんが、結婚……うわーん!」


「姉貴はてっきり嫁の貰い手が居ないものと思ってた」


「チビ共ー! これは違うからー!」


 私まだ結婚してないから! 偽装結婚しかしてないから! それはそれでどうなんだ!?


「ははは、普段場を掻き回す側のお前が慌てた姿を見るのは愉快だな」


「ふ、不覚……!!」


「とまぁ、この様に気安い仲ではあります。今回の帰省に同行したのは、善意から彼女を手伝いたいと思ったからです。彼女の休暇が終わるまで、雑用でもなんでも頼ってくれると嬉しい」


「なんっ、そういう……あれね、分かってましたよ、最初から、もちろんね」


「お前、声が震えてるぞ」


「黙れシリル」


 私はいたって平静だ。動揺など欠片もなく、泰然自若として巌の如き心持ちよ。


「なんだか馬鹿馬鹿しくなってきたね」


「まぁ、レイシーが楽しそうで良かったじゃない?」


「そうは言うが、別の問題が浮上してきたみたいで頭が痛いよ」


「ご心配なく、彼女の事は大事にしていますよ」


「どうだかね」


 私の事を人妻呼ばわりするチビ共に「あれはあの人の小粋なジョークだよ、笑ってあげて」と説明して回っていると、ふとある事に気付く。


「そういえばシルは何処に寝泊まりするんですか? ウチに泊まります?」


「いや、貴重な食糧や毛布を分けて貰う訳にはいかない。野営には慣れているから気にしなくても良い」


「そういう訳にはいきませんよ」


 陛下を放り出して貧民街に野宿させるとか、ベルナール様が聞いたら絶対に許してくれない。

 たとえ陛下本人が取りなしてくれたとしてもお仕置きは確定ルートだ。


「客人が変な遠慮するんじゃないよ。まぁ、粗末な食事に狭い寝床が嫌だってんなら強要はしないがね」


「嫌ではない。そういう事なら世話になろう」


「ほっ」


 良かった。これでベルナール様のお説教は免れた。


「まぁ、いいさね……ただこれだけは言っておかないとね――」


 眉間にしわを寄せていた顔から一転して柔らかな笑みを浮かべ、デボラおばさんは私に両手を伸ばす。


「――おかえり、馬鹿娘」


「……ただいま」


 心配掛けちゃったなぁ……もう少し筆まめになろう。

書籍版の担当イラストレーターは内河先生です!


もうめっちゃ素敵なイラストが届いているのでお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
事ある毎に外堀を埋めようとしている様に動く陛下、ステキ――! 夫婦です  夫婦です   夫婦です ただなあ。 上司と紹介した相手を呼び捨てにしてるんだよなあ。 ただならぬ関係に見えても仕方あるまい( ̄…
陛下が野営慣れしてるってほんとこの国の不安定さが垣間見れる それはそうとからかわれるレイシーちゃんがカワイイ
そうそうレイシーちゃんがちょっとアレなせいでちょくちょく忘れるけど陛下もレイシーちゃんと同じようなタイプでしたね!
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