#8 再会と終わらぬ悪夢
モーテンさんに続き、グレーテルも処刑された。まだ熱が出ている。俺は、攫われた時の事を思い出していた。あの時、入り口の影から視線を感じていたんだ。…いや、来る途中からだったか。何だったのだろうか、あれは。
「皆さーん!報告があります、広間に集まって下さい。」
おい、さっき解散したばかりだよな?今、夜だよな?…仕方ない、行くか。
「お、揃いましたね。良い報告があります。プレイヤーが一人増えます。」
「え、このタイミングで?」
「このタイミングで、です。皆さんより能力の汎用性が高そうですし、真面目で正義感の強い人なので、一回目の投票までは処刑されてほしくなかったのです。」
え、運営がプレイヤーにそういう感情持っていいの?
「それで、増えるプレイヤーって誰なの?」
「今向かってますよ。…あ、桃太さんなら知っている方ですよ。」
え、俺が?親…とか友人…とかじゃないよな⁉
「ふぅ、迷いましたよ…あれ、此処ですか?…!」
追加プレイヤーは、紫の瞳に蒼色の髪をした男性だ。服装は、丈が短い黒のスーツに茶色のベスト。…確かに、俺の知っている人物だ。何年ぶりだろうか。
「もっ、桃太様‼無事で何よりです…!」
「じ、ジョンさん…」
「“さん”は結構ですよ!…お久しぶりですね。」
そう言って彼はお辞儀をした。皆は唖然としている。そう、彼は昔家で雇っていた執事なのだ。俺の家は普通と少し違うらしく、数年前まで執事を一人雇っていた。それから今まで執事はなしだった。
「…えっと、どなた?」
「申し遅れました。私はジョン・ツーファル、ドイツ出身の日本住みです。数年前まで小河家で執事をしておりました。」
「…え、桃太ん家って金持ちなの⁉」
「わぁ、執事さんって初めて見ました!」
興奮するなよ、俺も“普通の家”がどんなかよく分からないんだよ。
「ジョンさんは何語話すんですか?」
「普段は日本住みなので日本語です。ですが、ドイツ語と英語も話しますよ。」
ジョンは三ヶ国語話せたのか…。それにしても、何でスーツ着てるんだろう。あの日は休日の筈…。
「でもジョン、何でそのスーツ着てるんだ?休日だろ?というか、何で巻き込まれたんだ?」
「…まぁ、桃太様が存じていないのも仕方ないですね。主人様や奥様との間で、私を再雇用していただく事になっていまして、桃太様が招待されたパーティの当日からだったのです。それで、心配との事で私は貴方が向かう途中見守っていました。」
そ、そうだったのかー!じゃあ、あの時の視線はジョンだったのか…。
「それで…桃太くんが襲われるのも見た、と?」
「はい。ですが相手は覆面でしたし、素手の私一人では敵いそうにありませんでした。そうしていたら、見つかったのです。」
俺が倒れてる間、そんな事があったのか…。
「再会を喜ぶのもいいですが、そろそろ次のテーマを発表しますよ。次のテーマは、“人任せ”です。」
ひ、人任せ…?
「協力するのはいい事ですが、相手に頼りすぎてはいけません。年上に頼りすぎたり、従者に任せきりにしたりはしないで下さい。体調を崩した方は少し考慮します。」
後者の例昔の俺ならジョンに任せてただろうけど、今はそんな事しないから。
「では、今から24時間頑張って下さい。スタートです!」
こちらの意志を無視する始まり方にも慣れた。今は夜だし、とりあえず寝よう。
「…桃太様、体調崩されてます?熱、ありますが。」
「あぁ。何時間か前、毒を盛ったサラダを食わされてな…。解毒薬飲んだし、暫くしたら治る筈。」
「毒⁉…はい、テーマもあれですし、私も部屋に戻りますね。」
ジョンとも別れ、部屋で諸々済ませて寝た。
翌朝、体調は回復していた。さて、食事をとって探索するか。
「桃太、起きてるー?大丈夫そうならごはん食べて仕掛け解くわよー。」
アンの声だ。そういえば、今日は仕掛けを解く続きをする予定があった。グレーテルはもういないけど…。とりあえず廊下に出ると、アンが待っていた。
「あ、来たわね。料理はジョンさんが作ってたわ。ヘンゼルさん、料理は自信ないみたいで。ジョンさんが食事係継いだらしいわ。」
ジョンの料理かぁ…久しぶりに食べるな。
食堂に着くと、皆もう食べ始めていた。チャーリーさんやジョン、ヘンゼルが席を取ってくれていた。
「待たせてごめん…」
「大丈夫だよ。体調はどう?」
「もう熱も下がったし、動けそうだ。ありがとう。」
「そう、良かった。それじゃ、今日は仕掛け解く続きを…」
「あ、あの!」
ジョン、どうしたんだ?
「迷惑かもしれませんが…私も行っていいでしょうか?」
「勿論良いよ。皆は?」
「うん、人数多いと手っ取り早いし。」
「私も良いわよ。桃太は?」
「あぁ、勿論良いぞ。」
「ありがとうございます!…では、お願い致します。」
ジョンが加わるって心強いな。頭良いし、体力あるし。
「あ…料理が冷めてしまいますので、早めに召し上がり下さい。」
あっ、そうだった!…懐かしいし、何より美味しい!
全員食べ終わり、ゲーム部屋に向かった。




