第8話_ミコちゃん提唱、ノイマン家再生計画!
「ここです姉上。母上の部屋は。もう何日前だかも忘れましたが、母上はその日、亡くなりました」
「そして伝承楽団の芸術家たちによって生きていたときよりも魅力的な朽ちない死体へと変えさせられ、その美しさに惚れ直した父様はこの通りわたしたち兄妹の育児を放棄し、ここにひきこもっているんですの。母様の部屋は独自に簡易キッチンと冷蔵庫があるから、父様もずっと部屋にいられます。そう、母様の部屋は『家の中の家』みたいに、トイレや洗面所、バスルームも備え付けだったから……ずっと部屋にいられるの」
「なるほどね。そういえば30年くらい前に流行ってたっけ。『ハウス イン ザ ハウス』、『リトル イン ビッグ』をキャッチコピーにした二重構造家屋。この屋敷もその類なのね」
「さすが姉様! そうなのです。この屋敷は29年前に建てられた二重構造の屋敷なのですわ。わたしたちの祖父母の代に建てられたこの屋敷、売りにしている『自活部屋』は父様と母様の二部屋のみ。だからわたしたちは飢えてましたの」
「かわいそうなキティ。でも大丈夫よ。今日からお父様がマトモに戻るまでわたしが面倒見てあげるから。まずはその旨ちゃーんと本人に伝えなきゃね」
そう言ってミコは部屋のドアノブに手をかけると、バタンと音を大々的に響かせて乱暴乱雑そして力任せにドアを開く。ミコが初めて見せた意外とも言えるガサツさや乱暴な一面もそうだが、衝撃的だったのは部屋の中――。
死した妻の顔を持ち上げ、唇を重ね濃密に吸い合う父親というネクロフィリア――屍姦症行為の現場の方だった。父親の異常性癖、異常性欲、死体性愛を目撃し、キティとアイズは顔を引きつらせるより先に身体そのものが固まってしまった。
そんな中前に一歩、部屋の中にミコは踏み出し、妙によく響くまるで楽器のような手拍子の音をパン、パンと二回鳴らして目撃者の存在を音で知らせると父――クェンティンが振り向く前に、その背中に詞の鏃を射し込んだ。
「夫婦円満の秘訣は何度なく惚れ直し惚れ続けることにあるとも言いますが、他方で気持ちが通じ合わねば何処まで行ってもすれ違い。愛にならない現状は、やがて憎悪なり偏愛なりにカタチを変え、狂気の沙汰へと人を動かすとも言いますね。さてクェンティンさん、死した妻の死化粧した美しさに惚れ直して、抵抗できないのをいいことに一方的に愛欲を押し付けているあなたの行為、どちらにカテゴライズされるのかしら?」
皮肉たっぷり挑発的な口調でミコは問いかける。その詞はキティの、アイズの、そしてクェンティンの耳にも入る。するとクェンティン。濃厚な口づけをやめて妻ベアトリクスを元通り寝かせると、こっちにこわーい表情を向けてきた。
「なんだお前は? 夫婦の営みにケチつける気か? 大体何勝手に家に入り込んでいるんだよ。誰の許可を取った? その上俺とベアトの子供を我が物顔で侍らせやがって。いや……これは我が子の危機意識の低さが招いた失態か。躾けなきゃな……親父の鉄拳家財でバーンだ!」
躾、と称してクェンティンはそこらにあった箱やら椅子やら家財道具をミコの横に控えていた、まだ部屋にも入っていない――否、入れなかったキティとアイズ目掛けて雨霰と投げつけてきた。ただでさえ異常な光景見せられてその場に固まった二人である。避けられるはずもない。方程式はピンチと出る。
が、そんな兄妹のピンチを救ったのは一時的な「ごっこ」とはいえ『姉』になっているミコである。右足を浮かしてちょいと揺らした後、とんでもない技名と共に動いた。キティとアイズを守るべく。
「『親父の鉄拳家財でバーンだ!』……返し」
そう平然と呟いてミコは身体を翻し、右足で一回転の回し蹴り。その過程で飛んできた家財道具全てを弾き飛ばし、クェンティンの方に蹴り返してしまったのだ!
「ん? 返し? ってうお!」
悲鳴を上げるが既に遅し。クェンティンはミコに蹴り返された家財道具の集中投下を受け、死した妻が眠るベッドの横の床に倒れ、次から次へと落ちてくる家財道具に潰されて、完膚なきまでに身動きとれない状態にされてしまったのだ。
(姉様……すごーい!)
ミコの美技は固まってしまったキティを感心させると同時に、硬直状態だったキティが再び動けるようになれる呼び水となった。動けるようになるとすぐにキティはミコの手に縋る。反対側でアイズも同じようにしているのを見て、ああ……兄妹だなと思ったものだ。
そんなスキンシップをしている間に、思わぬ反撃を食らった父クェンティンは家財道具を剥げ捨てて起き上がり、こちらに不満げな表情を見せつけてくる。
それを意にも介さずミコは自分のペースで一方的に話しかけた。
「始めましてお父様。わたしはミコ=R=フローレセンス。今日からしばらくキティとアイズのお姉ちゃんをやる女。あなたが父親として再起するまでの姉妹ごっこの御世話役。それだけよ、じゃあね〜」
本当にそれだけ。喋り終わったミコはおもむろどころかくるりと素早く身を翻し、キティとアイズの手をとって部屋を後にした。開けっ放しだったドアは、さりげなく影帽子のがま口チャックから出した黒い足で蹴り飛ばして閉めた。まさに無礼講。
「姉様……これでよかったの?」キティは下から上目遣いでおずおずもじもじとお伺いを立てるように訊いてみた。言いたいことにも先があり、それを言おうとした矢先、兄に機先を制された。物凄く悔しい。
「あれだけじゃ姉上がボク達の世話をするってことしか伝わってませんよ。姉上はなによりもリバムーク・プロトタイプを蒔く為に我が家に来てくれたって、言わなくていいんですか」
「いいのいいの。そんなのあとで」
キティが言いたかったこと、アイズに言われてしまった質問第2弾はミコに素気なく弾かれた。「ええ〜」とショックを受けずに済んだキティは兄が急ぎ足のせいで被害を被ってくれたことに感謝しつつ、ミコの真意を計りかねていた。するとミコはこちらがなにも言っていないのに、淡々トントンと訳を説明し出したのだ。
「一度に全部情報をくれてやるとね、聞いてる奴の欲を掻き立てるのよ。そういうの、非力なあなたたちの立場からして善くないと思ったの。リバムークの種持ってますなんて言ってごらん? お父様はその場でキティから種を奪い取ってたでしょうに。それよりは黙ってことを進めていざ花が咲いたとき、その圧巻の光景でもって正気に戻した方が面白いじゃないの。そりゃ子供心理として父のネクロフィリアが後2ヶ月も続くのは耐え難いものがあるでしょうけど……そんなの忘れるくらい、わたしが『お姉ちゃん』として愛をあげるよ。だから、勝負の時までお父様は放っておきなさい」
「姉様……」うっとりしながらキティが聞き入っていると「それとね」とさらにミコは話を続けた。
「人生の先輩として&お姉ちゃんとして忠告しとくけど、口が軽いと長生きできないわよ。『軽口』と『好奇心』、そして『秘密主義』は、人生削るし、身を滅ぼすわ」
「お、おお……なるほどー」
反対側のアイズがミコの発言に勢い呑まれたといった風に辿々しい口調で相槌を打つ。キティはそれをじとーっとした半開きの目で眺めつつ、ミコの詞を噛みしめていた。
(確かに「好奇心は猫を殺す」って言うものね。他ふたつは姉様がすでに二周した人生で体得した心得――大切にしなきゃ)
キティはミコが教えてくれた教訓を何度も心の中で繰り返し唱え、頭が悲鳴を上げるほどに厳しく叩き込んだ。深愛する姉が教えてくれた、長生きのコツを。
だがその行動は決して声には出てなくても、繋いだ手越しにバレバレだったらしい。ミコはキティに追加で助言した。
「覚えようとしてくれてるのは嬉しいけど、頭だけじゃどうにもならないわよキティ。こういうのは頭だけじゃなく身体で、すなわち経験、身体でも覚えてはじめて体得できる。忘れずにいられるの。辛い経験前提なのはちょーっと未来に腰が引けるけど、そのときは今叩き込んだ頭の方で思いだして。『引き際』だって、撤退して。そうして危機回避できてはじめて、わたしの詞が身に染みるはずよ」
「姉様……うん! わかりました!」
キティはめいいっぱいの愛想を振りまく顔をしてミコの気持ちに応えた。人生善いことばかりじゃない。時にはゼロを通り越してマイナス、奈落の底まで墜ちる日もある。そういうときに役立つのだろう、ミコが教えてくれた教訓は。
そうして自然と会話が終わり、三人は黙って廊下を歩き、花畑へと向かっていった――。
「こりゃひどいわ。ここまで病んだ畑を見たのはわたしもはじめてよ」
屋敷を出て道の向こう側に位置するなだらかな丘陵――母ベアトリクスが花畑にしていた場所の惨状を見てミコが驚嘆の詞を発する。花は朽ち、茎は腐って土に倒れ、土壌を歪な色に染めている。腐った空気が充満し、虫さえも寄り付かない場所となっていたかつての花畑を見て自然と飛び出たミコの発言。反論する余地などない。事実花は枯れ果てて、母様も死んだのだから。
それでもミコはやはり大人にして姉、そして知識人であった。その眼力でもってこれがなんの惨状なのか、説明を始めてみせたのだ。
「これは厄介なモノを発症したわね。まさか壊発腐眠症だとは……お姉ちゃんも予想外」
「ええっ! 姉上はこの病気、知っていらっしゃるんですか?」
アイズがびっくりだーって顔をして訊くと、ミコは「ええ」と頷いた。
「壊腐病素子っていう細菌でもウイルスでもない病気の素が発症したってことよ。風に運ばれこの土地に根付き、その数を増やし発病まで潜伏していた。お母様は一番この花畑の手入れをしていたんでしょう? だったら、なんらかの経路で病素が潜り込んでも不思議じゃないわ。それが不幸にも発症したってことなのでしょうね。実に善くない。手は早急に打つべきね。キティ、アイズ、手を出して」
はい――キティとアイズは言われた通り、ミコの取りやすいように手を持ち上げた。ミコはその手を自分自身の手で強く握ると、いきなりビリビリ、二人を痺れさせた。
(なにこれ、電流? いや……なにかエネルギーみたいなものが全身を駆け巡ってる)
とっさにミコと繋いでいた手を離し、全身の様子を確かめるキティ。それは自分固有の反応だと思っていたが、そこはやはり兄妹である。さっき心で呟いた詞を音で聞いたので視線を向けると、アイズもおんなじようにしていた。それを見た途端キティはげんなりするが、それ以上に身体がリフレッシュされていくのを感じていた。
身体が洗われ、気力に満ちる。ほどなくしてその種明かしはミコの口からもたらされた。
「免疫信号と浄化信号をブレンドしてあなたたちの身体に流し込んだわ。これであなたたちの中にある壊腐病素子は消滅させられるはずよ。ま、ちょいと媒体にしたエネルギーの量が多かったかもしれなかったかもだけど。甘んじて受け取りなさい。そして……」
「そして? なんですか、姉上?」
「見てみなさいよ。花畑の方」
ミコがそう言うのでキティとアイズは俯けていた視覚を広げ、その眼を死して腐って朽ち果てた花畑に向け……目を丸くした。
なんと腐敗した花や草が、黒い炎に覆われて、燃やされていたのだから。驚かない方が無理だろう。キティもアイズも同時にミコに顔を向けると、それを待っていたかのようにミコは活き活きと話しだす。
「あれこそ影の秘術のひとつ、焼却影炎。わたしは自分以外の影にも秘術を使うことができるからね。その応用技がアレ。腐敗し腐臭を放つ死んだ草花の影を意味変え火に変え炎に変えて、絶対に逃げられない黒い影の火で焼いてるわけなのよ。もちろんあなたたちにしたように信号も付加しているわ。浄化信号と乖離信号をね。免疫信号は付けてないわよ。意味ないから。この花畑を一度焦土に変え、その上で再生させる。ちなみに消火の心配はないわよ。影の炎は元である草木を燃やしつくして跡形もなくした後、影の理に従って自然消滅するからね」
珍しく得意気に話し、胸まで張ってみせるミコを横に、キティは呆然と焼畑農業ライクな灼熱地獄を眺めていた。いや、地獄という表現はおかしいかもしれない。なんせ燃えているのは病を抱えて死に至り、挙句の果てに母の命まで奪った病魔達である。だから地獄という表現に一瞬疑問を感じたのだが――しばらく眺めていたら腑に落ちるものを感じた。
(ああ、そっか……母様を殺した憎い連中だからこそ、地獄で悶え苦しみ死にゆく結末がふさわしい。元から似合ってる悪だからって地獄煉獄以外の選択肢なんてないわけね。もっとも、姉様にしてみたら、単純に効率の話なんだろうけど……やっぱり深読みしちゃうよねー)
キティは考えをまとめ、8歳の身長から黒炎の煉獄を眺め直した。ミコが説明したように、病魔の処理だけに「浄化」という詞じゃないかなんて、最初こそは思っていたものの、生死の狭間で繰り広げられる喧騒にはやはり「地獄」という詞の方がしっくりくる。
合点がいったところでその行く末を見届けようとしたキティだが、そうは問屋が卸さない。というより、ミコがそうさせてくれなかった。「さーて、行きますかー」と謎発言をしたミコは、影帽子のがま口チャックを開けて、中からなんと車を一台、取って出してみせたのだ。しかも4人乗りのオープンカー。道にドスンと置かれたそれに、キティもアイズも唖然としている。
「ね、ねーさま? これは……えっ、この車はなんのために……?」
呂律の回らない口ぶりでなんとか心に思ったことを正直に伝えるキティだが、その瞬間、ミコから発せられる気配が変わった。まるで猫から豹に脱皮したかのような、まさに変化変身と言わんがばかりのモードチェンジ。ただ明らかなのは、今のミコから感じる気配はとんでもないと言っても過言ではない闘争心だということである。それだから怖い。得体のしれない闘争心が、未来をまったく予想できなくしているから。
しかしそんなこと考える暇さえなかった。というより、考えること自体無駄だった。杞憂だったのだ。
なんせキティとアイズの身体は、ミコの影帽子からまた現れた黒い腕に引っぱられ、本人達の意思完全無視のまま、ミコが用意した車に乗せられてしまったのだから。
同意を示す隙もなく、ミコは二人を後部座席に乗せた後運転席に乗り込んで、仰天の詞を口走った。
「乗ったわね。じゃあトランスフェイクの町に行くわよ」
「ええっ! 町に? なにしにいくんですの姉様?」
キティの反応は至極自然な詞のやりとりだった。その詞にのせた只事ではない感情も、これまでの流れからすれば当然だった。そう、これはキティにしてみればできる限りの講義なのだ。
が、相手はミコ=R=フローレセンス。姉で旅人で大人である。キティのそんなめいいっぱいの意見など気にも留めずに一蹴し、強引に自分の話を進め続ける。キティにとって救いだったのは、ミコの話が一応自分の疑問への回答になっていたことであった。一応さっきの台詞はミコのものと会話の体を成していたらしい。
「町に行く目的はふたーつ。ひとつ、アイズが詐欺られた分の落とし前をつける。そしてふたーつ、下がりに下がりストップ安のノイマン家評価を立て直しに行くのよ」
「姉上、ボクが盗られたお金取り戻してくれるんですか? でもって、うわっ!」
アイズはそれ以上喋れなかった。キティも声など出せなかった。悲鳴なら出せたかもしれないが。なんせミコはアイズの話を最期まで聞かず、町へと車を走らせたのだ。その際ようやく車の方向が町とは逆方向に気付いたのか、過激に苛烈にアクセルターンで方向転換し、町に向かってアクセル全開、一気に車を飛ばしたのだ。
しかもさすが大人というべきか、手際が良すぎる。次にミコの口から出たのはこんな詞。
「影の秘術のひとつ、影間強制思話通信の技報黒放影で今トランスフェイクの町の連中全員に宣戦布告したわ。売り詞に買い詞って本当ねー。町の連中共、こっちの挑戦受けて立つって、笑いながら応じたわ」
オープンカー故に強烈に当たる風のせいで後ろ向いて泳いでいたキティとアイズの頭が、超反応と言っても過言ではない反射速度で起き上がった。当然である。ミコがさも当然のように話したことは、極めて重い問題を、わざわざ起こしたという告白だったからだ。ミコの真後ろに座っていたキティは、逆風の中ミコの座っている座席にしがみつき、顔を突き出してミコの横まで持っていて講義&抗議する。
「姉様、わかっているんですか! トランスフェイクに宣戦布告なんてしたら……家の町の決着の付け方は!」
「過酷を極める無茶競技のオンパレードでしょ? わたしを誰だと思っているのキティ? あなたのお姉ちゃんよ? 町の特徴なんて、知ってて当然でしょうに」
そこは旅人だからとか人生三周目の知識だからとかじゃないの姉様――キティは風に掻き消されるほどの小声で悩ましげに突っ込むと、声量を戻して話を再開した。
「知っててなんでやるんですか! 町全体に宣戦布告なんてしたら、敵の数は115,115人にものぼるんですよ! こっちたった三人じゃないですか! 勝ち目無いですよ〜」
悲観的な考え方に当たる逆風の痛さも相まって、キティの目から涙が飛んでいく。ただでさえ父クェンティンと兄アイザックの醜態のせいでノイマン家の評判はミコのいう通りストップ安、もはや地に底腐った料理。それを再評価させるためとは言え、トランスフェイクの誇る(恥とも言う)無茶競技で挑むとは。無謀を通り越して偉大である。もちろん悪い方向で。
しかしミコには勝算というか考えがあるみたいで、自信満々に事の仔細を教え出した。
「相手は115,115人だからね、対してこっちは三人。『闘いは数』なんて論理を信じきっている町の連中は競技の決定権を完全にこっちに委ねてくれたわ」
「なに選んだんです!」自分も参加確定となっているアイズが口を挟んでくる。ミコはさらにシフトレバーでギアを入れ替えスピードを上げると、心底楽しそうに答えてくれた。
「『千畳大広間枕投げ合戦』、『持久走料理対決』、『町内大かくれんぼ大会』の3つよ。心配いらないわ、順番決めの決定権もこっちのもの。ノイマン家をバカにした連中が泣いていい子になることを誓うような大どんでん返しを魅せてやろうじゃないのよ!」
ミコはそう言い切ってさらにアクセルを踏み込んでいく。さらにスピードを増すこの車にキティは限界がないのかと心中突っ込んだが、どうやらこの車限界も問題もないらしい。
町への距離も到達時間もぐんぐん縮めるミコのオープンカー。その後部座席からミコの座席に乗り出していたキティはもう追及することをやめてバックの席に背中を埋めた。超今更と言われるかもしれないが、今更になって理解したのだ。ミコは姉様であり、同時に独裁者であったということに。
それがわかったら暖簾に腕押し。いくら訴えても不起訴が善いとこだろう。ならば限られた人生、無駄にすることもない。ミコには策があるようだし、それにのっかってみようと思った次第でありました。
そう思っていたら唐突に、顔に風を感じなくなった。なんでだろうと横を見ると、風が、気流が綺麗な壁を作っていた。図鑑で読んだことがある。スリップストリーミングというやつだ。前に車はないのだけれど、この空気の流れと状態を空気力学の用語で表すとしたら、それしかない。
この車は空気を整流する機能まで持っているのか――心底ミコの徹底ぶりにキティは尊敬傾慕の念を募らせる。そして風がシャットアウトされ楽になったオープンカーの後部座席でしばしの間目を閉じた。
迫る決戦の時。それはもう待ったなしで、ぐんぐんこちらから近付いているのだから当然。だからこそ、残り短い闘いまでの間は穏やかでいたいと、キティは願った。
目を閉じた少女が感じるものは、視覚以外が教えてくれるつかの間の心地良さ。そして内心昂っている、ミコにも負けない熱き闘志。
ノイマン家名誉回復の大義名分を賭けた闘いの火蓋が、まもなく切って落とされる――。
この度は愚者ぐしゃなわたくしの作品を読んでいただき、心より感謝申し上げます。
さて、本日も無事第8話を章ごとに分割してサブタイトル付けて無事投稿完了しました。
昨日の7話は滅茶苦茶短かったですが、今日の8話はまあわたし的に普通くらいの文章量で収まりました(笑・自虐)。
やはり今回も章ごとの文量のムラが激しくなっておりますが、並行して進行している神様達の進捗状況を取り除けば、ミコちゃんと物語の舞台となったノイマン家の子女、キティちゃんとのちょっと官能刺激的というか…エロっぽい交流だったり「信じる」って単語を嫌うミコちゃんの参考にしてはいけない独演会とか、結構いろいろ書かせてもらいました。しかたのないことなんですよ。ミコちゃんにとっては「家族」って人生一周目の時に壊されてからずっと捨ててきた&関わらないでやってきたモノでして、「家族ごっこ」でもテンションハイになっちゃうんです。
それだけ「家族」には高い憧れ理想を求めているんでしょうね。ノイマン家がそれに適うかは別問題ですが…。
相当愚者ぐしゃな作品ですが、みなさんの才能・感性・能力でなにか感じてもらえるものがありましたらこれ以上嬉しいことはありません。
一日1話のペースでチャプター・章ごとに分割してUPしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
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2017年ミコちゃんシリーズエイプリルフール企画(!?)でもある「シリーズなろう投稿運動」。この4月の間、お付き合いいただきそして楽しんでいただければ幸いです。




