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ミコの影帽子 夢心背話(ゆめうらせばなし)  作者: 心環一乃(ここのわ むの)
第1話 水の名所にやってきた旅人
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第1話_謎の二人組は?

 フランが正直にミコを見送った道を教え、スノウ達気象一族がアルコ村から立ち去ってからさらに一週間後、村名産の名水も再び湧き出したころ……。

 アルコ村へと通じる道を歩く、男女のペアがいた。

 女は、鋼色の鋭い真っ直ぐな長髪を束ねておろし、上は氷じみた青白色で下にいくにつれて黒く染まっている着物を着て、その正装にふさわしい下駄で音もなく歩いている。

 そんな女とは対照的に、男の方は動きやすい作務衣姿で隠す必要もないような短髪頭を手拭いで覆い、使い古した風の草履を履き、大股蟹股で堂々不敵に歩いていた。

「ここかい、水の名所アルコ村って」男が女に問いかける。村の入口付近で歩みを止めた二人が集落を眺めつつ話しだしたのだ。だが話しかけた男は作務衣のポケットに両手を突っ込み、気を抜いた、ともすれば不真面目にも見える態度でだらしない口調だった。

「ええ、間違いなくアルコ村ですよ、整(ととのい)。ここがわたしたち神々から設計図を盗んだあの気象一族のレインさんが最後の痕跡を残した場所。間違いありませんよ」

「そうかい、帳(とばり)」整と呼ばれた男は至極丁寧に回答をくれた女、帳と呼んだその女にぶっきらぼうな相槌を打つ。しまいには片手を取り出して手拭いで覆った頭を掻きだした。

 そんなやる気のカケラもない相方の体たらくを見た帳が溜息をつき、呆れたように整に話しかける。

「まあ、もう10日も前にレインさんは去ったみたいですけどね……整、あなたもう少し気合いを入れたらどうなのですか? わたしと違ってあなたは『盗まれた』方の神なのですから」

「結果と神告宣下ではそうでもな、事実は違うぜ帳。俺はな、自前自慢の設計図、『気味悪さの設計図』を自らあいつにくれてやったのさ。そんなことした奴は盗まれた29体の神々の中でも俺だけだろうよ。バッハッハ!」

 顔に手を当てその顔を天に向けて豪快に笑う整。その姿を見て帳は呆れ返っていた。

「手加減というものを知らないから困りますよ、あなたは。聞いた話ではレインさんにも出会い頭に『狂活字獄』をおみまいしたと聞きましたよ」

「そう! あれを喰らいながら自力で克服してのけたんだぜ。その実力を見ちまったら譲りたくもなるってもんよ。惚れたねえ」

「まったく……、まあ思い出話はこの辺にしておきますよ、整。この村に来たのは、そのレインさんの近況を聞き込むためなんですからね」

 帳が会話をそこそこ早々に切り上げる。整も帳の仕切りに逆らうことはせず、むしろ楽しげな顔をして拳を握りしめた。

「おう! 神殺しの容疑者にして泉の後継候補、そしてなにより俺達神々から設計図を大量に盗みまくったレインに関する聞き込みだな。追跡チームの連中には任せられねえ重要任務だ。じっくりしっかり聞き込んで、情報提供してやるぜ!」

「ええ」帳も頷き、二人は再び歩きだし、アルコ村へと足を踏み入れた。

 暗転の神、帳=フリージア。

 奈落の神、整=キャパシティブレイク。

 かつて人間に問題を与え、レインことミコ=R=フローレセンスにその問題を解かれた神々もまた、その行方を追い、またその真意を探るために、この俗世に現れて行動を起こしていたのである。誰にも知られることなく、ひっそりと……。

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