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ミコの影帽子 夢心背話(ゆめうらせばなし)  作者: 心環一乃(ここのわ むの)
第1話 水の名所にやってきた旅人
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第1話_知らされた真実

 ミコとの別れから2日経った。雨は昨日まで降り続け、今日はよく晴れている。なんでも、村警察の人が言うには今日身柄を引き取りにくる人達は事件現場となったうちの酒場にも訪れるとのことらしい。宿は営業中でも、酒場兼食堂はそれまで半休だ。

 と、そのとき。鐘の音と扉の音がした。来訪者だ。

「いらっしゃいませ。おかみさん、来ましたよ」

 奥にいるおかみさんに声をかけつつ、来訪者に目を向ける――暇もなかった。三人いた来訪者は一目散にフランの方へと向かってきた。一番に押し掛けてきたミコよりも小さな灰色のコートに身を包んだ女の子が喋る。

「わたしは気象一族のスノウ! こっちの男はクエイクで、ここにいるもう一人の女がウィンド姉さんよ。あなたが襲われたっていうフランね? 事件の概要を簡潔詳細に教えて頂戴! 1から100まで、全部よ全部!」

「ええっ?」突然の要求にフランは困り果てた。というのも、語れることはおかみさんが村警察に全部話しているはずだからである。被害者とは言え、今更そんな有益な話ができるとも思えない。なので理由を聞いてみようとした矢先、後ろから現れた村警察の署長が帽子を脱いでその理由を教えてくれた。

「この気象一族の方々が言うには、あの強盗犯は気象一族のレインではないそうなんだ」

 え? えええ?

「つまり……偽者?」フランは辿々しい口調で答える。「でも……あの人が来た途端、今まで降らなかった雨が降ったんですよ」

「都で空読みを学んだ者なら、気象予測くらいできるわよ」スノウが畳み掛けるような早口で捲し立てる。「それで? あなたたちはもう一人の宿泊客に助けてもらったって言ったらしいじゃない」

「あ、はい……。真っ黒な影帽子を使う、ミコさんに……」フランがそこまで言った途端、三人の目の色が変わった。「影帽子? 今影帽子って言ったわね!」とスノウに念を押されたフランは「は、はい」と頷いた。

 スノウは一瞬動くのを止めた後、フランを睨んでこう要求してきた。

「宿泊者名簿があるでしょ、それ見せて。急いで!」

 フランが言われるままに宿泊者名簿を取り出すと、スノウは奪うようにそれを掴んで、三日前の署名を確認する。確認して、あからさまに仰天してみせた。

「この字……やっぱりレインのだ。見て、クエイク、ウィンド姉さん。このミコ=R=フローレセンスって署名、レインの筆跡に間違いないわ!」

「本当だね」「あらホント」見せられた二人も同時に頷く。三人だけの早合点。

 だが、フランはそれを理解したとき、天から雷が落ちるほどの衝撃を受けた。

「ええっ! つまりミコさんが、あの影帽子のミコさんが……」

「そうよ。ミコ=R=フローレセンス、そいつこそが正真正銘気象一族のレインなのよ」

 驚いた。フランだけじゃない、後ろに来ていたおかみさんも。三人の後ろにいた村警察の面々も皆一様に驚いた。なかでもフランの受けた衝撃は大きい。両手を合わせて口元に添えたまま、何も喋れなくなっていた。発覚した事実のもたらした衝撃が音を吹き飛ばし予期せぬ静寂を呼び込む。その沈黙を破ったのはもう一人の女、ウィンドだった。

「Rってレインのことでしょうね。雨巫女様(あめみこさま)と呼ばれたレインちゃんなら雨を降らせるくらい訳ないわ」その指摘と解説に皆納得させられる。だから雨が降ったのかと。

 と、そのとき。フランは胸倉を掴まれ前へと引き寄せられた。目と鼻の先にはスノウの小さな顔があった。あまりの近さにフランは緊張で総毛立つ。

「ねえ! レインはどの道で村を去ったの? 教えなさい!」

「な、なんでそんなに必死なんですか?」引っ張られたフランはまず説明を求めた。

 ミコ本人は気象一族のレインには賞金がかかっているとか言っていたが、目の前の少女から感じる気迫はとても金だけが目的だとは思えなかった。もっとなにか、とんでもない執念のようなものを感じたのだ。

 そしたらスノウは深く息を吸った後、驚天動地の詞を発した。

「知らないの? このミコって名乗ってる気象一族のレインこそ、人として知らぬ者のない、あの神様の問題を解いた人間なのよ」

 それは、紛れもなくフランの人生で、一番驚いたニュースだった。

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