第1話_ありがとう
名水が再び村の各所で採れるようになったアルコ村。だがその知らせが他の地域にはまだ届いていないので、村はまだ賑わいを取り戻してはいない。旅人もいない、静かな村。
そんな静かなアルコ村の旅館の受付机で、看板娘のフランは暇を持て余しながら物思いに耽っていた。
一週間前、ここを訪れた気象一族の人達は自分がミコの去った道を正直に教えると、携帯電話というもので強盗犯の引き取り手続きを電話先の警察街警官と済ませ、嵐のように立ち去っていった。宿からも、アルコ村からも。
あれから一週間。嵐が過ぎ去り強盗犯もいなくなりすっかり落ち着きを取り戻した宿の窓口で、フランは一人あの日のことを思い返していた。雨のこと、宴のこと、事件のこと――そしてミコのことを。
(あのミコさんが本物のレインで、しかも神様の問題も解いた人だったなんて……)
湧き上がる気持ちは素直な感嘆。今思い返してみると、あのレインを騙った強盗犯に注意しろという警告も、自分が本物だからそいつは偽者――ということだったのだろう。
さらに気象一族の人達いわく、あの雨もミコさんが降らせてくれたものらしい。だとしたら、ますますミコには感謝の気持ちで一杯である。そのおかげで、ようやく町も本格的に復興に弾みがついてきたところだ。事件現場となったうちの宿の壊れた壁も、昨日ようやく修理が終わったところである。
隠された。騙された。踊らされた。ミコとの思い出全てが、思い起こすと心地良い。
やられたな――フランは一杯食わされたことを自覚すると、ふと嬉しくなり微笑んだ。
同時に、ミコの旅路がいいものでありますようにと願う自分がいることに気付いた。
きっと彼女は、あの道を進み進んで、また別のどこかへ行くのだろう。そこでもこんなふうに、見知らぬ誰かに出会い、そして心に残る「楽しさ」を残していくのだろう――きっとそう。そう思えたから。
(……さてと、わたしもここで頑張らないと)
フランが決意を新たにしたとき、来客を告げる鐘の音が鳴った。久しぶりの客だ。
「いらっしゃいませ」
看板娘のあいさつが宿に響く。それはまた、新しい「出会い」のはじまり――。
この度は愚者ぐしゃなわたくしの作品を読んでいただき、心より感謝申し上げます。
この作品は最初は同人としてpixivとパブーにUPしていたものですが、その後パブーでの有料公開を止めてカクヨム、ツギクル、そしてここなろうに辿り着いた漂流作品でございます。なんか旅物語がテーマの作品コンセプトと合っているようで面白いかも(笑・自虐)。
相当愚者ぐしゃな作品ですが、なにかみなさんの才能・感性・能力で感じてもらえるものがありましたらこれ以上嬉しいことはありません。
一日1話のペースでチャプター・章ごとに分割してUPしていきたいと思っています。そうでないと長過ぎる話とかもあるので(元が同人だから好き勝手やってまして…ora)。
Twitterやってます。「心環一乃(ここのわむの)自称"地球人"(@kokonowa_life)」です。
これから約1ヶ月、お付き合いいただければ幸いです。




