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誤召喚された双子は、異世界を丸ごとアップデートする ~鍛冶師と知識魔女の最強貿易ライフ~  作者: 此花サギリ


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第三十五話 邪神を知る者

 扉が閉じた瞬間、部屋の中に妙な静けさが生まれた。


 先ほどまで外から聞こえていた町の喧騒は、厚い木製の扉によって幾分か遮られ、宿屋の二階にあるこの部屋だけが、まるで世界から切り離されたような奇妙な空間になっている。窓の外には朝の始まりの町が広がっているというのに、室内にいる三人の間には、そんな穏やかな朝の空気など一切存在していなかった。


 奏は、扉の前に立ったまま、入ってきた青年を観察していた。


 年齢は二十代前半に見える。


 黒い髪は肩に届かない程度に切り揃えられ、旅をしている人間にしては妙に整った身なりをしている。衣服そのものは派手ではない。むしろ質素な旅装束に近いが、布地の質が良い。腰に佩いた剣も、単なる冒険者が使う安価な武器には見えない。


 何より。


 その立ち方が。


 奏は気になった。


 隙がない。


 剣を抜くための構えを取っているわけではない。それでも、どこか身体の中心が安定していて、いつでも動けるように重心が整えられている。


 ただの旅人ではない。


 少なくとも。


 戦いを知らない人間ではない。


 それが、奏には分かった。


 そして。


 それ以上に気になるのが。


 この青年の存在そのものだった。


 奏の【気配察知】が、妙な反応を示している。


 強い。


 しかし。


 殺気はない。


 敵意もない。


 けれど。


 警戒すべき存在であることだけは、はっきりと伝わってくる。


 まるで。


 鞘に収められた刃物のようだった。


 抜かれてはいない。


 だが。


 そこに刃があることは。


 隠しようがない。


「……」


 奏は。


 青年を見ながら。


 ゆっくりと口を開いた。


「座って」


「ありがとうございます」


 青年は素直に頷いた。


 部屋に置かれた椅子へ向かい、静かに腰を下ろす。


 その動作すら。


 無駄がない。


 奏は。


 少しだけ。


 眉を寄せた。


 そして。


 琴子を見る。


 琴子は。


 いつもの穏やかな笑顔を浮かべていた。


 他人が見れば。


 礼儀正しく。


 優しそうな女性にしか見えないだろう。


 だが。


 奏には。


 分かる。


 あれは。


 琴子が完全に警戒している時の顔だ。


 家族の前では。


 腹黒さ全開で。


 口も悪くなる琴子だが。


 外では。


 基本的に。


 完璧な外面を維持する。


 そして。


 その外面が完璧になればなるほど。


 琴子は。


 内心で。


 何かを企んでいる。


「……」


 奏は。


 内心で思った。


 ああ。


 これ。


 絶対に。


 何か企んでる。


 間違いない。


 しかし。


 そんなことを考えている奏自身も。


 実は。


 青年の懐に手を突っ込んで。


 装備を全部鑑定して。


 武器の構造まで調べたい。


 そんなことを考えていた。


 姉妹揃って。


 大概である。


「まず」


 琴子が。


 静かに口を開いた。


「自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか?」


「……」


 青年は。


 少しだけ。


 琴子を見た。


「私の名は、レオン・アークライト」


「……」


「冒険者です」


「……」


「現在は、神託を受けた者として、ある存在を探しています」


「邪神」


 奏が。


 即答した。


 レオンの目が。


 一瞬。


 細くなる。


「……」


「違う?」


「いいえ」


 レオンは。


 静かに首を横に振った。


「その通りです」


「……」


「私は邪神を探しています」


「……」


「そして」


 レオンは。


 二人を見る。


「あなた方も」


「……」


「邪神を探している」


 奏は。


 黙っていた。


 琴子も。


 笑顔を崩さない。


 だが。


 その空気は。


 先ほどよりも。


 さらに。


 重くなった。


「……」


 奏は。


 腕を組んだ。


「どうして」


「……」


「私たちが邪神を探しているって分かったの?」


「……」


 レオンは。


 すぐには答えなかった。


 その代わり。


 首元に掛けていたペンダントを。


 ゆっくりと。


 取り出した。


 小さな。


 銀色のペンダント。


 その中央には。


 青白い石が嵌め込まれている。


「これが」


 レオンは。


 ペンダントを指で持ち上げる。


「教えてくれました」


「……」


 奏は。


 反射的に。


 【鑑定】を発動した。


 しかし。


 やはり。


 結果は。


 ほとんどが。


 ???


 だった。


 ただ。


 今回は。


 一つだけ。


 表示された。


【神託具】


【神の意思を受信するための媒介】


【詳細:???】


「……」


 奏は。


 眉を寄せる。


「神託具」


 その言葉に。


 レオンが。


 少し驚いた。


「鑑定したのですか?」


「うん」


「……」


「名前だけだけど」


 レオンは。


 奏を見つめる。


「あなたは」


「……」


「鑑定士ですか?」


「鍛冶師」


「……」


「鍛冶師?」


「うん」


 奏は。


 自分のステータスを指差した。


「鍛冶師」


「……」


 レオンの表情が。


 微妙に。


 変わった。


「……」


 琴子が。


 それを見逃さない。


「どうされました?」


「いえ」


「……」


「少し珍しいと思いまして」


「……」


「何がです?」


 琴子が。


 にこやかに尋ねる。


「鍛冶師なのに」


 レオンは。


 奏を見る。


「鑑定が使えることです」


「……」


 琴子の目が。


 一瞬。


 細くなった。


 奏は。


 その反応を見て。


 思った。


 あ。


 これ。


 バレる。


 何か。


 バレる。


 しかし。


 レオンは。


 それ以上。


 追及しなかった。


「……」


 琴子は。


 微笑んだまま。


 心の中で。


 冷静に。


 情報を整理していた。


 この青年。


 思ったより。


 厄介だ。


 私たちのことを。


 召喚された者だと。


 知っている。


 邪神を探していることも。


 知っている。


 そして。


 私たちが。


 普通の異世界人ではないことにも。


 気づき始めている。


 なら。


 下手に誤魔化すより。


 こちらから。


 ある程度の情報を提示して。


 相手から。


 より多くの情報を引き出した方がいい。


 琴子は。


 昔から。


 交渉が得意だった。


 証券会社で働き。


 金融を扱い。


 副業までして。


 人と金の流れを見てきた。


 そして。


 何より。


 自分と奏が。


 どんな環境で育ったのか。


 琴子は。


 よく知っている。


 両親に捨てられ。


 児童養護施設で育った。


 だから。


 人間の善意を。


 無条件で信じることはない。


 信じるなら。


 相手の行動を見る。


 言葉ではなく。


 結果を見る。


 そして。


 相手が何を欲しがっているのかを。


 見極める。


 レオンは。


 何かを欲しがっている。


 それは。


 間違いない。


 なら。


 こちらも。


 利用すればいい。


「レオンさん」


「はい」


「あなたは」


「……」


「私たちが召喚されたことを知っている」


「……」


「そうですね?」


「……」


 レオンは。


 静かに。


 頷いた。


「はい」


「では」


「……」


「質問します」


「どうぞ」


「この世界には」


「……」


「私たち以外にも」


「……」


「異世界から召喚された人間がいるのですか?」


「……」


 レオンは。


 少しだけ。


 考えた。


「います」


「……」


 奏の目が。


 大きくなる。


「いるの?」


「はい」


「……」


「過去にも」


「……」


「何人も」


「……」


「召喚された者が存在しています」


 琴子は。


 黙って。


 レオンを見る。


「何人も?」


「はい」


「どれくらいですか?」


「正確な数は」


「……」


「分かりません」


「……」


「ですが」


 レオンは。


 静かに。


 続ける。


「この世界の歴史には」


「……」


「異世界から来た者たちの記録があります」


「……」


 奏は。


 思わず。


 身を乗り出した。


「どんな人?」


「……」


「何をしたの?」


「……」


「帰った人は?」


「……」


 琴子が。


 奏の肩を。


 軽く掴む。


「奏」


「……」


「落ち着いてください」


「……」


「質問を一度にしすぎです」


「……」


「……はい」


 奏は。


 椅子へ座り直した。


 レオンは。


 そんな奏を見て。


 ほんの少し。


 笑った。


「……」


「何?」


 奏が。


 不満そうに言う。


「いえ」


「……」


「あなた方は」


「……」


「本当に」


「……」


「仲の良い姉妹なのだと思いまして」


「……」


 奏は。


 少し。


 黙った。


「……」


「……」


 琴子が。


 ふっと。


 笑った。


「ええ」


「……」


「そうですね」


「……」


 奏は。


 琴子を見る。


「……」


「何?」


「……」


「何でもありません」


 奏は。


 少しだけ。


 口を尖らせた。


 そして。


 改めて。


 レオンを見る。


「……」


「じゃあ」


「はい」


「召喚された人たちは」


「……」


「どうなったの?」


「……」


 レオンの顔から。


 笑みが消えた。


「……」


「多くは」


「……」


「死にました」


「……」


 その言葉は。


 あまりにも。


 淡々としていた。


 だからこそ。


 重かった。


「……」


「戦争に巻き込まれた者」


「……」


「王国に利用された者」


「……」


「魔王を討伐しようとして」


「……」


「命を落とした者」


「……」


「力を恐れられ」


「……」


「殺された者」


「……」


 琴子は。


 静かに。


 聞いていた。


「……」


「では」


「……」


「生き残った者は?」


「……」


「少数ですが」


 レオンは。


 答えた。


「います」


「……」


「その中には」


「……」


「この世界で」


「……」


「神となった者もいる」


「……」


 奏の顔が。


 変わった。


「……」


「神?」


「はい」


「……」


「異世界人が」


「……」


「神になった?」


「……」


「正確には」


 レオンは。


 言葉を選ぶ。


「神に近い存在になった者」


「……」


「というべきでしょう」


「……」


 琴子は。


 静かに。


 質問した。


「それは」


「……」


「この世界の神々と」


「……」


「同じ存在ですか?」


「……」


「分かりません」


「……」


「ただ」


 レオンは。


 ペンダントを見る。


「その中に」


「……」


「邪神と呼ばれる存在がいる」


「……」


 奏の目が。


 鋭くなった。


「……」


「邪神って」


「……」


「元々」


「……」


「この世界の神だったの?」


「……」


「それとも」


「……」


「異世界人?」


「……」


 レオンは。


 答えなかった。


 答えられないのか。


 答えたくないのか。


 奏には。


 分からなかった。


 琴子も。


 黙っている。


 そして。


 レオンが。


 ゆっくり。


 口を開いた。


「それを」


「……」


「私は」


「……」


「知りません」


「……」


「ただ」


 レオンの目が。


 真剣になる。


「邪神は」


「……」


「この世界の歴史から」


「……」


「何度も」


「……」


「何度も」


「……」


「消されている」


「……」


 奏の背筋に。


 冷たいものが走った。


「……」


「消されてる?」


「はい」


「……」


「歴史書から」


「……」


「記録から」


「……」


「名前から」


「……」


「存在そのものを」


「……」


「なかったことにされている」


「……」


 琴子は。


 黙った。


 それは。


 あまりにも。


 不自然だった。


 邪神。


 という存在が。


 ただの悪神なら。


 倒した記録が。


 残っていても。


 おかしくない。


 だが。


 何度も。


 何度も。


 歴史から消されている。


 なら。


 そこには。


 何かがある。


「……」


 琴子が。


 静かに。


 尋ねた。


「レオンさん」


「はい」


「あなたは」


「……」


「邪神を」


「……」


「倒したいのですか?」


「……」


「それとも」


「……」


「邪神を」


「……」


「探しているだけですか?」


「……」


 レオンは。


 黙った。


 長い。


 沈黙。


 そして。


 やがて。


 口を開く。


「……」


「私は」


「……」


「邪神を倒したい」


「……」


「なぜ?」


「……」


 奏が。


 聞いた。


「……」


 レオンは。


 しばらく。


 窓の外を見た。


 朝の光。


 始まりの町。


 人々。


 平穏な日常。


「私の村は」


「……」


 レオンは。


 静かに。


 語り始めた。


「邪神の眷属によって」


「……」


「滅ぼされました」


「……」


「……」


 奏の表情が。


 変わる。


 琴子も。


 黙って。


 レオンを見た。


「私は」


「……」


「その時」


「……」


「生き残った」


「……」


「そして」


「……」


「神託を受けた」


「……」


 レオンは。


 ペンダントを握る。


「邪神を探せ」


「……」


「そして」


「……」


「その存在を」


「……」


「世界から」


「……」


「消せ」


「……」


 奏は。


 黙っていた。


 しかし。


 次の瞬間。


 琴子が。


 静かに。


 言った。


「……」


「その神託」


「……」


「本当に」


「……」


「この世界の神からですか?」


「……」


 レオンの表情が。


 固まった。


「……」


 琴子は。


 微笑んだ。


「失礼しました」


「……」


「ただ」


「……」


「気になったもので」


「……」


「あなたは」


「……」


「神託を受けた」


「……」


「そうおっしゃいました」


「……」


「ですが」


「……」


「その神託を与えた神が」


「……」


「本当に」


「……」


「善なる存在だと」


「……」


「どうして分かるのでしょう?」


「……」


 レオンは。


 答えられなかった。


 琴子は。


 さらに続ける。


「私たちも」


「……」


「神と名乗る存在に」


「……」


「会いました」


「……」


「そして」


「……」


「その存在は」


「……」


「私たちを」


「……」


「勝手に召喚しました」


「……」


 レオンの目が。


 見開かれる。


「……」


「ですが」


 琴子は。


 笑った。


「その存在が」


「……」


「善神だったか」


「……」


「邪神だったか」


「……」


「私たちには」


「……」


「分かりません」


「……」


「ただ」


 琴子の笑顔が。


 少しだけ。


 冷たくなる。


「私たちは」


「……」


「その存在を」


「……」


「倒すつもりです」


「……」


 レオンが。


 息を呑む。


「……」


「邪神を?」


「はい」


「……」


「いえ」


「……」


 琴子は。


 ゆっくり。


 首を横に振った。


「邪神だけではありません」


「……」


「私たちを勝手に召喚した」


「……」


「自称神も」


「……」


「倒します」


「……」


 部屋の中に。


 沈黙が落ちる。


 奏は。


 妹の横顔を見る。


 琴子は。


 笑っている。


 いつものように。


 穏やかに。


 上品に。


 しかし。


 その目だけは。


 まったく。


 笑っていない。


「……」


 奏は。


 静かに。


 口を開いた。


「私たちは」


「……」


「地球に帰る」


「……」


「そのために」


「……」


「邪神を倒す」


「……」


「自称神も」


「……」


「倒す」


「……」


「そして」


「……」


「帰る」


「……」


 レオンは。


 しばらく。


 二人を見つめていた。


 やがて。


 小さく。


 息を吐いた。


「……」


「なるほど」


「……」


「あなた方は」


「……」


「邪神を倒すために」


「……」


「この世界に来たわけではないのですね」


「うん」


「……」


「私たちは」


 奏が。


 答えた。


「帰るために戦う」


「……」


「ただ」


 奏は。


 拳を握った。


「……」


「私たちを巻き込んだ奴が」


「……」


「何も悪びれずに」


「……」


「私たちを見物してると思うと」


「……」


「腹が立つ」


「……」


「……」


 奏の言葉に。


 琴子が。


 小さく。


 笑った。


「奏は」


「……」


「昔から」


「……」


「そういうところがありますからね」


「何?」


「いえ」


「……」


「何でもありません」


「……」


「琴子」


「はい」


「絶対何か言った」


「気のせいです」


「……」


「……」


 レオンが。


 思わず。


 苦笑した。


 その瞬間。


 奏と琴子は。


 同時に。


 レオンを見る。


「……」


「……」


「……」


「何ですか?」


「いや」


「……」


「笑った?」


「……」


「……」


「……」


 レオンは。


 少しだけ。


 困った顔をした。


「……はい」


「……」


「すみません」


「別にいいけど」


 奏は。


 肩を竦めた。


 その時。


 琴子が。


 ふと。


 何かに気づいたように。


 レオンを見る。


「ところで」


「はい」


「レオンさん」


「……」


「あなたは」


「……」


「私たちを」


「……」


「どうするつもりだったのですか?」


「……」


「追跡して」


「……」


「神に召喚された者だと確認して」


「……」


「その後」


「……」


「何をするつもりだったのでしょう?」


 レオンが。


 黙る。


 その瞬間。


 奏の【危険察知】が。


 反応した。


「……!」


 奏は。


 反射的に。


 銃へ手を伸ばした。


「奏?」


「……」


「どうしました?」


「琴子」


「はい」


「この人」


「……」


「嘘ついてる」


 レオンの表情が。


 僅かに。


 変わった。


「……」


「何をするつもりだった?」


 奏が。


 もう一度。


 尋ねる。


 今度は。


 先ほどより。


 低い声で。


「……」


「レオン」


「……」


「答えて」


 部屋の空気が。


 一気に。


 張り詰めた。


 レオンの手が。


 腰の剣へ。


 僅かに。


 近づく。


 その瞬間。


 琴子が。


 静かに。


 立ち上がった。


「……」


「琴子」


「大丈夫です」


「……」


「まだ」


「……」


「戦う必要はありません」


 琴子は。


 レオンを見る。


 そして。


 にっこりと。


 笑った。


「ですが」


「……」


「レオンさん」


「……」


「あなたが」


「……」


「私たちに」


「……」


「嘘をついているのであれば」


「……」


 琴子の瞳が。


 一瞬。


 冷たくなる。


「私も」


「……」


「正直に」


「……」


「お話しする必要は」


「……」


「ないと思いますよ?」


 レオンの表情が。


 初めて。


 明確に。


 動揺した。


 そして。


 琴子は。


 さらに。


 静かに。


 言葉を続けた。


「私たちには」


「……」


「あなたに」


「……」


「まだ」


「……」


「お話ししていないことが」


「……」


「たくさんあります」


「……」


「ですから」


「……」


「お互いに」


「……」


「少しずつ」


「……」


「情報を交換しましょう」


「……」


「その方が」


「……」


「あなたにとっても」


「……」


「私たちにとっても」


「……」


「有益でしょうから」


 レオンは。


 長い沈黙の後。


 ゆっくりと。


 両手を上げた。


「……分かりました」


「……」


「正直に話します」


「……」


 奏は。


 銃から手を離さない。


 琴子も。


 笑顔を崩さない。


 レオンは。


 二人を見て。


 静かに。


 口を開いた。


「私は」


「……」


「あなた方を」


「……」


「殺すために」


「……」


「追っていました」


「……」


「……」


 奏の目が。


 細くなる。


 琴子の笑顔が。


 消える。


「……」


 そして。


 レオンは。


 続けた。


「ですが」


「……」


「今は」


「……」


「その必要はないと思っています」


「……」


「なぜ?」


 奏が。


 聞いた。


 レオンは。


 静かに。


 答える。


「あなた方が」


「……」


「邪神を倒すつもりだからです」


「……」


「私は」


「……」


「あなた方を」


「……」


「敵だと思っていました」


「……」


「しかし」


 レオンは。


 ペンダントを握り締める。


「神託は」


「……」


「あなた方を」


「……」


「殺せとは」


「……」


「言っていない」


「……」


「では」


 琴子が。


 尋ねる。


「神託では」


「……」


「何と?」


 レオンは。


 ゆっくり。


 答えた。


「――異界より来た双子を探せ」


「……」


「そして」


「……」


「その者たちが」


「……」


「邪神を滅ぼす意思を持つなら」


「……」


「協力せよ」


「……」


「……」


 奏と琴子は。


 互いに。


 顔を見合わせた。


 そして。


 琴子が。


 静かに。


 微笑む。


「……」


「奏」


「うん」


「どうやら」


「……」


「私たち」


「……」


「思っていたより」


「……」


「早く」


「……」


「仲間ができてしまったようですね」


「……」


 奏は。


 少しだけ。


 考えた。


「……」


「でも」


「はい」


「この人」


「……」


「さっき」


「……」


「私たちを殺そうとしてたよね?」


「……」


「そうですね」


「……」


「仲間なの?」


「……」


 琴子は。


 レオンを見る。


「……」


「レオンさん」


「はい」


「あなた」


「……」


「私たちを殺すつもりだったんですよね?」


「……」


「はい」


「……」


「では」


 琴子は。


 にっこりと。


 笑った。


「まず」


「……」


「その理由を」


「……」


「詳しく」


「……」


「聞かせていただきましょうか?」


 レオンは。


 苦笑した。


 そして。


 静かに。


 頷いた。


「……分かりました」


「……」


「では」


 レオンは。


 語り始める。


 自分が。


 なぜ。


 二人を追っていたのか。


 なぜ。


 異世界召喚者を警戒していたのか。


 そして。


 この世界で。


 邪神と呼ばれる存在が。


 どのような歴史を持っているのか。


 二人が。


 まだ知らない。


 サイエスという世界の。


 深い闇。


 その一端が。


 今。


 ようやく。


 語られようとしていた。


 そして。


 その話の中には。


 二人をこの世界へ呼び寄せた。


 あの発光体。


 自称神。


 そして。


 邪神。


 それらすべてを。


 一つの線で繋ぐ。


 重大な秘密が。


 隠されていることを。


 この時の二人は。


 まだ。


 知らなかった。


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