表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誤召喚された双子は、異世界を丸ごとアップデートする ~鍛冶師と知識魔女の最強貿易ライフ~  作者: 此花サギリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/39

第二十四話 異世界貿易、始動

 翌朝。


 久世家の地下工房には、朝という時間の概念が存在していなかった。


 地上では鳥が鳴き、夏の陽射しが古い瓦屋根を照らし始めている頃だというのに、地下にいる四人にとっては、時間などとうに意味を失っている。


 奏は作業台に向かい、魔法陣銃・弐式の最終調整を続けていた。


 琴子は隣の机でノートパソコンを開き、サイエス側で販売できそうな商品の一覧を作成している。


 真奈美は少し離れた場所にあるソファに腰掛け、二人の作業を眺めながら、時折スマートフォンを操作していた。


 そして。


 ピピは。


 奏が作った木箱の中に入っていた。


「……。」


 琴子が。


 ちらりと。


 その木箱を見る。


「ピピ。」


「なぁに?」


「何をしているんですか?」


「お昼寝。」


「そうですか。」


「うん。」


「……。」


 琴子は。


 もう一度。


 木箱を見る。


 中には。


 ふかふかの布が敷かれている。


 その上に。


 ピピが丸まっていた。


「そこ。」


「気に入ったんですか?」


「うん。」


「そうですか。」


「奏が作ってくれた。」


「……。」


 琴子が。


 妹を見る。


「奏。」


「何?」


「あなた。」


「ピピの巣まで作ったんですか?」


「巣?」


 奏は。


 工具を持ったまま。


 振り返った。


「違うよ。」


「これは。」


「携帯用ペットハウス。」


「……。」


「異世界に持っていけるように。」


「折り畳み式。」


「……。」


 琴子は。


 何も言わなかった。


 もう。


 突っ込むことを。


 諦めたのである。


「それより。」


 奏が。


 机の上に置かれていたノートパソコンを覗き込む。


「何してるの?」


「商売の準備です。」


「商売?」


「異世界貿易。」


「ああ。」


 奏は。


 納得したように頷いた。


「それ。」


「本当にできるの?」


「アイリスができると言ったんですから。」


「でも。」


「地球の商品。」


「サイエスで売れる?」


「そこなんですよ。」


 琴子は。


 画面を見ながら。


 眉間に皺を寄せた。


「サイエスの経済事情を。」


「私たちは。」


「ほとんど知りません。」


「……。」


「物価。」


「貨幣価値。」


「識字率。」


「流通。」


「身分制度。」


「商人ギルド。」


「冒険者ギルド。」


「魔道具の普及率。」


「食料事情。」


「衛生環境。」


「何一つ。」


「情報がありません。」


「……。」


 奏が。


 腕を組む。


「じゃあ。」


「行って。」


「調べる?」


「そうしたいところですが。」


 琴子が。


 画面を指差す。


「その前に。」


「問題があります。」


「何?」


「私たち。」


「サイエスのお金。」


「持ってません。」


「あ。」


 奏が。


 固まった。


「……。」


「ゼロです。」


「……。」


「私たち。」


「無一文です。」


「……。」


「異世界貿易をするにも。」


「売るための商品を。」


「購入するためのお金が必要です。」


「……。」


「そして。」


 琴子が。


 ゆっくり。


 奏を見る。


「サイエスで。」


「私たち。」


「最初に。」


「何を売るんですか?」


「……。」


 奏は。


 黙った。


 そして。


 作業台の上を見る。


 そこには。


 魔法陣銃・弐式。


 改造銃。


 魔石。


 工具。


 電子部品。


 そして。


 日本から持ち込んだ様々な物品が並んでいる。


「……。」


「私。」


 奏が。


 口を開いた。


「武器。」


「駄目です。」


「何で?」


「いきなり。」


「異世界に。」


「地球の武器を。」


「大量流入させたら。」


「歴史が変わります。」


「……。」


「それに。」


「銃を売ると。」


「邪神より先に。」


「私たちが。」


「世界征服に。」


「利用されます。」


「……。」


 奏が。


 考える。


「じゃあ。」


「銃の部品。」


「もっと駄目です。」


「……。」


「奏。」


「何?」


「あなた。」


「本当に。」


「軍事以外のこと。」


「考えられませんか?」


「料理。」


「……。」


「料理。」


「それ以外。」


「……。」


「改造。」


「……。」


「鍛冶。」


「……。」


「電子工学。」


「……。」


「軍事。」


「……。」


 琴子は。


 深々と。


 ため息を吐いた。


「あなた。」


「異世界貿易に。」


「向いてませんね。」


「酷い。」


「事実です。」


「私は。」


「商売。」


「得意ですよ。」


「うん。」


「金融。」


「うん。」


「投資。」


「うん。」


「資産運用。」


「うん。」


「だから。」


 琴子は。


 自信満々に。


 胸を張った。


「この世界の経済を。」


「利用します。」


 奏が。


 琴子を見る。


「……。」


「何?」


「腹黒い顔。」


「失礼ですね。」


「悪い顔してる。」


「奏。」


「何?」


「妹に。」


「そんなこと言われたら。」


 琴子は。


 にっこりと笑った。


「お姉ちゃん。」


「悲しいですよ?」


「……。」


「嘘。」


「でしょうね。」


「はい。」


 琴子は。


 あっさり認めた。


「私は。」


「お金を稼ぐことに。」


「罪悪感がありませんから。」


「……。」


「むしろ。」


「楽しみです。」


「……。」


 その時。


 アイリスの声が。


 地下工房に響いた。


『異世界貿易について。』


『重要な情報があります。』


「何?」


『現在の二人には。』


『サイエス側での通貨がありません。』


「それは。」


「さっき分かった。」


『しかし。』


『通貨以外の価値を持つ物品を。』


『交換することは可能です。』


「……。」


 琴子の目が。


 変わった。


「物々交換?」


『はい。』


「なるほど。」


 琴子が。


 椅子から立ち上がる。


「奏。」


「何?」


「私たち。」


「商品を持っています。」


「……。」


「地球の商品ではありません。」


「サイエスで。」


「価値があるもの。」


「……。」


 奏が。


 首を傾げる。


「何?」


「魔石。」


「……。」


「薬草。」


「……。」


「魔物素材。」


「……。」


「前回。」


「ボスを倒しましたよね?」


「あ。」


 奏が。


 思い出した。


「アイテムボックス。」


 琴子が。


 右手を上げる。


 その瞬間。


 空間が歪んだ。


 何もない空間から。


 巨大な魔物の素材が。


 次々と。


 床へ落ちていく。


 ドン。


 ドサ。


 ドン。


「……。」


「……。」


「……。」


 地下工房が。


 瞬く間に。


 魔物素材で。


 埋め尽くされていく。


「琴子。」


「はい。」


「……。」


「何でしょう?」


「これ。」


「どうするの?」


「売ります。」


「……。」


「全部?」


「全部。」


「……。」


 奏が。


 魔物素材の山を見る。


「……。」


「多くない?」


「多いですね。」


「……。」


「でも。」


「お金になります。」


「……。」


 奏は。


 ゆっくり。


 笑った。


「じゃあ。」


「売ろう。」


「ええ。」


「全部。」


「全部です。」


 しかし。


 その時。


 真奈美が。


 静かに。


 口を挟んだ。


「二人とも。」


「はい?」


「その素材。」


「どこで手に入れたって。」


「説明するの?」


「……。」


 琴子が。


 固まる。


「……。」


 奏も。


 固まった。


「異世界。」


「初心者の森。」


「……。」


「それ。」


「日本で。」


「どう説明する?」


「……。」


 琴子は。


 しばらく。


 考えた。


「……。」


「海外。」


 奏が。


「無理です。」


「……。」


「じゃあ。」


「秘密。」


「もっと無理です。」


「……。」


 真奈美は。


 深いため息を吐いた。


「だから。」


「私に相談しなさいって。」


「……。」


「二人とも。」


「異世界のことを。」


「隠す必要はないけれど。」


「全部。」


「表に出す必要もないでしょう?」


 琴子が。


「では。」


「どうします?」


「私の知り合いに。」


「特殊素材を。」


「扱っている会社があるわ。」


「特殊素材?」


「ええ。」


「表向きは。」


「研究用素材。」


「裏では。」


「呪具や。」


「霊的な素材を。」


「扱っている。」


「……。」


 奏が。


「それ。」


「大丈夫?」


「大丈夫。」


 真奈美が。


 笑った。


「私の人脈。」


「舐めないで。」


「……。」


 琴子が。


 小さく笑った。


「さすが。」


「久世家。」


「でしょう?」


 こうして。


 二人の。


 異世界貿易計画は。


 思わぬところから。


 始まることになった。


 まず。


 サイエスで手に入れた素材を。


 地球で売る。


 その資金を使って。


 地球の製品を購入する。


 それを。


 サイエスへ持ち込む。


 そして。


 サイエスで。


 地球の商品を販売する。


 得た利益で。


 サイエスの武器。


 魔道具。


 魔石。


 防具。


 素材を購入する。


 さらに。


 地球へ持ち帰り。


 売却する。


「……。」


 琴子は。


 ホワイトボードに。


 巨大な円を描いた。


「これ。」


「異世界貿易の。」


「基本循環です。」


「……。」


 奏が。


 じっと見る。


「これ。」


「お金。」


「増える?」


「増えます。」


「……。」


「ただし。」


「最初の資金が必要です。」


「……。」


「でも。」


 琴子が。


 魔物素材を見る。


「私たち。」


「もう。」


「持っています。」


 その瞬間。


 奏の顔が。


 嬉しそうに。


 輝いた。


「じゃあ。」


「私たち。」


「もう。」


「お金持ち?」


「まだです。」


「……。」


「売っていませんから。」


「……。」


「それに。」


 琴子が。


 真剣な顔になる。


「これは。」


「始まりです。」


「何が?」


「私たちが。」


「サイエスで。」


「生きていくための。」


「準備。」


 奏は。


 静かに。


 頷いた。


「……。」


「邪神を。」


「倒す。」


「そのために。」


「お金が必要。」


「武器が必要。」


「仲間が必要。」


「情報が必要。」


「……。」


 琴子が。


 ホワイトボードを見る。


「そして。」


「自由が必要です。」


「……。」


「邪神に。」


「私たちの人生を。」


「もう。」


「勝手に。」


「弄らせない。」


 奏が。


 拳を握った。


「うん。」


 その時。


 アイリスが。


 新しい情報を告げた。


『お二人に。』


『提案があります。』


「何?」


『異世界貿易を行うのであれば。』


『サイエス側に。』


『拠点を設置することを推奨します。』


「拠点?」


『はい。』


『現在のお二人は。』


『地球とサイエスを往復しています。』


『しかし。』


『商品を販売するには。』


『安定した拠点が必要です。』


「……。」


 琴子が。


 考え込む。


「家。」


「……。」


「買います?」


「サイエスで?」


「ええ。」


「……。」


「商売するなら。」


「店舗が必要でしょう?」


 奏が。


 少し考える。


「じゃあ。」


「家と。」


「工房。」


「それから。」


「倉庫。」


「……。」


「冒険者ギルドの近く。」


「……。」


「市場にも近い方がいい。」


「……。」


「森にも。」


「……。」


 琴子が。


「奏。」


「何?」


「あなた。」


「欲張りですね。」


「だって。」


「便利な方がいい。」


「……。」


「それに。」


 奏は。


 少しだけ。


 笑った。


「モリたちも。」


「遊びに来れる。」


 琴子は。


 その言葉を聞いて。


 少しだけ。


 表情を柔らかくした。


「そうですね。」


 その瞬間。


 ピピが。


 木箱から。


 ひょこっと。


 顔を出した。


「ボクも。」


「行っていい?」


「もちろん。」


「モリも?」


「ええ。」


「……。」


 ピピが。


 嬉しそうに笑う。


「じゃあ。」


「お家。」


「大きいのがいい。」


「……。」


「どうして?」


「モリ。」


「大きいから。」


 奏が。


 真剣な顔で。


 頷く。


「じゃあ。」


「大きい家。」


「買おう。」


 琴子が。


「……。」


「何?」


「あなた。」


「さっきまで。」


「お金。」


「ゼロだったこと。」


「忘れてません?」


「……。」


「まず。」


「素材を。」


「売りましょう。」


「はい。」


 こうして。


 双子は。


 地球側で。


 異世界貿易を始めるための。


 最初の資金調達へと。


 動き出した。


 そして。


 その日の午後。


 久世真奈美の人脈によって。


 ある人物が。


 久世家へ呼び出された。


「……。」


 黒いスーツ。


 眼鏡。


 年齢は。


 四十代半ば。


 男は。


 地下工房へ入った瞬間。


 足を止めた。


「……。」


「久世さん。」


「何でしょう?」


「これ。」


「何ですか?」


 目の前に。


 魔物素材が。


 山積みになっている。


「売りたいの。」


「……。」


「全部?」


「全部。」


「……。」


 男が。


 真奈美を見る。


「どこで。」


「これを?」


「企業秘密。」


「……。」


「では。」


「鑑定しても?」


「ええ。」


 男が。


 素材の一つを。


 手に取る。


 そして。


 顔色が変わった。


「……。」


「久世さん。」


「はい。」


「これ。」


「本物ですか?」


「何が?」


「この素材。」


「……。」


「この品質。」


「ありえない。」


 男の声が。


 震えている。


 琴子が。


 奏を見る。


 奏も。


 琴子を見る。


「……。」


「どうする?」


 奏が。


 小声で聞く。


「何が?」


「これ。」


「高く売れる?」


「……。」


 琴子の目が。


 鋭く光った。


「奏。」


「何?」


「私。」


「商売。」


「始めます。」


 その瞬間。


 琴子の中に。


 金融会社員としての。


 もう一つの顔が。


 完全に。


 目を覚ました。


 そして。


 異世界貿易を利用した。


 双子の。


 最初の資金調達が。


 始まったのである。


 だが。


 琴子は。


 まだ知らない。


 この素材の売却によって。


 地球側で。


 「未知の生物由来と思われる素材」が。


 密かに。


 世界中の研究機関から。


 注目され始めることを。


 そして。


 サイエスへ戻った双子が。


 最初に購入することになるものが。


 家でも。


 武器でも。


 防具でもなく。


 ――一軒の小さな店舗であることを。


 さらに。


 その店舗の看板に。


 奏が。


 何の相談もなく。


 こう書いてしまうことも。


【異世界商店・縁切り縁結び】


「……。」


 琴子が。


 完成した看板を見る。


「奏。」


「何?」


「なぜ。」


「店名を。」


「私たちの能力に。」


「したんですか?」


「覚えやすいから。」


「……。」


「それに。」


「格好いい。」


「……。」


 琴子は。


 天井を見上げた。


 そして。


 静かに。


 呟いた。


「邪神を倒す前に。」


「私。」


「この妹を。」


「どうにかした方が。」


「いいかもしれませんね。」


「琴子。」


「何ですか?」


「聞こえてる。」


「聞こえるように言いましたから。」


 地下工房に。


 二人の声が。


 響く。


 その様子を。


 ピピが。


 楽しそうに見つめていた。


 そして。


 その夜。


 アイリスが。


 静かに告げる。


『サイエスへの帰還準備が整いました。』


 双子は。


 顔を見合わせた。


 奏が。


 魔法陣銃・弐式を持ち上げる。


 琴子が。


 アイテムボックスの最終確認をする。


 ピピが。


 小さな荷物を抱える。


 真奈美が。


 二人を見る。


「気をつけて。」


「はい。」


「死なないで。」


「はい。」


「無茶しないで。」


「……。」


 奏が。


 目を逸らした。


「奏ちゃん?」


「……。」


「無茶しない。」


「本当に?」


「……。」


「奏?」


「善処します。」


「……。」


 真奈美は。


 諦めた。


「琴子。」


「はい。」


「この子を。」


「お願いします。」


「任せてください。」


 琴子が。


 奏の肩を。


 ぽんと叩く。


「私が。」


「しっかり。」


「見張っておきます。」


「琴子。」


「何ですか?」


「私。」


「妹だよ?」


「知っています。」


「……。」


 そして。


 二人は。


 異世界へ向かう。


 その準備を。


 終えた。


 奏が。


 魔法陣銃を構える。


 銃口の先に。


 青白い魔法陣が。


 展開される。


 琴子が。


 その隣に立つ。


「行きましょう。」


「うん。」


 次の瞬間。


 光が。


 二人と。


 一匹を。


 包み込んだ。


 地球から。


 サイエスへ。


 再び。


 二人の冒険が。


 始まる。


 そして。


 今回は。


 ただの冒険ではない。


 レベリング。


 異世界貿易。


 拠点作り。


 仲間探し。


 そして。


 邪神討伐。


 すべてを。


 同時に。


 進めることになる。


 しかし。


 サイエスへ転移した瞬間。


 奏が。


「……。」


 固まった。


 琴子も。


「……。」


 固まった。


 ピピが。


「……。」


 首を傾げる。


「奏?」


「うん。」


「どうしました?」


「……。」


 奏は。


 目の前を。


 指差した。


 そこには。


 森があった。


 確かに。


 森だった。


 だが。


 その森の入口には。


 巨大な看板が。


 立っている。


【初心者の森】


「……。」


 琴子が。


「ここ。」


「前回。」


「ボスが。」


「いた場所。」


「うん。」


「……。」


「アイリス。」


『はい。』


「場所。」


「間違えた?」


『いいえ。』


「……。」


『お二人が指定した場所です。』


「……。」


 琴子が。


 ゆっくり。


 奏を見る。


「奏。」


「何?」


「あなた。」


「帰還地点。」


「ここに。」


「設定しました?」


「……。」


「奏?」


「……。」


「しましたね?」


「……。」


「しましたね?」


「……。」


「奏!」


「だって。」


「森。」


「近い方が。」


「便利だから。」


「……。」


 琴子は。


 頭を抱えた。


 その瞬間。


 森の奥から。


 地響きが。


 聞こえてきた。


 ドドドドドドドド。


「……。」


 奏が。


 魔法陣銃・弐式を。


 構える。


「……。」


 琴子も。


 アイテムボックスから。


 武器を取り出す。


「……。」


 ピピが。


 小さく。


 震えた。


 そして。


 森の奥から。


 巨大な影が。


 姿を現す。


 前回。


 二人が倒した。


 ボスより。


 さらに。


 大きい。


 その頭上に。


 赤い文字が。


 浮かんだ。


【初心者の森・守護者】


【推奨レベル:10】


 奏が。


 目を輝かせる。


「……。」


 琴子が。


「奏。」


「何?」


「逃げますよ。」


「……。」


「今回は。」


「レベリングですよ?」


「うん。」


「相手。」


「推奨レベル十です。」


「うん。」


「私たち。」


「レベル一です。」


「うん。」


「なのに。」


「何で。」


「銃を。」


「構えるんですか?」


 奏は。


 魔法陣銃・弐式を。


 構えたまま。


 静かに。


 笑った。


「だって。」


「試射。」


「してない。」


「……。」


 琴子の。


 顔が。


 引きつった。


「奏。」


「はい。」


「お願いですから。」


「今回は。」


「普通に。」


「レベル上げを。」


「してください。」


「……。」


 奏が。


 魔法陣銃の。


 引き金に。


 指を掛ける。


「……。」


 魔法陣が。


 展開される。


 九重。


 十重。


 さらに。


 その外側に。


 新しい魔法陣が。


 展開されていく。


「……。」


 琴子が。


 絶望した。


「アイリス。」


『はい。』


「この銃。」


「止められますか?」


『現在の仕様では。』


『難しいと思われます。』


「……。」


「奏!」


「何!?」


「それ!」


「前回より!」


「増えてます!」


「うん!」


「何で!?」


「格好いいから!」


「もう嫌です!」


 そして。


 初心者の森の守護者が。


 咆哮した。


 大地が。


 揺れる。


 木々が。


 倒れる。


 ピピが。


 叫ぶ。


「モリィィィィィィィ!」


「違う!」


 奏が。


「これ!」


「モリじゃない!」


 琴子が。


「じゃあ!」


「誰ですか!」


 奏が。


「知らない!」


「知らないんですか!?」


「初めて見た!」


「でしょうね!」


 そして。


 奏は。


 叫んだ。


「行くよ!」


「行かないでください!」


「撃つ!」


「撃たないで!」


 次の瞬間。


 魔法陣銃・弐式が。


 サイエスの空へ。


 巨大な魔法陣を。


 描き出した。


 そして。


 双子の。


 二度目の異世界生活は。


 またしても。


 レベリング開始直後から。


 とんでもない方向へ。


 転がり始めたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ