第二十四話 異世界貿易、始動
翌朝。
久世家の地下工房には、朝という時間の概念が存在していなかった。
地上では鳥が鳴き、夏の陽射しが古い瓦屋根を照らし始めている頃だというのに、地下にいる四人にとっては、時間などとうに意味を失っている。
奏は作業台に向かい、魔法陣銃・弐式の最終調整を続けていた。
琴子は隣の机でノートパソコンを開き、サイエス側で販売できそうな商品の一覧を作成している。
真奈美は少し離れた場所にあるソファに腰掛け、二人の作業を眺めながら、時折スマートフォンを操作していた。
そして。
ピピは。
奏が作った木箱の中に入っていた。
「……。」
琴子が。
ちらりと。
その木箱を見る。
「ピピ。」
「なぁに?」
「何をしているんですか?」
「お昼寝。」
「そうですか。」
「うん。」
「……。」
琴子は。
もう一度。
木箱を見る。
中には。
ふかふかの布が敷かれている。
その上に。
ピピが丸まっていた。
「そこ。」
「気に入ったんですか?」
「うん。」
「そうですか。」
「奏が作ってくれた。」
「……。」
琴子が。
妹を見る。
「奏。」
「何?」
「あなた。」
「ピピの巣まで作ったんですか?」
「巣?」
奏は。
工具を持ったまま。
振り返った。
「違うよ。」
「これは。」
「携帯用ペットハウス。」
「……。」
「異世界に持っていけるように。」
「折り畳み式。」
「……。」
琴子は。
何も言わなかった。
もう。
突っ込むことを。
諦めたのである。
「それより。」
奏が。
机の上に置かれていたノートパソコンを覗き込む。
「何してるの?」
「商売の準備です。」
「商売?」
「異世界貿易。」
「ああ。」
奏は。
納得したように頷いた。
「それ。」
「本当にできるの?」
「アイリスができると言ったんですから。」
「でも。」
「地球の商品。」
「サイエスで売れる?」
「そこなんですよ。」
琴子は。
画面を見ながら。
眉間に皺を寄せた。
「サイエスの経済事情を。」
「私たちは。」
「ほとんど知りません。」
「……。」
「物価。」
「貨幣価値。」
「識字率。」
「流通。」
「身分制度。」
「商人ギルド。」
「冒険者ギルド。」
「魔道具の普及率。」
「食料事情。」
「衛生環境。」
「何一つ。」
「情報がありません。」
「……。」
奏が。
腕を組む。
「じゃあ。」
「行って。」
「調べる?」
「そうしたいところですが。」
琴子が。
画面を指差す。
「その前に。」
「問題があります。」
「何?」
「私たち。」
「サイエスのお金。」
「持ってません。」
「あ。」
奏が。
固まった。
「……。」
「ゼロです。」
「……。」
「私たち。」
「無一文です。」
「……。」
「異世界貿易をするにも。」
「売るための商品を。」
「購入するためのお金が必要です。」
「……。」
「そして。」
琴子が。
ゆっくり。
奏を見る。
「サイエスで。」
「私たち。」
「最初に。」
「何を売るんですか?」
「……。」
奏は。
黙った。
そして。
作業台の上を見る。
そこには。
魔法陣銃・弐式。
改造銃。
魔石。
工具。
電子部品。
そして。
日本から持ち込んだ様々な物品が並んでいる。
「……。」
「私。」
奏が。
口を開いた。
「武器。」
「駄目です。」
「何で?」
「いきなり。」
「異世界に。」
「地球の武器を。」
「大量流入させたら。」
「歴史が変わります。」
「……。」
「それに。」
「銃を売ると。」
「邪神より先に。」
「私たちが。」
「世界征服に。」
「利用されます。」
「……。」
奏が。
考える。
「じゃあ。」
「銃の部品。」
「もっと駄目です。」
「……。」
「奏。」
「何?」
「あなた。」
「本当に。」
「軍事以外のこと。」
「考えられませんか?」
「料理。」
「……。」
「料理。」
「それ以外。」
「……。」
「改造。」
「……。」
「鍛冶。」
「……。」
「電子工学。」
「……。」
「軍事。」
「……。」
琴子は。
深々と。
ため息を吐いた。
「あなた。」
「異世界貿易に。」
「向いてませんね。」
「酷い。」
「事実です。」
「私は。」
「商売。」
「得意ですよ。」
「うん。」
「金融。」
「うん。」
「投資。」
「うん。」
「資産運用。」
「うん。」
「だから。」
琴子は。
自信満々に。
胸を張った。
「この世界の経済を。」
「利用します。」
奏が。
琴子を見る。
「……。」
「何?」
「腹黒い顔。」
「失礼ですね。」
「悪い顔してる。」
「奏。」
「何?」
「妹に。」
「そんなこと言われたら。」
琴子は。
にっこりと笑った。
「お姉ちゃん。」
「悲しいですよ?」
「……。」
「嘘。」
「でしょうね。」
「はい。」
琴子は。
あっさり認めた。
「私は。」
「お金を稼ぐことに。」
「罪悪感がありませんから。」
「……。」
「むしろ。」
「楽しみです。」
「……。」
その時。
アイリスの声が。
地下工房に響いた。
『異世界貿易について。』
『重要な情報があります。』
「何?」
『現在の二人には。』
『サイエス側での通貨がありません。』
「それは。」
「さっき分かった。」
『しかし。』
『通貨以外の価値を持つ物品を。』
『交換することは可能です。』
「……。」
琴子の目が。
変わった。
「物々交換?」
『はい。』
「なるほど。」
琴子が。
椅子から立ち上がる。
「奏。」
「何?」
「私たち。」
「商品を持っています。」
「……。」
「地球の商品ではありません。」
「サイエスで。」
「価値があるもの。」
「……。」
奏が。
首を傾げる。
「何?」
「魔石。」
「……。」
「薬草。」
「……。」
「魔物素材。」
「……。」
「前回。」
「ボスを倒しましたよね?」
「あ。」
奏が。
思い出した。
「アイテムボックス。」
琴子が。
右手を上げる。
その瞬間。
空間が歪んだ。
何もない空間から。
巨大な魔物の素材が。
次々と。
床へ落ちていく。
ドン。
ドサ。
ドン。
「……。」
「……。」
「……。」
地下工房が。
瞬く間に。
魔物素材で。
埋め尽くされていく。
「琴子。」
「はい。」
「……。」
「何でしょう?」
「これ。」
「どうするの?」
「売ります。」
「……。」
「全部?」
「全部。」
「……。」
奏が。
魔物素材の山を見る。
「……。」
「多くない?」
「多いですね。」
「……。」
「でも。」
「お金になります。」
「……。」
奏は。
ゆっくり。
笑った。
「じゃあ。」
「売ろう。」
「ええ。」
「全部。」
「全部です。」
しかし。
その時。
真奈美が。
静かに。
口を挟んだ。
「二人とも。」
「はい?」
「その素材。」
「どこで手に入れたって。」
「説明するの?」
「……。」
琴子が。
固まる。
「……。」
奏も。
固まった。
「異世界。」
「初心者の森。」
「……。」
「それ。」
「日本で。」
「どう説明する?」
「……。」
琴子は。
しばらく。
考えた。
「……。」
「海外。」
奏が。
「無理です。」
「……。」
「じゃあ。」
「秘密。」
「もっと無理です。」
「……。」
真奈美は。
深いため息を吐いた。
「だから。」
「私に相談しなさいって。」
「……。」
「二人とも。」
「異世界のことを。」
「隠す必要はないけれど。」
「全部。」
「表に出す必要もないでしょう?」
琴子が。
「では。」
「どうします?」
「私の知り合いに。」
「特殊素材を。」
「扱っている会社があるわ。」
「特殊素材?」
「ええ。」
「表向きは。」
「研究用素材。」
「裏では。」
「呪具や。」
「霊的な素材を。」
「扱っている。」
「……。」
奏が。
「それ。」
「大丈夫?」
「大丈夫。」
真奈美が。
笑った。
「私の人脈。」
「舐めないで。」
「……。」
琴子が。
小さく笑った。
「さすが。」
「久世家。」
「でしょう?」
こうして。
二人の。
異世界貿易計画は。
思わぬところから。
始まることになった。
まず。
サイエスで手に入れた素材を。
地球で売る。
その資金を使って。
地球の製品を購入する。
それを。
サイエスへ持ち込む。
そして。
サイエスで。
地球の商品を販売する。
得た利益で。
サイエスの武器。
魔道具。
魔石。
防具。
素材を購入する。
さらに。
地球へ持ち帰り。
売却する。
「……。」
琴子は。
ホワイトボードに。
巨大な円を描いた。
「これ。」
「異世界貿易の。」
「基本循環です。」
「……。」
奏が。
じっと見る。
「これ。」
「お金。」
「増える?」
「増えます。」
「……。」
「ただし。」
「最初の資金が必要です。」
「……。」
「でも。」
琴子が。
魔物素材を見る。
「私たち。」
「もう。」
「持っています。」
その瞬間。
奏の顔が。
嬉しそうに。
輝いた。
「じゃあ。」
「私たち。」
「もう。」
「お金持ち?」
「まだです。」
「……。」
「売っていませんから。」
「……。」
「それに。」
琴子が。
真剣な顔になる。
「これは。」
「始まりです。」
「何が?」
「私たちが。」
「サイエスで。」
「生きていくための。」
「準備。」
奏は。
静かに。
頷いた。
「……。」
「邪神を。」
「倒す。」
「そのために。」
「お金が必要。」
「武器が必要。」
「仲間が必要。」
「情報が必要。」
「……。」
琴子が。
ホワイトボードを見る。
「そして。」
「自由が必要です。」
「……。」
「邪神に。」
「私たちの人生を。」
「もう。」
「勝手に。」
「弄らせない。」
奏が。
拳を握った。
「うん。」
その時。
アイリスが。
新しい情報を告げた。
『お二人に。』
『提案があります。』
「何?」
『異世界貿易を行うのであれば。』
『サイエス側に。』
『拠点を設置することを推奨します。』
「拠点?」
『はい。』
『現在のお二人は。』
『地球とサイエスを往復しています。』
『しかし。』
『商品を販売するには。』
『安定した拠点が必要です。』
「……。」
琴子が。
考え込む。
「家。」
「……。」
「買います?」
「サイエスで?」
「ええ。」
「……。」
「商売するなら。」
「店舗が必要でしょう?」
奏が。
少し考える。
「じゃあ。」
「家と。」
「工房。」
「それから。」
「倉庫。」
「……。」
「冒険者ギルドの近く。」
「……。」
「市場にも近い方がいい。」
「……。」
「森にも。」
「……。」
琴子が。
「奏。」
「何?」
「あなた。」
「欲張りですね。」
「だって。」
「便利な方がいい。」
「……。」
「それに。」
奏は。
少しだけ。
笑った。
「モリたちも。」
「遊びに来れる。」
琴子は。
その言葉を聞いて。
少しだけ。
表情を柔らかくした。
「そうですね。」
その瞬間。
ピピが。
木箱から。
ひょこっと。
顔を出した。
「ボクも。」
「行っていい?」
「もちろん。」
「モリも?」
「ええ。」
「……。」
ピピが。
嬉しそうに笑う。
「じゃあ。」
「お家。」
「大きいのがいい。」
「……。」
「どうして?」
「モリ。」
「大きいから。」
奏が。
真剣な顔で。
頷く。
「じゃあ。」
「大きい家。」
「買おう。」
琴子が。
「……。」
「何?」
「あなた。」
「さっきまで。」
「お金。」
「ゼロだったこと。」
「忘れてません?」
「……。」
「まず。」
「素材を。」
「売りましょう。」
「はい。」
こうして。
双子は。
地球側で。
異世界貿易を始めるための。
最初の資金調達へと。
動き出した。
そして。
その日の午後。
久世真奈美の人脈によって。
ある人物が。
久世家へ呼び出された。
「……。」
黒いスーツ。
眼鏡。
年齢は。
四十代半ば。
男は。
地下工房へ入った瞬間。
足を止めた。
「……。」
「久世さん。」
「何でしょう?」
「これ。」
「何ですか?」
目の前に。
魔物素材が。
山積みになっている。
「売りたいの。」
「……。」
「全部?」
「全部。」
「……。」
男が。
真奈美を見る。
「どこで。」
「これを?」
「企業秘密。」
「……。」
「では。」
「鑑定しても?」
「ええ。」
男が。
素材の一つを。
手に取る。
そして。
顔色が変わった。
「……。」
「久世さん。」
「はい。」
「これ。」
「本物ですか?」
「何が?」
「この素材。」
「……。」
「この品質。」
「ありえない。」
男の声が。
震えている。
琴子が。
奏を見る。
奏も。
琴子を見る。
「……。」
「どうする?」
奏が。
小声で聞く。
「何が?」
「これ。」
「高く売れる?」
「……。」
琴子の目が。
鋭く光った。
「奏。」
「何?」
「私。」
「商売。」
「始めます。」
その瞬間。
琴子の中に。
金融会社員としての。
もう一つの顔が。
完全に。
目を覚ました。
そして。
異世界貿易を利用した。
双子の。
最初の資金調達が。
始まったのである。
だが。
琴子は。
まだ知らない。
この素材の売却によって。
地球側で。
「未知の生物由来と思われる素材」が。
密かに。
世界中の研究機関から。
注目され始めることを。
そして。
サイエスへ戻った双子が。
最初に購入することになるものが。
家でも。
武器でも。
防具でもなく。
――一軒の小さな店舗であることを。
さらに。
その店舗の看板に。
奏が。
何の相談もなく。
こう書いてしまうことも。
【異世界商店・縁切り縁結び】
「……。」
琴子が。
完成した看板を見る。
「奏。」
「何?」
「なぜ。」
「店名を。」
「私たちの能力に。」
「したんですか?」
「覚えやすいから。」
「……。」
「それに。」
「格好いい。」
「……。」
琴子は。
天井を見上げた。
そして。
静かに。
呟いた。
「邪神を倒す前に。」
「私。」
「この妹を。」
「どうにかした方が。」
「いいかもしれませんね。」
「琴子。」
「何ですか?」
「聞こえてる。」
「聞こえるように言いましたから。」
地下工房に。
二人の声が。
響く。
その様子を。
ピピが。
楽しそうに見つめていた。
そして。
その夜。
アイリスが。
静かに告げる。
『サイエスへの帰還準備が整いました。』
双子は。
顔を見合わせた。
奏が。
魔法陣銃・弐式を持ち上げる。
琴子が。
アイテムボックスの最終確認をする。
ピピが。
小さな荷物を抱える。
真奈美が。
二人を見る。
「気をつけて。」
「はい。」
「死なないで。」
「はい。」
「無茶しないで。」
「……。」
奏が。
目を逸らした。
「奏ちゃん?」
「……。」
「無茶しない。」
「本当に?」
「……。」
「奏?」
「善処します。」
「……。」
真奈美は。
諦めた。
「琴子。」
「はい。」
「この子を。」
「お願いします。」
「任せてください。」
琴子が。
奏の肩を。
ぽんと叩く。
「私が。」
「しっかり。」
「見張っておきます。」
「琴子。」
「何ですか?」
「私。」
「妹だよ?」
「知っています。」
「……。」
そして。
二人は。
異世界へ向かう。
その準備を。
終えた。
奏が。
魔法陣銃を構える。
銃口の先に。
青白い魔法陣が。
展開される。
琴子が。
その隣に立つ。
「行きましょう。」
「うん。」
次の瞬間。
光が。
二人と。
一匹を。
包み込んだ。
地球から。
サイエスへ。
再び。
二人の冒険が。
始まる。
そして。
今回は。
ただの冒険ではない。
レベリング。
異世界貿易。
拠点作り。
仲間探し。
そして。
邪神討伐。
すべてを。
同時に。
進めることになる。
しかし。
サイエスへ転移した瞬間。
奏が。
「……。」
固まった。
琴子も。
「……。」
固まった。
ピピが。
「……。」
首を傾げる。
「奏?」
「うん。」
「どうしました?」
「……。」
奏は。
目の前を。
指差した。
そこには。
森があった。
確かに。
森だった。
だが。
その森の入口には。
巨大な看板が。
立っている。
【初心者の森】
「……。」
琴子が。
「ここ。」
「前回。」
「ボスが。」
「いた場所。」
「うん。」
「……。」
「アイリス。」
『はい。』
「場所。」
「間違えた?」
『いいえ。』
「……。」
『お二人が指定した場所です。』
「……。」
琴子が。
ゆっくり。
奏を見る。
「奏。」
「何?」
「あなた。」
「帰還地点。」
「ここに。」
「設定しました?」
「……。」
「奏?」
「……。」
「しましたね?」
「……。」
「しましたね?」
「……。」
「奏!」
「だって。」
「森。」
「近い方が。」
「便利だから。」
「……。」
琴子は。
頭を抱えた。
その瞬間。
森の奥から。
地響きが。
聞こえてきた。
ドドドドドドドド。
「……。」
奏が。
魔法陣銃・弐式を。
構える。
「……。」
琴子も。
アイテムボックスから。
武器を取り出す。
「……。」
ピピが。
小さく。
震えた。
そして。
森の奥から。
巨大な影が。
姿を現す。
前回。
二人が倒した。
ボスより。
さらに。
大きい。
その頭上に。
赤い文字が。
浮かんだ。
【初心者の森・守護者】
【推奨レベル:10】
奏が。
目を輝かせる。
「……。」
琴子が。
「奏。」
「何?」
「逃げますよ。」
「……。」
「今回は。」
「レベリングですよ?」
「うん。」
「相手。」
「推奨レベル十です。」
「うん。」
「私たち。」
「レベル一です。」
「うん。」
「なのに。」
「何で。」
「銃を。」
「構えるんですか?」
奏は。
魔法陣銃・弐式を。
構えたまま。
静かに。
笑った。
「だって。」
「試射。」
「してない。」
「……。」
琴子の。
顔が。
引きつった。
「奏。」
「はい。」
「お願いですから。」
「今回は。」
「普通に。」
「レベル上げを。」
「してください。」
「……。」
奏が。
魔法陣銃の。
引き金に。
指を掛ける。
「……。」
魔法陣が。
展開される。
九重。
十重。
さらに。
その外側に。
新しい魔法陣が。
展開されていく。
「……。」
琴子が。
絶望した。
「アイリス。」
『はい。』
「この銃。」
「止められますか?」
『現在の仕様では。』
『難しいと思われます。』
「……。」
「奏!」
「何!?」
「それ!」
「前回より!」
「増えてます!」
「うん!」
「何で!?」
「格好いいから!」
「もう嫌です!」
そして。
初心者の森の守護者が。
咆哮した。
大地が。
揺れる。
木々が。
倒れる。
ピピが。
叫ぶ。
「モリィィィィィィィ!」
「違う!」
奏が。
「これ!」
「モリじゃない!」
琴子が。
「じゃあ!」
「誰ですか!」
奏が。
「知らない!」
「知らないんですか!?」
「初めて見た!」
「でしょうね!」
そして。
奏は。
叫んだ。
「行くよ!」
「行かないでください!」
「撃つ!」
「撃たないで!」
次の瞬間。
魔法陣銃・弐式が。
サイエスの空へ。
巨大な魔法陣を。
描き出した。
そして。
双子の。
二度目の異世界生活は。
またしても。
レベリング開始直後から。
とんでもない方向へ。
転がり始めたのである。




