第十話 初勝利の戦果と、新たな計画
日本へ戻った瞬間、双子は玄関で揃ってその場へ座り込んだ。
「……疲れた。」
奏が大きく息を吐く。
「足が震えてる。」
琴子も壁へ寄り掛かる。
「私も。」
普段は冷静な琴子だったが、額には汗が滲んでいた。
それも当然だった。
異世界へ渡って一時間も経たないうちに、推奨レベル二十五以上というボスモンスターと遭遇したのだ。
生きて帰ってこられただけでも奇跡だった。
しばらく無言で休憩していると、アイリスが静かに声を掛ける。
『報告します。』
「うん。」
『フォレストホーン討伐報酬を確認しました。』
ホログラムが展開される。
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【討伐結果】
フォレストホーン(ボス)
討伐成功
経験値獲得
レベルアップ
討伐称号取得
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続いて二人のステータスが表示される。
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### カナデ
レベル:8
職業:鍛冶師
筋力:46
防御:18
知能:113
速度:30
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### コトコ
レベル:8
職業:テイマー
筋力:26
防御:13
知能:129
速度:14
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奏が目を丸くした。
「一気に七レベル?」
『ボス討伐補正です。』
琴子も驚きを隠せない。
「初心者救済?」
『いいえ。』
『想定外です。』
「やっぱり。」
二人は同時にため息を吐く。
あの戦闘は偶然の積み重ねだった。
真正面から戦えば、間違いなく全滅していただろう。
アイリスはさらに続ける。
『追加報告。』
『縁切りスキルが発動しました。』
奏が首を傾げる。
「え?」
『フォレストホーンの縄張り支配権との縁を切断。』
「縄張り?」
『周辺魔物の統率が解除されています。』
「そんなことまで?」
『縁切り∞の効果です。』
琴子が興味深そうに呟く。
「概念に干渉してる。」
「人間関係だけじゃないんだ。」
『はい。』
『対象との因果・契約・支配・呪いなど、多くの縁が対象となります。』
奏は思わず頭を抱えた。
「……とんでもない能力。」
琴子も苦笑する。
「邪神、本当に願いを軽く見てたんだね。」
『可能性が高いです。』
アイリスは淡々と肯定した。
その時、奏の視界に新しい通知が表示された。
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【新スキル取得】
観察 Lv1
罠設置 Lv1
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「観察?」
『戦闘中の分析行動が評価されました。』
「罠設置は?」
『地形利用による討伐を行ったためです。』
奏は思わず笑う。
「剣も振ってないのに。」
「鍛冶師なのに。」
「取得スキルがレンジャーみたい。」
琴子も笑いを堪えきれない。
「奏らしいよ。」
「真正面から殴り合うより。」
「考えて勝つ。」
「昔からそうだもん。」
奏は照れくさそうに頭を掻いた。
「痛いの嫌いだから。」
そこで琴子が真剣な表情へ戻る。
「でも。」
「今回は運が良かっただけ。」
「うん。」
「次も同じとは限らない。」
「その通り。」
二人はちゃぶ台を囲み、改めて今後の方針を整理し始めた。
ホワイトボードへ新たな項目が書き込まれる。
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【次回までの準備】
・初心者向け装備の調達
・野営用品の充実
・地図作成
・ロープや滑車などの携行
・魔物の生態調査
・鍛冶設備の準備
・異世界市場の調査
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奏はペンを回しながら言う。
「私たち。」
「戦い方を間違えちゃ駄目。」
「どういうこと?」
琴子が尋ねる。
「英雄じゃない。」
「勇者でもない。」
「研究者と金融屋。」
奏は静かに続ける。
「なら。」
「戦術も。」
「準備も。」
「全部、私たちらしくやればいい。」
真正面から魔物へ突撃する必要はない。
罠を使う。
地形を利用する。
道具を工夫する。
必要なら逃げる。
それが二人の戦い方だ。
琴子は満足そうに頷いた。
「賛成。」
「勝てばいい。」
「生き残ればいい。」
「それが一番。」
アイリスも補足する。
『推奨戦術を更新しました。』
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### 双子専用戦闘方針
・事前調査を最優先
・戦闘は有利な地形で行う
・罠・道具を積極活用
・不要な戦闘は回避
・情報収集を重視
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「なんだか。」
奏は笑う。
「冒険者っていうより。」
「調査隊だね。」
「それでいい。」
琴子も微笑んだ。
「最終目標は邪神討伐。」
「途中で死んだら意味がない。」
その時、アイリスが新たな通知を表示する。
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【異世界貿易】
初回取引条件達成
商業ギルド登録可能
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奏と琴子は同時に画面を見つめた。
「……始まるね。」
「うん。」
戦うだけではない。
稼ぐことも、この異世界を生き抜くためには欠かせない。
そして双子はまだ知らない。
この「異世界貿易」の第一歩が、やがてサイエスの経済そのものを大きく変えていくことになるのだった。




