93◇3機集合
93◇3機集合
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昼頃に軍医に起こされる。
昼飯だそうだ。
夜明けごろに寝たので6時間以上は寝られたことになる。
昨日は中途半端な眠りだったのが災いして妙に気分がダークだったが、今は吹っ切れたかの様に爽快だ。
食堂に行くと司令官とスカイコンドルのメンバー6人が食事をしていた。
俺とリンダ軍曹が入って行くと6人全員が起立し、敬礼してくる。
司令官とリンダ軍曹は驚いた様に俺を見るが、まぁ情報局での立場は実質俺の方が上だしな。
「マーティン・ランバート様、お疲れ様です。ご指示に従い、スカイコンドル全員集合致しました。」
「皆さんお疲れ様。午後から司令官と一緒にする事の内容を説明しますので、今は食事をしてください。」
「マーティン君、彼らにはだいたいの内容は話してあるよ。各駐屯地の魔法兵はまだ到着していないが、今日の夕方にはかなりの人数が揃うはずだ。」
俺は司令官に礼を言い、スカイコンドルの面々を座らせる。
すぐに彼らは食事を食べ終わり、後ほどと挨拶して食堂を出て行った。
「マーティン様ってすごいんですね。あの人達、階級は最高で中尉でしたよ。そんな人達に敬礼されるなんてマーティン様はどれくらいの地位なんですか?」
「いや、俺は軍属ではないよ。情報局局長のモーガン中将から直接仕事の依頼を受けた一般人だ。一応伯爵家の次男だけどまだ学生だしね。俺の発案で作った物が非常に有用だから中将の方から是非にと迎え入れて貰ったという訳なんだよ。」
そこまで話すとリンダ軍曹はホヘーとした様な表情を浮かべて尊敬の眼差しで俺を見てくる。
身長は俺より少し高い程度なので、マセた女子中学生が憧れの先輩を見ている様にしか感じられない。
うーん、どこまで話すべきか。
一応俺が魔道エアクラフトの発案者であることは最初に伝えてある。
それと同時に俺が王都学園の1年生であること、学園内に俺が代表の開発部があること、情報局の支援を受けていることも話す。
少し前に開発部で製作した3機の偵察機を情報局に納入し、スカイコンドルの6人を俺主導で実用になるまで鍛えたと言うと、リンダ軍曹はポッカーンとした表情で俺を凝視していた。
よく見るとリンダ軍曹は可愛い顔をしているな。
小柄で童顔だが、軍曹なだけあって鍛えられた雰囲気がある。
今の表情を見ているとただの中学生にしか見えないんだが。
「ところでリンダ軍曹は何歳?」
「なななんですか急に。私に惚れでもしましたか。ダメですよお子様には少し早すぎます。」
「で、何歳?」
リンダ軍曹は少し顔を赤らめて小さい声で「18歳」と答えた。
うわ、5歳も年上なのかよ。
絶対に16歳くらいと思ってたんだがな。
ウチのメイドのアンナが19歳なのでほぼ同い年だが、一部の成長度合いがかなり違う。
だが軍曹という地位を考えると18歳は妥当なんだろな。
ある程度の実績もいるだろうし、実戦経験もありそうだ。
「リンダ軍曹は実戦には出たことはあるの?」
「勿論です。軍相手ではないですが、魔の森の魔獣狩りと盗賊団の殲滅戦に参加した事があります。その時は魔力探知とバインド系の捕縛を担当しました。魔獣や盗賊を兵士で囲って牽制している最中に味方の隙間から敵に捕縛魔法を掛けて動きを阻害するんですね。これでかなり簡単に任務達成となるので重宝されてました。常に最前線に連れて行かれるのでしんどかったですが。」
それは便利だな。
捕縛魔法について聞くと、魔力で網を編んで相手に被せるそうだ。
網にするのは同じ魔力なら板より細い紐状にした方が丈夫だからであり、それで網を作ると少ない魔力で面を作って相手の動きを束縛出来るので魔法兵には必須の技能だそうだ。
一般的には距離数mで一度に2人程度を数秒間捕縛するのが限界らしいが、リンダ軍曹はこの捕縛魔法が得意らしく距離10mで魔獣ならレッサーベアー、対人なら5人くらいは同時に10秒以上動きを阻害して無防備に出来るということだった。
物理的な頑丈な網を突然被せるのとほぼ同じ効果があるそうで、相手は認識する間もなく動きを制限され、囲っていた兵士から一方的に袋叩きになるらしい。
非致死性の魔法だが効果はえげつないな。
どんな英雄でもイチコロだ。
リンダ軍曹の年齢と実戦経験を聞いたところで食事を終わり、司令室に行く。
ノックをして入れと言われてドアを開けるとそこにはスカイコンドル以外にも兵士が4人ほどいた。
つい先ほど到着したばかりの魔法兵だそうだ。
全員が座るだけの椅子が無いので立ったままで説明する事にする。
「スカイコンドルの皆さん、集まって貰ったのは偵察方法についてです。昨日から私のやった手法を説明します。」
全員が頷き、俺に視線が集中する。
俺は魔力探索結果と討伐結果が書き込まれた地図を広げ、昨日から3ヶ所の敵集結場所を襲撃したと言う。
「司令官、今日の2ヶ所の結果はどうなりましたでしょうか。」
「10人程度の所は廃棄された農場の小屋に潜んでいた。40人で囲んで火矢をかけると飛び出して来たので弓兵と魔法兵で一気に殲滅だな。20人の方は川の近くの洞窟に隠れていた。同行した魔法兵が洞窟の奥に魔力を感じると言うので入り口で焚き火をして燻し出してみるとあっさりと討伐出来たな。煙を吸ってふらふらになっていたので一般兵で十分対応出来た。」
「ありがとうございます。その前日にも20人規模の敵集団を殲滅しています。これで3ヶ所の敵拠点を一気に潰せた事になりますね。これは偵察に魔法兵を同伴させて各種の補助をして貰ったことで実現しています。具体的にはこの様な感じですね。」
俺は少し大きめの紙を貰って太めの鉛筆で書く。
・魔法兵に魔力探知を工夫してもらい、上空から地表の魔力の集まりを見てもらう。
・昼間は地上から丸見えなので夜間に偵察飛行をする。
・飛行高度は魔法兵に地上の生き物の魔力強度と分布を探索してもらい、昼間の訓練時に目視高度との差を認識してもらう。
・情報局作成の住民と家畜の員数を記入した地図があるので、それを上空から確認しながら現在位置を把握する。
・自国兵員の配置は毎日駐屯地間で連絡し合っているのでそれを地図上に追記する。
・上記記載以外の魔力集団を確認した場合、敵侵攻集団の潜伏場所の可能性があるので地図に追記する。
・魔石ジェットエンジンの噴射ノズルの開口を最大とし、少し強めにスロットルを開ける事により噴射音が静かになり、夜間の高度0.5キロム程度でも地上から発見される可能性を減らせる。
・リンダ軍曹の魔力探知能力は高度0.5キロムで機体の魔石ジェットエンジンが動作している状態で、幅0.3キロムを確認可能である。
・この探索を長さ10キロムを1回とし、それを隙間なく並べる手法で現在18キロム分完了したところである。
・マーティン・ランバート機だけでは効率が悪いので、他の3機も同様の探索ができる様にして分担して欲しい。
一気に書き上げると部屋は静まり返った。
俺のやっている事は側から見ると簡単そうに見えるのだろう。
これだけの事をやってかろうじて敵を発見出来るのだ。
敵味方識別マーカーなんてのも無いので、事前情報が全てになる。
恐らく敵勢力は分散して潜伏し、何らかの合図を基に一斉に蜂起するはずだ。
魔石伝達、打ち上げ花火、隠密伝令、時間経過など色々考えられるが、それまでに各潜伏集団相互の連絡は無いものと思われる。
そこを敵に分からぬ様に上空から位置を把握し、個別粉砕していくのであるな。
「マーティン様、スカイコンドルの3機の後席に魔法兵を乗せると言う事ですね。」
「そうだね。このリンダ軍曹も情報局推薦の優秀な魔法兵だし。王都からここまで来る間に全部覚えて即座に実践投入し、これだけの成果が上げられたのだから君達も出来ると思うんだよね。」
理解してくれた様で、夕方には魔法兵も揃うので実地訓練をしよう。




