90◇魔力レーダー
90◇魔力レーダー
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「目を瞑ったままでいいから、地上の魔力を感知するのに慣れてくれないかな?時々このうるさい奴を止めるから、その時にお願い。」
「はいぃー、やってみますー、でもそのうるさいのが動いている時でも生き物の魔力は識別できますよー」
なんだって?
俺にはごっちゃになって分からなかったが、魔法専門には区別がつくんだ。
あ、魔力周波数か。
意識的に周波数を合わせてやればノイズ源と分離出来るってことだよな。
共振周波数をピックアップする様なもんか。
逆にトラップを作ってエンジンノイズを吸収させてもいいのか。
原理が分かったので俺も試してみる。
1000mの高度では生き物の魔力信号が弱すぎて全く分からないので高度を300mまで下げる。
するとエンジンノイズの向こうに確かに蠢く生命の魔力を感じられた。
なんか海外BCLをやっている様な気分だな。
高校の頃に短波ラジオに長大なアンテナを繋いでノイズの海の中に漂う海外局を聴いていたことを思い出す。
近くをバイクが通ると盛大にバリバリ言うんだが、それに負けぬ様に耳を澄ませていたな。
高度をじわじわ上げていくと、500m付近でエンジンノイズと混じって分からなくなる。
400mくらいに下げるとなんとなく分かる。
エンジンを停止させても俺は500mくらいが限界だった。
リンダ軍曹はエンジン動作の有無にはほとんど影響を受けないと言っているので、フィルタリング特性が優秀なんだろな。
俺がアナログフィルターなら彼女はデジタルフィルターってとこか。
生き物周波数のすぐ側でズバっと切れるってことだろう。
これで定期的にエンジンを停止しなくともよくなったのでスロットル8割で巡航に入る。
高度は500mのままなので山には気をつける。
うっかり山腹に激突したら洒落にならない。
30分も飛ぶとリンダ軍曹もだいぶ慣れてきたみたいで、地図を見ながらナビをしてくれた。
目印を探して指示どおりに飛ぶ。
高度500mなのでかなりはっきりと生き物の魔力が分かるみたいで、地図に書き込まれた国勢データ?を基に案内してくれる。
今は昼間なので農作業に出て散らばっているが、総数は合っているそうだ。
空中に飛んでいる鳥類も分かる様で、大型の鳥と遭遇しそうな時は回避方向も指示してくれるので助かる。
完全に魔力レーダーだな。
いや、パッシブソナーか。
次に現在の高度500mを目視で覚えさせ、その時の地表の生き物毎の魔力量の平均を感じとらせて距離とリンクさせる。
時々速度を落として検出に影響するか確認させたが、感度にはあまり影響は無い様だ。
低い山がある時はゆっくり近づいてリアルタイム高度ナビをやらせてみる。
下を見ずに小型の野生動物だけの魔力を感じ取りながら少し斜め前の高度を報告させる。
俺はそれを聞きながらそのとおりに高度調整をする。
俺自身は地表までの距離は見ているが、夜間を想定した一種の計器飛行だな。
一定の高度になる様に口頭フィードバック制御だ。
1時間も山肌を舐める様に飛んでいるとかなり検出精度が上がった。
但し、禿山の様な生き物がほとんどいない山の場合はちょっと面倒だ。
全く生き物がいない訳ではなく、虫や小型の爬虫類は結構居る。
但し魔力が小さいので砂粒が撒かれている様だとリンダ軍曹は言う。
この時はエンジンノイズに紛れてしまう様で、エンジンを切った方が明らかに精度が上がった。
ここは予め地図を見ておいてヤバそうならエンジン間欠動作だな。
これにより禿山でも何とかなりそうである。
今回は夜間飛行をするので、その訓練がてらの飛行をしたのでだいぶ時間がかかってしまった。
3時間くらい飛んだところでリンダ軍曹がもよおしてきたと言うので、平地を探して一旦着陸する。
道の横にキャンプ地の様な開けた場所があったのでそこに降りる。
どうやら大規模キャラバン利用可能の野営用地らしい。
路面が多少荒れていたので着陸時にはかなりの衝撃があったが、機体重量が軽いのでダメージは無い。
ついでに俺も用を足し、休憩がてらカ⚪︎リーメイトと缶コーヒーを出してリンダ軍曹に与える。
食べ方が分からなかったので教えて俺も一緒に食べる。
まぁプルタブなんて見たことも無いだろうしな。
どちらも甘いので感動していたな。
土魔法で簡易整地し、スムーズに離陸する。
やはり垂直離着陸機能は欲しいな。
帰ったら早速スカンクワークスの研究課題にしよう。
王都を出発してから4時間飛び、そろそろ目的地付近とリンダ軍曹が言う。
そこで高度を1500mまで上げ、侵攻していると思われる敵兵に見つからない様にする。
それから30分くらいで国境間近の東部第一中隊の駐屯地が見えてきた。
高度を200mくらいまで下げ、ゆっくり近づいていく。
駐屯地の練兵場には兵が50人ほど整列していた。
さらに高度を下げ、俺であることを認識させる。
兵が場所を空けてくれたので、中央の1番平坦な所に降りる。
ここの練兵場は周囲が少し荒れているのだ。
「情報局の依頼で敵兵の偵察に来ました。現状を教えてもらえませんでしょうか。」
「マーティン君、ご苦労だね。この駐屯地にはまだ敵兵の影は無いので、それを倉庫に入れてから兵舎で説明しよう。」
司令官が俺の名前を覚えていてくれたので話は早い。
一応中将発行の指令書を見せるが、ざっと読んだだけで了解と言う。
まぁ信頼されているってことだろう。
俺とリンダ軍曹は兵舎の中の指揮所の様な部屋に案内され、現状の書き込まれた地図を見せられる。
昨日時点の近距離偵察の結果らしい。
怪しい箇所には赤丸がしてあるが、だいぶ近いな。
偵察は最初から夜間飛んですることにしている。
理由は昼間は敵兵は遮蔽物に隠れて目視では発見できないし、魔力探知しようと高度を500mくらいまで落とすと容易に発見されて対策されてしまうからだ。
夜間なら敵兵も休んでいるだろうし、高度500mくらいを低出力で飛べばほぼ発見されないだろうという目算がある。
本当は翼の布を黒くしたかったが今回は時間が無かったので次回の課題だな。
魔石ジェットエンジンは地球のジェットエンジンと違って内部で燃焼している訳ではないので、噴出口から出る圧縮空気の温度は低い。
その為、後方から見ても火炎を噴く様なことはないのでそれで見つかることはない。
まぁそれでも噴出口に手を翳すとヘアドライヤーくらいの温度にはなっているが。
噴出口にはノズル径を可変出来る絞りが付いているので、これを大きくすることで効率は落ちるが噴射音をある程度下げることもできる。
これらを組み合わせて隠密行動とするのだ。




