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魔法使いは自衛隊で無双したい  作者: 賽の目四郎


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83◇初帰省

83◇初帰省

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王都の情報局で中将の部下から飛行許可証を貰い、すぐに叔父宅に帰る。

少し遅くなったので叔父家族は心配してくれていた。

王都に用事があったので連絡もせずに遅くなって申し訳ないと言う。

すぐに夕食が始まり、そこで俺は明日明後日の日程を言う。


「叔父上、私は明日ランバート領に帰ろうと思います。明後日にはこちらに戻りますのでご心配なく。」


まるで新幹線で東京大阪間を往復する様に気楽に言う。


「あの空を飛ぶ装置で行くのかい?片道どれくらいの時間がかかるのかな。」


「途中で1回休憩を30分ほどするとして、片道5時間足らずで着きますね。動力として魔道具で強力な風を出すので高品質な魔石がかなり要りますが、私の口座で十分賄える程度ですのでご心配なく。父上に何か伝言があればお預かりしますよ。」


「一人で行くのかな?」


「いえ、デビッドと2人乗りで行きます。たとえ途中で不時着しても護衛として働いて貰いますのでご心配なく。」


そうなんだよね。

でもデビッドは護衛というよりは、予備のパイロットとして期待しているんだ。

たとえ俺が突然不調になったり意識を失っても、すぐに後ろから操縦出来れば墜落する可能性は激減するし。

あと、2人乗りなら後席の人にナビをして貰えるのも大きい。

長距離飛ぶと操縦しながらだと地図を読むのが大変なんだよ。

ちょっと停めてじっくり地図を見る訳にもいかないし。


「そうか。まぁ君のすることだから心配はしていないが、くれぐれも無茶をせずに慎重に飛んでくれよ。君に何かあると兄上に顔向け出来なくなるし。」


「ありがとうございます。 ご存じだとは思いますが、ランバート領の魔道銃プロジェクトの進捗が気になって仕方が無いんですよ。それと今回開発したこの空飛ぶ装置、名前を「魔道エアクラフト」と言いますが、国軍に採用されています。これから軍でどんどん量産されて我が国の国防の一端をを担うことになると思いますが、軍用以外に民間利用の権利を私は貰っています。今後これを利用してもう少し人数の乗れる機体を作り、手軽にランバート領まで往復出来る様にしたいと思ってるんです。」


「それは凄いな。今は馬車で一週間かかるのが5時間だろう。その気になれば日帰りも出来るじゃないか。」


「5時間というのは今現在のかなり余裕を持って飛んだ時のことですね。これから更に高性能化を進めていきますので、将来的には片道2時間程度で飛べる様になると思います。」


時速250km出せば500kmの距離は2時間だもんな。

有名なセスナ系の単発機で巡航速度が時速200km前後、双発機で時速300kmくらいだ。

魔石ジェットエンジンを工夫すれば時速250kmは十分狙える速度だしな。

勿論、固定翼機が要るから軍を巻き込んでかなりの騒動になるとは思うが。


俺の答えに唖然とする叔父とその家族にランバート領のおみやげは何が良いかと聞くと苦笑いされた。

初帰省で「ちょっと実家に帰って来ます」と言う背伸びした小学生を見る目だな。



次の日は夜が明ける前に起きた。

デビッドが起こしに来てくれたので、アンナの手を煩わせることなくベッドを抜け出す。

厨房はもう動いていたのでダイニングで軽い食事を貰い、デビットとザンドと共に食べる。

ザンドも今日は学園まで俺とデビッドを送り届けて、その後馬車を叔父宅に持ち帰るという仕事がある。

昨日の内にザンドには今回の帰省のことを詳しく話しておいた。

魔法をあまり使えないザンドには申し訳ないが、今回は魔道エアクラフトを操縦出来るデビッドと行くと言う。

操縦出来る者が2人居た方が安全だと言うのが一番の理由だ。

将来的には魔力を使わなくても飛べる機体を作る予定だと言うと、ザンドは期待してますよと笑った。

本当なんだけどなぁ。


用意が出来たので馬車の所に行くと、叔父が一人で待っていた。

まだ夜が明けたばっかりなので厨房以外はまだ眠っている。


「おはよう。今日は晴れてよかったな。風も穏やかでそんなに寒くもない。絶好の飛行日和というとこだな。」


「おはようございます。そうですね。雨が降ったり風が強かったら中止しようとは思ってました。」


「これ、兄上に渡してくれないか。いつもは伝書鳩で定期便として送っているのだが、送れる量に限りがあるのでまだ送っていなかった資料になるんだよ。」


「承知しました。確かにお預かりします。父上に真っ先に渡します。」


「では気をつけて行ってくれ。デビッドもマーティンをよろく頼むよ。」


「お任せください。マーティン様のことは責任を持ってお守りします。」


俺とデビッド、ザンドの3人は叔父が見送る中馬車に乗って学園に向けて出発した。


学園の門衛は交代で24時間体制なので早朝に行っても対応してくれる。

ザンドを馬車停めに残し、俺とデビッドはスカンクワークスの部室に行く。

部屋ではモーリスとエドモンドの2人が待っていた。


「今日は初挑戦だな。こんな長距離を飛ぶのは国軍以上の実績になるか。」


「いや、単に距離があるだけだよ。そんなに魔石ジェットエンジンに無理をさせるつもりもないし、デビッドと2人乗りなんでどちらかが気を失っても墜落することもないし。」


「いやいや、気をつけてくれよ。国軍の飛行許可があるとは言え、地方に行ったら不審人物として捕縛されることもあるだろうし。」


「まぁその為に王都学園発行の身分証を持っているんだからご心配には及びませんよ。」


エドモンドとモーリスは交互に心配してくれて声を掛けてくれるが、まぁ心配は無用だろう、

それを言うなら国境に行った時の方が遙かに危険度は高かった。

まだ機体の完成度は低かったし、操縦出来るのは俺一人だったし。


4人で裏山麓の格納庫に行き、扉を開けて1号機改を外に出す。

俺とデビッドは装備を身に付け、毛布に簀巻きにして持って来た89式小銃と弾薬箱を機体両側のサイドボックスに入れる。

両方に1丁ずつ入れたので重量バランスは取れているはずだ。

俺もデビッドも9mm拳銃は左脇下に吊るしている。

少しだけ厚着をしているのでそんなに目立たないと思う。


その間にモーリスとエドモンドは1号機改の点検と魔石ジェットエンジンの魔力量の調査をしてくれていた。

今回補充用の魔石は拳大の物を10個確保してある。

国境までの各駐屯地への伝令の往復で4個までは使わなかったので十分足りるだろう。

最悪俺の魔力で補充すれば100km程度は飛べるだろうし。


全ての準備が完了し、俺とデビッドは乗り込んでベルトを締め、スロットルのコントロールリングを2人とも装着する。

機体側面の切り替えスイッチを前席側にし、左のサイドブレーキを前に倒して緩める。

2人に手を上げ、ゆっくりと魔石ジェットエンジンに魔力を流すと機体が進み出した。

両足で前輪の向きを調整し、広場をタキシングして風下に向かう。

機首を風上に向けて地上の2人に大声で挨拶をする。


「では行って来ます。明日の夕方には帰って来るので待っていてくださいね!」


2人は「おう」とだけ答えて手を振っていた。

俺はスロットルを全開にし、風上に向かって機首を調整する。

20m程の滑走で離陸し、そのまま高度を上げる。

裏山を大きく旋回し、高度1000m前後で水平飛行に戻す。

地上の格納庫とその前に居る2人をちらと見ながら機首を南に向けた。

地上ではモーリスとエドモンド、そしてザンドが遙か高いところを南に飛んで行く白い三角形を見ながら見えなくなるまでじっと眺めていた。


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