332◇魔道M95
332◇魔道M95
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「うむ。では本題に戻して、このM95じゃが分解は出来るのかや?その後装式の構造と銃身の内部を見てみたいのでのう。」
さすがに気になるみたいだな。
ローテーブルの方に持って行き、3人ともソファに座ってM95をテーブル上に置く。
どうやら89式から遠ざけられたぞ。
「通常分解はこの様にやります。撃った後の汚れた部分の手入れや最初の狙いを付ける時にする手順ですね。」
まずマガジンを抜き、ボルトを引いて左側面の2本のロックピンを抜き、レシーバーからバレルブロックを取り外す。
外したバレルブロックをテーブルに置き、バレルが貫通状態で向こうが見える様にする。
ついでにストレージから12.7mm弾の実弾を取り出してテーブルの上に置く。
「これが銃身部分ですね。こちらが銃口、こちらが後装式の装填部になります。」
バレル後端のチャンバー部に12.7mm弾を押し込んでみせる。
団長は銃身と実弾を手に取り、あれこれひねくり回していた。
振り回していたので危うく中将の顔に当たりそうになっていたな。
あわてて中将は俺の方のソファに避難してくる。
「なんと見事な加工じゃのう。この長さで内部に綺麗に渦を巻いておる。しかもこの弾もすごいのう。後装式の装填部にぴったりと嵌まり、殆どガタも無い。ふうむ、なるほど。この色からして真鍮じゃな。この中に入っておる発火魔石の様な薬剤が爆発すると僅かに膨らんで銃身内部と密着し、後方へのガス漏れを防止するのじゃな。この弾の底部の中央にあるのは発火魔法陣かや?えらい小さいのう。」
さすがに理解が早い。
基本的な概念を説明せずとも済むので楽だな。
「そうですね。その認識で合っています。真鍮の筒の中に入っているのは発火魔石ではなく、薬学で合成した急速燃焼する発火薬です。それ以前は硝石と硫黄と木炭の混合物で使っていました。そして底部中央にあるのは発火魔法陣ではなく、尖った物で強く突くと内部で発火する薬剤が入った物で、雷管と言います。」
全て物理だな。
魔法が当たり前の団長には馴染みが無いかもしれないが、きちんと理解してもらうのがこの世界でM95を再現する第一歩だ。
説明するのにこちらの言葉に無い物はそのまま日本語で言う。
硝石、雷管などだな。
硫黄と木炭はこちらにも相当する単語があるのでそのまま使うが。
魔道銃にも使える黒色火薬の主原料である硝石は硝酸カリウムなんだが、この世界にもあるはずだ。
だが特定するのが非常に難しい。
天然の硝石鉱床はあるはずだがそれらしき石を探してもらって粉末にし、硫黄と木炭を混ぜて火を点けてみるくらいしか確認のしようがない。
無色や白色、灰色などの結晶や粉末で、ガラス状の光沢があるのでそれを目安に探してもらおう。
どうしても無ければ日本古来の培養法でし尿から生成するしかない。
これも詳しい方法は覚えていないので試行錯誤は必要だな。
「お主の居た世界は魔法が一切無かったと言うからそうなるのか。その急速燃焼する発火薬とやらの調合は出来るのかや?雷管というのも薬剤と言っておったが。」
「だいたいの原理は知っていますが、詳しい製法までは覚えていません。なのでそこはこちらの発火魔石や発火魔法陣で置き換えてもらえばいいかと思います。」
無煙火薬や雷汞なんかはニトロセルロースや硝酸関係の化合物だという事は覚えているが、その製法はまるで知らない。
まぁこちらの世界でも試行錯誤すればいつかは作れるだろうから研究はしてもらおう。
それまでは魔石や魔法陣で代用すれば十分だな。
自領に多く産出する発火魔石で他領や王都に対する優位性も保てるのでランバート家にも貢献出来るし。
「なるほどのう。では次はこの銃身の加工じゃが、どうやったらここまで細くて均質な筒と内部の螺旋の溝が出来るのじゃ?」
「これは材質強化された鍛造の鉄の丸棒を用意し、それの端部から回転切削具で削っていく事で穴を開けています。魔道銃の様な鉄の板を鍛造で丸めるのは強度の面でも精度の面でも使えないですね。内部の螺旋は穴開け後に複数の爪を持った棒状の工具を螺旋状の治具に沿って押し込んで徐々に削って付けています。かなり精度が要るので工具も作るのが難しいですね」
まず冶金からだな。
カーボンスチールが基本だが、他の強化成分も発見して入れて行かないと前世の様なスリムな銃器にはならない。
クロムモリブテン鋼があれば一番いいが、この世界に相当する元素があるかどうかも分からないしな。
まぁミスリルがあるので鉄との合金のミスリル鋼がどれくらいの耐力を示すかだ。
銃身に使える様なら無理にクロモリ系を研究しなくてもいいしな。
「うむ。魔法団の魔道砲も材質の研究は進んでおるぞい。このM95と比べてどれくらいの圧力になっておるかは比較してみんと分からんが、瞬間的な圧力を測定する方法が無いのじゃ。お主の知識でどうにかならんか?」
ピエゾ系の高速圧力センサなんて物は無いし、魔法でも爆発の燃焼速度に対応する物を作るのは無理だろう。
ならばクラッシャーゲージだな。
高圧に耐えられるピストンとシリンダーを用意し、薬室の圧力をそこに流し込む。
ピストンの反対側に強く押すと定量的に潰れる銅の小さい円柱を置いて、その潰れ具合で圧力を逆算的に判断するのだ。
単位は現在魔法団が使っているものでいいから、他の方法と比べて変化量を換算出来る様にしておけば汎用に使える。
紙にざっと書いて説明すると一発で分かってくれた。
さすがは魔法団の団長だな。
この世界の最先端を行っているだけのことはある。




