330◇電話
330◇電話
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「何か思いついた様じゃの。さぁさっさと喋るのじゃ。」
何で俺は懲りないんだろうな。
この人達の前では思索の海に浸からないぞと心に決めたのに、あっさりと溺れている。
まぁ海軍の方向性の一つとして空母はアリなので話しておこう。
「実はあの元海賊船の大きい方を使って改造すれば航空母艦はすぐにでも出来ますね。今回乗ってきた3座機を5機程度積んで運用すれば敵に対して圧倒的な優位性があるでしょう。」
そうして先ほど思いついた「魔道空母」仕様を説明する。
船としての戦闘は他の戦艦に任せ、空母は飛行機械を離着陸させる為だけに運用する。
その代わり、飛行機械の整備、修理、補給や搭乗員の休憩室など、戦闘以外でやる事は山積みだ。
船の動力は魔道推進器で賄えるのでマストも帆も要らないし、飛行甲板は木製で十分使える。
魔道兵を使えば魔力探知で夜間敵方偵察も出来るし、爆発壺を積めばそのまま敵戦艦に空爆出来る。
何なら敵国の沿岸まで空母で行って、そこから離陸して首都爆撃なんて事も可能だ。
3座機の航続距離を伸ばすのに燃費重視型エンジンを作るか、8分割魔力供給方式エンジンを使えば1500km以上は飛べるだろう。
我が国のシラハマと王都までは550kmくらいなので、それと同等の国なら可能だな。
そこまで話すと2人とも黙り込んでしまった。
「マーティンよ、先走り過ぎじゃ。もうちと落ち着けい。そこまでせずとも今の40ミル砲と推進器だけで十分じゃ。あまりあれこれ一気にやると周りが付いて来れんぞ。」
「そうだな。頭の中で考えるのはいいが、私達に言うだけにしておいて欲しいな。他の人に言うと妄言か反逆と捉えられるやもしれん。敵国の攪乱戦法の一種と思われるだろうからな。」
やべぇ。
確かにこんな戦術思想は管理する側から見たら危険極まりない。
しかも色々作った本人が言うから実現する可能性も極めて高いし。
もし俺が誘拐でもされて敵国内でこれらを作らされたらと思うと国家危機レベルの災厄だ。
聞く人によっては監禁しろだの果ては殺しておけだの言い出しかねない。
「分かりました。考えるだけにしておきます。もっとも飛行機械の機体が大型化すれば航続距離も3000キロム程度は出せる様になるでしょうから、空母無しで敵国の首都まで直接到達出来ますね。」
「やめいと言うとるじゃろ。今はそれ以上はしゃべるな。確かにお主の前世の国の軍備からしたらこの世界の軍備は歯がゆいやもしれんが、お主だけが突っ走っても回りが理解してくれぬぞ。」
オーケーオーケー、了解だぜ。
WW2時代のB29の日本の市街地空襲を思い出して思わずしゃべってしまった。
体験した訳ではないが、一方的な虐殺に近いから想像しただけで涙が出る。
それを今なら自分が出来ると思うと、そんな非道な事はやるなと言う自分と、出来るのならやってみろと言う自分との戦いになる。
完全に矛盾しているんだが、まぁ考えるだけなのでまだマシな方だろう。
独裁者みたいな権力も指導力も無いし。
「さて、絵はもうないのかや?見るだけ、ここで話すだけなら問題無いから見せてみよ。」
「そうだな。我々も君の前世の技術には興味はある。まぁレベルが隔絶しているから夢物語として聞きたいのだけどね。」
まぁそうだろうな。
俺の少し前の世代の日本の男児は昭和中期から平成初期の時代によくあった子供向け雑誌の「50年後、100年後の日本の暮らし」などの特集記事のイラストに心躍らせていたものだ。
前世のそういった書籍集めが好きな叔父によく見せてもらっていた。
家庭用空飛ぶ車、真空チューブ内を疾走する弾丸列車、テレビ電話、家事をするロボット、民間宇宙ステーション、月旅行など。
一部実現している物もあるが、大半は未だに夢物語だ。
だが電話、それも前世で大成功して普及している携帯電話は是非魔道具として作りたい。
これなら平和利用だし、魔法団の得意とする分野になるから言ってみるべきだろう。
「ではこれなんかどうでしょう?」
電話関連をまとめて描いた紙を見せる。
ダイヤル式黒電話、プッシュ式電話、ショルダーホン、折りたたみ式携帯電話、スマートフォン、衛星携帯電話、など。
「この枠の中は有線式の電話機ですね。あ、電話という概念から説明すると、遠距離に居る人とこれを介して直接会話が出来る装置です。電話機がしゃべった音声を電気信号に変換し、それを2本の銅線で長距離伝送し、相手の電話器で音声に戻します。これを同時に双方向すると会話が成立しますね。」
この世界にも電気信号の概念はある。
魔道の方が便利で簡単だから殆ど使われていないが。
だが、その魔道の方にも長距離通信という概念はまだ無かった。
距離が離れると電気信号以上に魔道信号の減衰が大きいらしく、ミスリル銅線での実験は困難を極めるという。
せいぜい構内の拡声器の音声伝導に使えるくらいだな。
魔法で念話に近い事も出来るが、予め魔力で結んだ特定の相手にしか伝えられず、到達距離も100m程度だとか。
どちらかと言うと光る魔石のセットで通信する方がまだ距離が稼げる。
あれなら3km程度は普通に届くし。
だが、あれは信号の有無だけしか伝えられないのでモールス符合的な通信が限界だ。
「ここに書かれておる電話機?ではどれくらいの遠くの相手と話を出来るのじゃ?」
「全て惑星の裏まで通話可能です。全ての電話機には国ごとに固有の認識番号が振られており、国の認識番号と合わせて国外通話の時に使う様になっています。ですので相手の国と電話番号さえ分かっていれば誰でも世界の果てまで簡単に通話できますね。」
「それはすごいのう。身分の差とか軍や宗教などで制約は無いのかや?」
「基本的に制約はありませんが、軍や政府機関などでは一般からは通じない様にしている番号があると言われています。また、特定の相手の電話番号を指定して受信拒否というのも出来ますので、特定の相手に迷惑をかけることは難しくなっていますね。そこら辺の制御は全て自動でやっており、人の手は介在していません。」
アナログ電話の時代なら着拒は難しかったが、デジタル電話になったら基本発信元の電話番号は識別情報として相手に伝わる。
それを指定して着信拒否すれば迷惑電話はシャットアウト出来る。
もちろん発信者番号を非表示にして掛けてもそれ自体を拒否設定しておけば遮断出来るので、一般人でも安全に使う事が出来ると言うと、2人とも感心していたな。
団長はその原理について詳しく聞こうとしていたが、話についていけなくなった中将に止められていた。
まぁ俺も実際の通信プロトコルまでは把握していないので大雑把な原理だけしか説明出来ないから助かったが。




