317◇領都帰還
317◇領都帰還
===========================
早速3座機6機に搭乗すべく、一旦全員で別荘まで歩いて行く。
そこで馬車組だけ別荘に残し、搭乗組は歩いて坂を上り、崖上の駐機している所に行く。
そこには6機が何事もなく駐機していた。
「待たせたね。変わった事は無かったかな?」
俺が尋ねると領兵は敬礼しながら答える。
「風がたまに強く吹きますので、その時には体重をかけて押さえ込んでいました。次からはもう少し地面と繋げるロープを増やしていただくと安心かと思われます。」
やはりロープでの固定が足らなかった様だな。
次回はもっと安定する固定方法を考えよう。
いや、このシラハマの港の崖上を整備して飛行場にしてもいいな。
滑走路を作り、格納庫を建てればいつでも安心して飛来出来る。
すぐ下に別荘もあるのでそこに領兵を常駐させておけば管理も楽だし。
何より俺達が気軽にシラハマの港に遊びに来れる。
コレ、重要。
「父上、シラハマの港町にまずテストケースとして飛行場を作りませんか?ちょうどここの崖の上が開けた草原になっていますので、50サブキロム程度の長さの滑走路と3機程度入る格納庫があればいいですね。」
「うむ。海軍がここに常駐するとなると連絡を密に取りたいだろうから飛行場は良いな。よし、領都に帰ったら早速領軍の工兵部隊を派遣する様にしよう。それまでに飛行場とやらの図面を描いておいてくれぬか?」
「承知しました。今ちょっとここでラフスケッチを描きますので5分ほどお待ちください。」
シラハマの崖上の草原をうまい事利用出来れば俺自身も気軽に飛んでこれるしな。
そして、軍部も王都から直接シラハマの海軍拠点まで飛べると利便性が格段に上がる。
何なら航空定期便をまず王都-シラハマ間で就航させるのもいいな。
そのついでにランバート領の領都にも寄って貰えば全部軍部持ちで航空郵便が使えるし。
俺はメモ用紙の束を出して鉛筆でざっと崖上草原の輪郭を描き、そこに滑走路と格納庫を配置していく。
滑走路は海風を存分に利用すべく海岸線に直角に配置する。
長さはとりあえず50mくらいにするが、その先を延長すれば200mくらいは取れる配置にしておこう。
将来的に中型機くらいは着陸したいしな。
格納庫はあまり崖の縁に置くと風当たりがきついので滑走路のちょうど中間辺りの横に配置する。
格納庫の周囲にも露天駐機出来る様な広場を設定し、同時に10機程度は駐めれる様にする。
これなら3座機による大量輸送も捗るだろう。
「さて、皆さん来る時に乗った機体に搭乗してください。父上は私の機体の最後部席にお座りください。セバスチャンはデビッドの機体の最後部席へ。」
とにかくシロートを原始的なオープン座席タイプの航空機に乗せるのは時間がかかる。
密閉キャビンの様に放り込んで簡単なベルトを締めるだけでは済まないのだ。
そのシートベルトを締める事自体にアレルギー反応がある。
当然だ。
馬にも馬車にもシートベルトという物は存在していない。
なのに、体を身動き出来ない様にがっちり固定する5点式シートベルトを締上げるとその窮屈さから反発する。
大人なので暴れはしないが、口で文句のオンパレードだ。
しかし一旦離陸してちょっとでもバンクすると途端に大人しくなる。
機体を傾けて曲がるのだが、緩い旋回で30度も傾けるとあれほど五月蠅かったのが静かなものだ。
そこで俺が追い打ちをかける。
速度を落としてフラットスピン気味に横スライドし、180度回ったところで止めて逆回転で元の方向に戻す。
親父殿は何とが踏みこたえていたが、俺に続けて同じ事をしたデビッド機のセバスチャンは目を回して気絶していた。
後で謝っておこう。
そこそこの速さで飛んで40分ほどで領都の練兵場に着く。
領都も近くの河原を整備して本格的な滑走路を作りたいものだ。
射撃場にしている隣に平行に滑走路を引けばちょうと200mになるしな。
射撃訓練は離発着時には一旦休止する様にしておけば事故は発生しないだろう。
1日数回の離発着なので問題にはなるまい。
河原なので大雨などの洪水で浸水する可能性はあるが、ランバート領の領都周辺は割と乾燥している気候なのであまり心配はしていない。
いざとなれば練兵場に降りればいいしな。
練兵場は対角線で200mちょいはあるので中型機くらいなら降りられるだろう。
3座機の今はその4分の1も使っていないが。
着陸してヘロヘロになった親父殿と何とか気がついたセバスチャンを含めた一行は領兵の馬車に分乗して領主屋敷に向かう。
何とか日が暮れるまでには帰り着いた。
「今日は皆さんお疲れ様でした。父上、セバスチャン、帰りの飛行でちょっと無茶してすみませんでした。ただ、突風が吹くとあれ以上の機動飛行をする事もありますので、予め体感しておいて欲しかったのでご容赦ください。」
「う、うむ。なるほどな。あれでまだ緩い方だと言う事か。セバスチャンもそういう事らしいので許してやれ。」
「いえ、私が臆病なのが一番の原因ですのでお構いなく。マーティン様のされる事に不満などございません。」
セバスチャンは執事として慎重すぎるくらい慎重な男だ。
まぁ力仕事や戦闘などは専門外なので余計に体に感じる非日常には敏感なんだろな。
幸い、気絶しても漏らしてはいなかった様で、筆頭執事としての体面は保たれた様だ。
まぁ俺以外、そんな無茶を出来る立場の人間も居ないので、この機会に体験して貰ったのは良しとしよう。




