304◇旗艦乗船
304◇旗艦乗船
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大型船に乗船するのはマーク、ザンド、そして俺である。
表向きはマークが領主代理だが、いざという時の判断は俺がする。
これは予め親父殿とも話し合って決めた事だ。
いくらランバート領の領軍のトップと言えども、政治的な判断は荷が重すぎる。
マークには話の矢面に立ってもらうが、決め事の最終確認は俺の承認を要する。
乗り込む前に簡単に役割を振り分け、小型船に残るデビッドにはバレットM95を任せる。
89式は追加で俺用の物を出してスリングで背中に背負う様にする。
30連マガジンを挿してチャージングハンドルを引き、初弾を装填してセーフティを掛けておく。
ザンドも同じ様にした。
これでいきなり襲われても即座に圧倒出来るだろう。
マークには脇下ホルスター付き9mm拳銃を渡し、マガジン2本と共に装備させる。
それと共に俺の持っていたランバート領の名前の入った正式の記録票を鞄ごと渡す。
交渉時の決め事をこれに書いてもう一枚にも書き写し、両方にそれぞれサインして双方で持つのだ。
口頭では言った言わないになって必ず後で揉めるからだな。
大型船の舷側から縄ばしごが下ろされ、船大工の巧みな操船で小型船をその真下に移動する。
大型船の舷側には水兵と覚しき服装と帽子の船員が鈴なりに並び、オールを漕がずとも自在に動く小型船を指さして騒いでいる。
まるで電線に一列に並んでとまって囀っている雀の群れだな。
その中でも帽子の色が違う船員が「3人だけだ」と言って腕を振って合図をして来る。
マーク、俺、ザンドの順番で縄ばしごを登り、大型船の甲板に降り立つ。
そこには大げさな帽子を被り、肩章の付いた上等な服を着た40歳くらいの男が部下を4人引き連れて居た。
「ようこそ、ノルドロイド共和国の海軍旗艦、ノルドレッド2世へ。私はこの船の艦長のフレッド・キートンだ。君たちシラハマ海上防衛隊を歓迎しよう。」
「乗船を感謝する。私はカルダナイト王国ランバート領所属の領軍司令官、マーク・ウォーレンだ。シラハマ海上防衛隊の指揮も兼任している。こちらはランバート家ご子息のマーティン様だ。領主のお父上様より政治的判断の全権を委譲されている。基本的な交渉は私がするが、承認はマーティン様が行う。よろしいか?」
「ふむ、お見かけするにずいぶん若い様だが、お年はいくつかな?」
うん。
だいぶあなどられているな。
お飾りの領主子息で、マークの決めた事の追承認をするだけと思われてるんだろうな。
そして、外交は舐められたら終わりだ。
こちらの圧倒な技術的優位は明らかなので、海洋国家の海軍軍船程度ならいかようにでも処せる事を認識してもらおう。
「マーティン・ランバートだ。今年で13歳になる。君たちの貿易船の出港を海賊船2隻の襲撃から助けたのは、たまたま私がシラハマの港に休暇で来ていたからだ。そうでなければ君たちの船は今頃どうなっていたか分からぬな。感謝したまえ。」
おや、艦長のこめかみに少しピキりが入ったな。
もっと畳みかけてやろう。
「それと、先ほどの砲撃は投石器などとは全くの別物だ。何を隠そう、先の海賊船2隻を沈めたのはあの大砲の威力だな。5発程度打ち込めば中型の海賊船なら割と簡単に沈む。この船でも10発まではかからないだろう。」
「それはそれは大いなるご意見ですな。ではあの船に積まれている「たいほう」?ですか、それほどの威力をどの様にして入手されたのでしょうか?」
「あれは私が作った。もちろん、モノは鍛冶屋が作ったが、設計は私だ。原理、構造、製造、運用。全て私の発案だ。あれと同じ物はランバート領で既に量産に入っている。シラハマの港にも同じ物が2門あるぞ。それで海賊船を沈めた。」
おやおや、艦長の顔色が少し変わったな。
マークが否定しないので真実と判断したのだろう。
事実ならかの国の海軍力が全てひっくり返る事になる。
こうして大型船3隻で来ているが、交渉が決裂して敵対したりしたら眼下に居る小型船1隻で海賊船と同じ運命になる可能性を考えているのだろう。
「では、我々に何を要求されますかな?我々は貿易船が海賊に襲われずに無事に帰って来た事の理由を調査しに来ただけです。決して武力でどうこうしようと思ってはおりません。」
お?
少し折れて来たな。
では交渉と行ってみよう。
「調査に関しては我々の「大砲」の実演を見せる事は出来るが、譲渡も触れる事も断る。そもそも我が国の国家機密になっているしな。それで良ければシラハマの港に案内して歓待しよう。」
まぁ大型船3隻で合計300人くらいは居るだろうが、港に招待するのは旗艦1隻のみとし、他の2隻は湾外で待機させればいいだろう。
大量に上陸されて占領行為などされても敵わないしな。
そもそもそれだけのキャパシティがシラハマには無い。
その旗艦も港には入れるが埠頭に接岸させず、湾内からカッターなどで上陸させよう。
貿易船が接岸していた埠頭なら水深は十分だと思うが、万一座礁でもしたら目も当てられないしな。
これなら相手側の兵員の人数を制限出来、尚且つ湾内に停泊した旗艦に対して港側から2門の40ミル砲で睨みを利かせられる。
なんならデモンストレーションとして灯台下通過時に小舟に的を置いて試射してみてもいいしな。
「ご招待ありがとうございます。では早速寄港させてもらいましょう。先導していただけますかな。」
「では港の湾の外まではその3隻で来られよ。そこで一旦停船してもらい、この船以外は湾外で待機していただきたい。」
「それは我々を信用なされていないので?」
「いや、単に物理的な問題だ。シラハマの港は大型船が停泊出来るであろう埠頭が1箇所しか無い。貴国の大型貿易船が接岸していた埠頭だが、水深がはっきりと分からないので接岸は遠慮してもらおう。埠頭の少し先に停泊し、そこからカッターなどで上陸されるのが良いだろう。」
「承知した。では案内をよろしくお願いします。」
ちょっと柔らかめの表現をしたので大型船の艦長は不満を露わに出来なかった様だな。
お前達を警戒しているから直接接岸させないのだとは言えないし。




