300◇海賊船試走
300◇海賊船試走
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舟大工の乗船準備が出来たとの連絡があったので全員で海賊船に乗り込む。
タラップには手すりが無いので結構怖い。
これは後で片側だけでも手すりを作ってもらおう。
港の少し向こうに見える船工房では海に面した扉が開き、船首に厳つい40ミル砲を載せた小型船が滑り出して来た。
艤装もある程度されていて、船首の40ミル砲の上と船尾の操舵席と推進器の上に木造の屋根の様な物が付いている。
その間の空間は左右のオール漕ぎ座席のある辺りに長方形の様なテント状の覆いが付いていた。
少しでも軽量化を心がけてくれているみたいだな。
中央と前部には帆走用のマストはあるが、まだ帆は装着されていない。
まぁ近距離しか出かけないので帆は不要だろう。
独立系統の推進器が2基あるので両方同時故障はまず無いだろうし。
この小型船にシラハマ・シーウルフの3人と舟大工4人が乗っていた。
船大工のクルーは工房主が気を利かせて乗せてくれたのだろう。
通常は40ミル砲は2人で操作して残りの1人が操船するのだが、装填が3人掛かりになると連射の効率が上がるので、その間舟大工が操船をしてくれたら助かるのだ。
小型船は埠頭の横を通り過ぎると、推進器を強力に動作させて船首を上げて快調に走って行く。
外海までの海路を予め確認する為だろう。
外国船や中型漁船などが港に入って来る様なら待たないとならない。
それを確認する為の水先案内人という訳だな。
海賊船に乗ったときに、予め領都で父親から預かっていた領旗を2枚、工房主に渡して船首と船尾の規定の位置に掲げてもらう。
これが無いと船の所属を疑われていきなり攻撃されかねない。
灯台下の40ミル砲部隊にも認識させる必要があるしな。
海賊船の方は、出航準備が整うまで20分ほどかかるので、その間は船内の各部を工房主に案内してもらう。
甲板の上のマストは大型の物が3本あり、それの横木に畳まれた帆が巻き付いている。
出航準備している舟大工と元海賊はあまり見分けがつかないが、これは同僚意識を持たせる為に着る物を同じにしているからだ。
海賊の元の着衣はあまりにも汚いので捨てさせたそうだ。
ただ、頭に被るバンダナの様な物の色を変える事で判別は可能にしているとのことだ。
舟大工は黄色、元海賊は白だ。
黄色や白なのは海に落た時に見つけやすくする為だとか。
後方マストの横木を避けて操舵室に入ると大きな操舵輪が見える。
4人掛かりで回す様に2重の輪になっていた。
壁には伝声管が縦横に走り、ベルを鳴らす紐が何本も掛かっている。
操舵室の奥には船長室があった。
今は主が居ないので最低限の机と椅子とベッドの枠だけが残されている。
その横の部屋は航海室だった。
広い机の上に海図が何枚も広げられ、元海賊が舟大工と相談しながら今日のルートを検討していた。
予め工房主から10キロム程度の沖合いまでの周遊と言われているので、その範囲で安全な航路を確認しているとのことだ。
シラハマの周囲に暗礁は少ないが、灯台前には満潮時に水没する岩礁があるのでそれを含めた調整だ。
その後ろのフロアは食堂と食料備蓄庫などだった。
海賊の持っていた食料はあまりにも酷く、全部捨てたので今は空になっている。
ひとつ下のフロアに行くと両舷にオールが並んでいる部屋になる。
両舷それぞれ6個ずつのオールの受け座があり、その下に2人掛かりで漕ぐ大きなオールが収納されていた。
オールを出す口にはそれぞれ蓋が付いており、帆走時はこれを閉めて防水とするそうだ。
その前後の部屋は船員の寝る部屋で、ハンモックが並んでいた。
刀剣や弓矢などの武器庫も同じフロアにある。
船首にある投石器で投げ出す瓶の様な物も壁際に固定されていた。
誘爆しない様にこのフロアのあちこちに分散して置かれているな。
更にその下のフロアにも部屋はあるが、トイレだったり牢獄だったり洗濯部屋だったりなので案内は省略してもらった。
たぶんまだかなり臭いだろうし。
そうこうしていると黄色のバンダナを被った舟大工から出航準備が完了したと伝えられる。
全員で甲板に戻り、出航状態を見る。
碇を上げて埠頭への舫い綱を解き、舷側からオールが4本突き出す。
人数が少ないので片舷8人のオール4本で両舷16人で漕ぐのである。
港を出て灯台前の狭い水道を通り、湾を出るまでは帆を畳んでオール漕ぎだ。
うーん、ここは早急に推進器に置き換えよう。
中型船くらいまでならいざ知らず、このサイズの船をオール漕ぎするのは重労働だ。
人手も要るし、何より速度が遅い。
人が歩くよりも少し速いくらいしか出せないらしい。
これでは疲れる割りには距離が走れないな。
港から外洋に出るまでにへとへとになってしまう。
まぁ今までの船は全てこれを大量に乗せた船員に人数任せでやっていたのだが。
まずオールの先端で埠頭の側面を押して離岸する。
この時は16人全員で4本のオールを突き出して押す。
但し人力なのでゆっくりとしか動かない。
ある程度埠頭から距離が空いたらオール漕ぎ室で掛け声が響きだした。
海賊は太鼓でやっていたらしいが、漁民や舟大工は掛け声でやっているのでその違いだ。
両舷の合計8本のオールがゆっくりと揃って動き出す。
後向きで漕ぐのだが、ベテランほど船首近くに座る。
これは後からオール漕ぎの船員の動作を見てそれに合わせて自分のオールを動かす為だ。
オールは長いのでここで動きが揃わないと絡んでしまう。
新人ほど掛け声に合わせて一定速度で漕げないので、ベテランがそれに合わせて漕ぐ様にするのだそうだ。




