299◇現地視察
299◇現地視察
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「ではシラハマの概略はこれくらいにしまして、まず皆様の興味の中心である海賊船の視察に行きましょう。」
俺はそう言って馬車に乗る様に案内する。
飛行機組の16人は領軍所有の8人乗り馬車に分乗し、親父殿とその配下は領都から乗って来た馬車にそのまま乗る。
別荘街の坂道を下って5分くらいで中央市場の向こうの埠頭に着いた。
中央市場と埠頭の間にある車停めに馬車を停めて馬丁に預け、全員が下車したところでまだ昼飯を食べていない事に気がついてそれを父親に指摘される。
あわてて中央市場の向かいのホテルに駆け込み、領主の名の元に情報局6人、魔法団1人、俺と親父殿の合計9人の席を確保させる。
全員貴族扱いという事で席とメニューを用意させ、一番早く出来上がるのを聞いてそれを注文する。
他の護衛、スカイコンドル、当家の使用人と当領の役人は中央市場で好きな物を食べてもらう。
勘定はマークが取り仕切って公費で落とす様に言ったので文句は無いだろう。
ホテルから戻ったところでザンドを呼んで、舟大工工房の工房主に整備を任せた海賊船の視察をするから準備する様に伝えて貰う。
領主の名前で言う様にしたので最優先で対応してくれるはずだ。
「父上、うっかり失念していました。向かいのホテルのレストランに9人分の席を確保しましたので今から行きましょう。他の者には中央市場で好きな物を食べてもらい、支払いはマークにして貰います。」
「うむ。それで良いぞ。気が利くな。」
俺が案内して8人と共にホテルのレストランに行く。
通りに面した一般客用のフロアの奥にある10人くらい入れる個室に通され、時間が無いのでメニューはこちらで決めた事を言って謝る。
中将も団長もその様な事を気にする様な人ではないのは分かっていたが、笑いながら「忘れていたな?」と俺をからかってきたので親父殿は少し驚いた様な目で俺を見た。
まぁあの2人とはだいぶ気安くなっているのでこんな軽口も自然に出て来るというものだ。
20分ほどして料理が出て来た。
この手のレストランで貴族向けのメニューではかなり速い方だ。
海鮮主体の焼き物なのでそこまで手間はかからないのだろう。
絶妙なタレがかかっていて皆満足した様だ。
俺も気に入ったのでメニューの名前をメモに控えておく。
8人全員に好評だった昼食を終え、中央市場の車停めに戻ると市場に残った全員も食事は終了して集合していた。
その横で待っていた船工房主が近寄って来る。
最初は親父殿の所に行ったが、すぐに俺の指示に従えと言われて俺に挨拶する。
「マーティン様、今日は大勢のお客様がいらしている様ですが、皆様であの船を見るんで?」
「そうだね。今日は父上とその配下、それと王都から軍のお偉いさんと魔法団のお偉いさんが来ているんだよ。少し前に話していた我が国の「海軍」についての調査だね。あの海賊船はもう掃除と整備は済んでいるんだよね?」
「ほぼ済んでおります。掃除はしたのですが、何せ木造船なので合わせ目や木目に染みこんだ匂いはまだ少し残ってますね。これは何年か使っている内に徐々に匂いは抜けていくと思いますんで、これ以上はご勘弁願えますでしょうか?」
「了解だ。まぁ元のあの臭ささえだいぶ減れば何とかなるだろう。「ほぼ」というのは?」
「漁船や貿易船とは違う海賊船独特の操作があるみたいで、今、元海賊の舟大工から聞き出して説明書を作らせてる所で。」
「その元海賊の舟大工は操船は出来るだよね?何人くらい居る?」
「そうですねぇ、反抗的なのもかなり居ましたので、反省して生き直す決意のある者だけウチで引き受けているんで。だいたい10人ちょっとって程度ですね。」
「それ、海賊船に乗せて、今日来ているお客を乗せて少し沖合いまで出られるかい?」
「出来ると思います。私んとこの舟大工も同じく10人くらい乗せれば十分帆走可能かと。合わせて20人も居ればあの寸法の帆船はなんとが動かせますね。」
「父上、聞いてのとおりです。あの船には50人くらいは乗れますので、全員を乗せて少し沖合いまで出てみてはどうでしょう。護衛として、前回作りました40ミル砲と推進器を乗せた小型船を伴走させますので。」
「それはいいだろうな。是非やってくれないか。走るルートはお前に任せる。」
俺は船工房主に今決めた事を伝え、海賊船の船出の準備をして貰う。
航行ルートは沖合い10キロム程度までの周遊ですぐに帰って来ると言う。
こちらに対する飲食などの用意は不要と言うが、椅子だけは人数分乗せてくれと頼んだ。
同時にデビッドをシラハマ海上防衛隊の拠点に走らせて伝言を頼む。
以下を急いでメモ帳に書いて千切って渡す。
今回領主と王都賓客を乗せて海賊船の試走をするので、その護衛としてシラハマ・シーウルフでの伴走を指示する。
他の隊員は灯台下の40ミル砲の拠点で2門を出して装填はせずに待機する様に。
海賊船にはランバート領の領旗を船首と船尾に掲げておくので、くれぐれも攻撃しない様に。
その時に偶然に本物の海賊船が来襲して来たらまずシラハマ・シーウルフで対応する。
それでも突破されて港に入って来ようとしたら40ミル砲を装填して迎撃せよ。
念には念を入れて書く癖が付いているのでどうしてもメモが長くなってしまう。
取り越し苦労かもしれないが、何せ領主と国の要人が乗っているのだ。
出来る事は全部やっておかないと安心出来ない。




