297◇視察出発2
297◇視察出発2
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父親達が出発した後、俺達も出る準備をする。
と言っても前日来た時そのままなんですぐに済む。
昨日迎に来て貰った馬車に再び乗り、駐機している駐屯所に向かう。
3台に分乗し、10分ほどで着く。
まだ朝早いが、もう練兵場エリアでは領兵の訓練が始まっていた。
俺達の馬車が近づくと兵長が訓練を中止し、領兵に指示して大型倉庫の扉を開け、地上に係留された機体のロープを解く。
俺と護衛とスカイコンドルで順番に機体を押し出し、離陸順に風下に並べる。
十分に人数が居るので領兵の手助けは断った。
うっかり興味本意で変な所をいじられて壊されでもしたら目も当てられない。
基本カイトプレーンなんで全てがオープン構造なので、壊そうと思えば簡単に壊せるのだ。
練兵場端に並んだ6機はそれぞれ操縦する者が点検と魔力補充をする。
1号機~4号機はスカイコンドルの1番から4番が、5号機はデビッドが、試作機は俺がする。
魔石の魔力残量を専用魔法陣で測定し、補充用の魔石から適度なサイズの物をチョイスして転送魔法陣で包んでエンジンの中に入れる。
4発機なのでそれを4回だな。
転送魔法陣は魔力を転送するのだが、転送に伴うロスが大きく、6割が転送出来れば御の字らしい。
なのでエンジン内部の魔石の総量の約2倍の魔力量の魔石を突っ込んでいる。
これはエドモンドが鋭意改善中だ。
そしてエンジン側の魔石が満杯になっても魔法陣の転送は止まらず、溢れた魔力は空気中に霧散するので純粋にロスになるらしい。
その為、残量に見合った魔石を選ぶのも使うコツということだ。
どうしても丁度良い大きさの魔石が無い時は経験則で時間を計ってだいたいのところで止め、魔力残量を計る。
それを数回繰り返してほぼ満量にするのだ。
結構面倒だが、レシプロエンジンを定期メンテナンスする事を思えば大したことは無い。
俺のだけは8分割魔力供給方式という別機構なのでエドモンドが作った手順書に従ってメンテする。
2個の魔石ボックスの中の魔石の魔力残量を計り、2個の制御ボックスの中のゼンマイを巻く。
8系統ある各接点の状態も確認し、焼けや消耗が無いか目視と指の感覚で確かめる。
うん、いつ見ても芸術的な機構だな。
確かに時計屋が苦労したと言うだけの事はある。
魔道コンタクターは無接点なので見た目では分からないが、外観は綺麗なものだ。
魔石の魔力残量はまだ半分以上残っていたが、念のため満タンの新しい物に交換する。
これでエンジン周りは準備完了だ。
後は機体の確認をする。
三角翼は一応翼断面を付けてあるので上面、下面の羽布張りの弛みや破れが無いか確認する。
まぁ蜘蛛の魔物の出す糸を混紡してあるのでめったな事では裂けないだろうが、念のためである。
後は機体補強のワイヤーと操作系のワイヤーだな。
ミスリル系の鋼線なので錆には強いが、途中でキンクなどしているとそこから破断する場合もあるので念入りに見る。
使っていると徐々に伸びて来るので調整用のリールを少しだけ巻く。
これはモーリスの作った手順書に明記してある。
かなりの耐荷重の余裕を持たせてあるので、ある程度伸びたところでそれ以上は殆ど伸びなくなるとのことだ。
いわゆる初期伸びという奴だな。
これはワイヤーの両端の受け金具の僅かな変形も含んでいるのでそういうものらしい。
前世のバイクのクラッチワイヤーなども新車で買うと最初は結構な頻度で調整したものだ。
逆に油圧ディスクブレーキは効き代が自動調整なので楽だったな。
機体の確認が済んだので他の機体を振り返ると全員俺の方を見ていた。
しまった、前世の機械ものに対する凝り性みたいなのを発症して待たせてしまったな。
「では全員搭乗してください。シートベルトを締めて発進準備が整ったら手を挙げてください。」
素早くザンドと共に乗り込んでシートベルトをがっちり締め込む。
振り返ると既に全機右手を挙げていた。
「では昨日と同じ並びで発進!」
まず俺が飛び立ち、続けて1号機~5号機の順で離陸する。
上空でゆるく旋回し、5周目に全機揃って隊列を組んだところでシラハマに向かって高度を上げる。
11時少し前に発進したのでゆっくりめに飛ばす。
だいたい時速80km程度だな。
シラハマまで直線距離で60km弱なので50分もかからないだろう。
まぁ昨日みたいに飛行生物の来襲があったら分からないが、もう魔の森との距離はかなり離れているので大丈夫だろう。
目的地は前回と同じ別荘の上方の崖状の草原だ。
親父殿もまず別荘に行くと言っていたので、着いたら駐屯している領兵を8人ほど回してもらう様にお願いしてある。
俺達が降りた後の機体の警備だな。
海風がそこそこあるのでロープで地面に係留してあっても、突風などで煽られて飛ばされる可能性がある。
それを防ぐ為に重し代わりに後席に乗っていてもらうのだ。
2人は予備だな。
緊急時などに連絡で走ってもらう。
時速80km程度で飛ぶと実に快適だな。
ネイキッドバイクでツーリングする時に、高速道路の一番左の車線で時速80kmを保持して走っているバイクを多く見る。
これは風防としての効果のあるスクリーンが無いバイクはこれくらいが快適だからだ。
これ以上になると上半身にかかる風圧がきつくなり、腕力と握力が徐々に消耗していく。
前世で散々400kmツーリングをしたが、だいたいのバイクはこれくらいの速度で走っていたな。
逆にデカいスクリーンを付けた長距離ツーリングモデルなどは時速120km以上でぶっ飛ばしている。
俺も一時期ツァラーを持っていた事があるが、その時は時速130kmでも体に全く風圧がかからずに快適だったな。
これは次期機体として半密閉キャビンを作るのがいいだろう。
前方を流線型に塞いで、後方は解放構造にする。
これなら少ない部材で十分な効果があるな。




