292◇自己紹介
292◇自己紹介
===========================
「ようこそおいでくださいました。私がランバート領の領主、ジョージ・ランバートです。こちらは妻のウェンディ、娘のシンディーです。マーティンは途中失礼は無かったでしょうか?」
「これはご丁寧にお出迎えありがとうございます。大勢で押しかけて申し訳ありません。私は国軍情報局のロナルド・モーガンと申します。階級は中将となります。こちらは王宮魔法団の団長であるエリミネーシャ殿です。マーティン君は実に良く案内してくれました。」
「出迎えありがとう。儂は魔法団の団長だ。今日は情報局の補助として同行した。よろしく頼む。昔学園で会った事があったかな?そしてマーティンはアレだな。ちょっと次元が違うな。言っては悪いが、この領に収まる人間ではあるまい?」
あ、やっぱり親父殿も少し顔をしかめている。
あの伝説のシゴキを喰らった口なのだろう。
何せ全盛期の団長とぶち当たったのだ。
そりゃぁやる気満々だから周囲はたまったものではないだろうな。
そして俺の評価を聞いて複雑な心境なのだろう。
まだ13歳の俺を軍に寄越せと言われているのと同義だし。
態度の大きい団長に比べて中将の腰が低いのは親父殿が伯爵というのもある。
中将の出自は聞いていないが、苗字がある事から貴族なのは間違いないだろう。
ただ、公的機関に就職しているのは次男以降の爵位を継げなかった者達なのであまり威張れない。
公爵や侯爵の息子でも領主である伯爵本人よりは立場は低いのだ。
たとえ中将でもそれが通用するのは軍の中だけだしな。
だが、魔法団になるとちょっと話が違ってくる。
そもそもエルフである。
苗字は聞いていないが、おそらく貴族と同じ扱いをされているはずだ。
ましてや王宮直属の団長である。
伯爵が敵うはずがない。
「さて、長旅でお疲れでしょう。お茶と軽食を用意しておりますのでまずはお休みください。」
「ちょ、ちょっと先にトイレを貸してくれい。だいぶ冷えたでのう。」
さっきから団長がもぞもぞしていると思ったらもよおしていたのだった。
さっきの練兵場ですれば良かったにと思うが、領兵が大勢居たので言いだせなかったのだろう。
早速メイド長のマリアが迎賓用トイレに案内していた。
情報局の何人かも希望したので一旦トイレ休憩とする。
すると情報局の全員が執事のセバスチャンに案内されて迎賓用の男子用トイレに小走りで行く。
初めてだと想定外に冷えるので近くなるのだ。
スカイコンドルと護衛4人は御者をしていた護衛2人に案内されて使用人用のトイレに走って行っていた。
俺はそんなに溜まっていなかったが、とりあえず情報局に混じって済ませておく。
まぁ長距離飛行のトイレ問題は今後の課題だな。
これは前世の小型飛行機でもあった問題だ。
セスナなどの4人乗りくらいなら当然トイレは設置出来ないので、最悪吸水樹脂粉末が入った携帯トイレ袋にする事になる。
密閉キャビンで一時的にシートベルトを外せるから出来るのだ。
更に前世の戦闘機などでは身動きも取れない操縦席に固定されるので、予め尿漏れ対応のオシメ的なパンツを履く。
偵察機や宇宙飛行士も同じだな。
完全に軍用用途なら軍服の下に尿漏れ対策が出来るが、一般客はそうもいかない。
なので2時間を目途に休憩着陸は必要だ。
「さぁ、皆様お疲れでしょうから休憩出来る部屋にご案内します。」
執事のセバスチャンが情報局の6人と魔法団の3人に声を掛ける。
スカイコンドルは情報局の護衛を兼ねているので1番と2番だけ同行させる。
それに親父殿と俺にザンドとデビッドが護衛として付く。
合計15人の大所帯になるが、会議室として使っている談話室は20人は入れるので問題はない。
全員が談話室に入って着席し、メイド達によって紅茶と軽食が配られる。
軽食は俺が出すカ○リーメイトを参考に作った甘みのある保存食だ。
クッキーをベースに色々練り込んで食べやすく腹持ちがする様に調整されている。
但し密閉容器は用意出来ないので保存は1週間が限度だな。
「これは美味しいですね。しかも食べ応えがある。これは保存は利くのでしょうか?」
「作ってから保存条件が良ければ1週間は持ちます。ただ、湿気と高温には弱いので金属缶などに入れる事をお勧めします。」
執事のセバスチャンが答え、中将がこれも欲しそうな目で見ている。
後で要打ち合わせだな。
「なるほど。では最初にこちらに伺った目的からお話させてもらいます。」
中将が代表としてまず現在の我が国の状況を説明する。
東の国境を挟んで隣国とは一度戦闘になり、その時は撃退した。
これは俺の飛行偵察が非常に有用で、これ無しでは現在の有利な状況は保てなかった。
その隣国が今度は海上兵力を結集しつつあるという情報が齎された。
その先兵として海賊に捕縛の代わりの条件として、シラハマの港町の交易に妨害をかける事を強制しているらしい。
更には隣国海上戦力の本隊がシラハマに来襲することも懸念される。
東の国境と違って、シラハマには防護壁や防衛部隊が配備されていないので、襲撃されて制圧されれば我が国の内部に隣国の強力な拠点を作られる事になる。
そうなると、そこに隣国軍を大量に輸送して北上しつつ途中の領を制圧し、最後には王都に南方から攻撃を仕掛けて来ると想定する。
まるで蒙古襲来みたいだな。
あれほどの敵兵力は無いとは思うが、一旦上陸を許すと後は為す術も無く蹂躙される。
我が国に台風は無いので神風が吹く事も無い。
だからまず上陸させない事が最優先なのだ。
その為に防塁を何kmも築くのは現実的では無いので、そこで俺のチートの出番である。




