283◇王都到着
283◇王都到着
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王都に向けての飛行は順調に行き、4時間半程度で王都の軍部工場裏の滑走路に到着した。
途中で1回だけ速度を落として軽食を摘まんだだけで連続飛行する。
まぁ前世のWW2時代の戦闘機乗りに比べたら楽なもんだ。
1000馬力以上あるレシプロエンジンの音と振動に耐えながら連続で5時間以上は飛んでいたらしい。
当時は冷房も無いので南方の戦線に向かうと気温上昇と共に機種に付いているエンジンの廃熱もかなりあるだろう。
それに比べると魔道ジェットエンジンの快適性は群を抜いている。
噴射音はそれなりにするが振動も殆ど無く、尾部に搭載しているので廃熱の問題も無い。
全開にするとそれなりに発熱するが、排気はヘアドライヤー程度の温度だ。
快適な空の旅を終え、全員隊列を乱すこともなく無事王都に着いたのでスカイコンドルに労いの言葉をかけて俺の3座機は工場の整備担当に預けておく。
モーリスが触りたそうにしていたが今は情報局への報告が先だ。
馬車は工場に預けておいた俺馬車で行く。
エドモンドもついでに拾って行く。
情報局に着くといつもの手順で待合室に案内される。
俺、ザンド、デビッド、モーリス、エドモンドの5人は全員にお茶が配られ、椅子も用意されていた。
前回の俺の要望を覚えていてくれていた様だ。
今回は1時間ほど待たされた。
さすがに中将ともなるといくら俺を優先したくとも周囲が許してくれないのだろう。
部下の人に先導されて前回会った会議室の様な部屋に案内された。
「やっと帰って来たか。スカイコンドルの帰りが遅いので心配していたぞ。」
「申しわけありません。機体をシラハマに停めておく都合上、一緒にランバート領領都に帰る必要があったので待って貰っていました。お預かりした機体を傷つけたり盗難に遭うとまずいですので。」
海賊の残党や新たな海賊の偵察がうろついている可能性があるしな。
そんな中スカイコンドルの4人だけ王都に帰らせたら残った5号機と試作機を防護する人手が足りない。
あの4人は実は戦闘能力も秀でているのだ。
中将に不時着した時の生き残り戦力に長けている者という条件も付けていたので、一般領兵よりも明らかに強い。
まぁそうでなくては飛行センスも身に付かないというものだろう。
「む、そういう事情があるなら仕方ないか。まぁ半日遅れただけだしな。それでシラハマだったか、港の戦力は増強出来たのか?」
「はい。海賊に対して有効な攻撃兵器として一応実用レベルに達しました。ご説明しますね。ところでそこに居られる方はいいのですか?」
部屋の隅には場違いな耳の尖った少女の様な人物が座っていた。
のじゃエルフ団長こと王宮魔法団のエリミネーシャ団長である。
部屋に入った瞬間に色鮮やかな着衣が目の隅に映ったが、あえて無視していた。
だが話す前に中将の意向もあるだろうと思って一応聞いてみたのだ。
「なんじゃ、儂の事はもしや忘れてはおらんじゃろうな?これは情報局だけでは手に余ると思うて同席させてもらったのじゃ。何か不満そうな顔じゃのう?」
「いえいえ、何の不満もありませんよ。むしろどう巻き込もうかと思案していたくらいですから。」
さすがにそう言われたら拒否する訳にもいくまい。
俺のブレインとプレイヤーの件もあるしな。
「まぁその件は後で聞こう。まずはお主の領のシラハマの状態じゃな。」
「私の父親の領です。私には兄が居ますので私は領を継ぎませんよ。むしろ継ぎたくない。」
「その心情は分かるぞ。領の運営なぞに関わると無駄に時間を潰される。政治や軍事、経営や流通の判断に膨大な時間を取られる。お主の父親の机の上にも書類の山がいつも積まれておるじゃろう?」
「はい、私の父親には優秀な執事が付いていますのでそれほどの山にはなっていませんが、確かに執務室にかなりの時間篭もってますね。」
セバスチャンがかなり優秀で、領主の書類仕事を予め分類して優先順位を付け、判断の材料になる資料まで添えている。
おまけにメイド長のマリアも部下のメイドに日常の仕事を割り振った後はセバスチャンの助手をしている。
これまたかなりの才媛でセバスチャンの指示の下、資料や裏付け集めに奔走しているな。
この3人が実質ランバート領を運営していると言っても過言では無い。
「では、今回スカイコンドルと3座機をお借りしてシラハマに輸送した物の説明からさせてもらいます。図に描いていますのでまずこれをご覧ください。」
俺は小型船とそれに付ける推進器の寸法入りの図を見せる。
それぞれの詳細もラフスケッチで描いていたので説明として添えて見せて説明する。
「こういう推進器を作りまして、これをシラハマで予め作ってもらっていた小型船の船尾に2セット取り付けたのですね。推進器は向きをかなりの範囲で変えられるので横に向ければ接岸時に舷側から近寄れますし、前に向ければ船尾から近寄れます。」
「オールで漕いだり帆を張らなくても船が進むという訳じゃな。じゃが、そんなにゆっくり進むだけならオールと大して変わらんじゃろ?」
「いえいえ、推進機を2セットとも真後ろに向けて最大まで出力を上げると、大型帆船の全速帆走よりもかなり速い速度が出ますね。」
「それは凄いな。海賊船に追われても逃げ切れるという事か。」
「むしろ逆ですね。海賊船をこちらから追い込みます。相手の船尾に接近し、小型船の舳先に積んだ40ミル砲で相手の弓矢などの有効射程外から40ミル砲弾を浴びせて撃沈します。」
「弓矢の有効射程外じゃと?確かに陸上ではそうかもしれんが、海の上では波があるじゃろ?外海には出ただけで船酔いするくらいの揺れがある。そんな所で弓の射程外から当てられるのか?」
「それを今から詳しく説明させていただきます。これ無しでは到底当たるものではありませんし。」
俺は別な図面を取り出し、小型船の船首に取り付けられたスタビ付き40ミル砲の概略を説明する。
まず原始的なジャイロの原理として地球コマ的な説明をする。
「車輪の様な円盤状の物は高速に回すとその軸を傾けた時に別な方向にねじられるという特性があります。馬車の小型の車輪を両手で軸受けを握って腕の中で他人に高速回転させてもらうと、軸をねじるとあらぬ方向に曲げる力が加わります。この力を積極的に利用する装置を作り、逆に軸をねじる力を抑える方向に利用します。」
のじゃエルフ団長は分かった顔をして頷いているが、中将と他の面々は頭の上にハテナマークを浮かべているな。
いや、モーリスとエドモンドは自分で作って分かっているので頷いているが。
そこでジャイロの軸回転駆動方式としてターボの排気側の羽根車の図を描く。
効率の良い風車の一種だとだけ説明し、小型魔道ジェットエンジンの噴射口をここに繋げると言う。
ジェットというよりはもはや大容量コンプレッサーだな。
これである程度小型の円盤でも高速で回す事により、強力なジャイロ効果が出る事を示す。
次にジャイロ機構自体を砲身に対して固定し、それを船上で自在に動く様にする。
砲身から見て砲口が上下方向だな。
「こうする事で40ミル砲の砲口の上下動を人の手で補助操作する事を前提として安定させられます。」
人が綱渡りをする時にジャイロを持って歩くと劇的に安定する事を示す。
まるで空中にもう一本ロープを張ってそれからぶら下がる錘を両手で持っている様な感覚だな。
自分の体重のブレをその錘を両手で左右から適宜押してバランスを取れる。
まぁやり過ぎると錘の慣性で支えきれずに落ちるが。




