280◇領都帰還と父親
280◇領都帰還と父親
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きっちり30分間飛び、領都まで到着した。
もうシラハマ-領都間の地上の目印になる物は覚えたので、道沿いや川沿いに辿れば地図を見ずとも飛べる様になった。
そう言えば王都までの道筋もだいたい覚えたな。
後ろのザンドが地図を見ながらナビをする頻度もかなり少なくなっている。
地上の目印だが、家屋があればまだマシなのだが森や畑が続くと似たようなパターンなのでだんだん自分の進んでいる方向が分からなくなって来る。
太陽の方向やコンパスの磁針で補正すれば方向だけは間違わないが、平行してずれているのまでは分からない。
前世もGPS測位が一般化する前は似たようなものだったな。
そこで地上マーカーという物を提案してみようかと思う。
これは赤色の1辺2mの正方形の板を地上に均等に配置して置くものだ。
赤色板の数と組み合わせを工夫すれば上空から見て現在位置を確認出来る。
例えば縦に4列、横に4列として1枚から16枚までの配置組み合わせとなる。
これの有る無しを1と0に置き換えて記号化するのだ。
2の16乗から0枚時を引くと65535通りなので、国内全てに配置してもまだ余りあるだろう。
もちろん向きを一定としておかないと4方向に回転して見た時にダブるので、4×4の下に幅1mのアンダーラインを引く。
これの向きで南北も分かる様に出来るな。
更にアンダーラインと赤色板の裏に強めの魔石を貼り付けておけば夜間でも魔法兵ならすぐに確認出来る様になる。
雨や霧でも確認出来るので、全天候型と言える様になるな。
航空地図にはこれの見方を書いておき、緯度経度でキリの良い値におおよそ合致させて記載しておくと分かり易い。
慣れればよく使うルートなら覚えられるしな。
維持コストもこの世界は赤い屋根や壁が結構あるので、それらの耐候性の高い材質を使えばそこまでかからないだろう。
これらを10kmメッシュで置くとまぁまぁ実用になると思う。
どれか一つでも見つけられれば絶対位置と方角が分かるのが強みだ。
国の縦横が1000km×1000kmあったとしても1万枚で済むしな。
俺達は領都付近で降下し、駐屯地の練兵場の広場に次々と着陸して今朝と同じ様に保管を領兵に依頼する。
何とか日が暮れる前に領都に着いたが、これではもうスカイコンドルを王都に戻す事は出来ない。
シラハマに着いて荷を降ろした後、すぐに王都に帰って貰おうと思っていたが言うのをうっかり忘れていたのだ。
仕方が無い、今日は昨日に続けて領都に泊まってもらい、明日の朝帰ってもらおう。
領兵に馬車を2台出して貰い、俺、ザンド、デビッド、モーリスとスカイコンドルの4人は領主屋敷に戻る。
執事に昨日と同じように泊まって貰う様に言い、俺は父親の執務室に行く。
「父上、ただいま帰りました。シラハマで調達していただいた小型船を無事機動化することが出来ました。」
「その「きどうか」と言うのは何だ?」
やばっ、前世の単語がどうしても出てしまうな。
まぁこちらに今までに無い概念なのでそのまま使わせてもらおう。
「機動化というのは今まで人力や風力で動かしていた物を、魔道具で動く様にした場合に言います。機動力があると言いますよね?それを見た目で当てはめました。」
「そういう事なら言いたい事は分かる。うむ、ご苦労だったな。」
「今回の機動化はまず魔道ジェットエンジンの力で小型船を自在に動かす事ですが、これは思ったよりも上手くいきました。船尾に2セットの推進器セットを取り付け、これの噴射を後ろに向けて進みます。左右の噴射の力に差を付けると弱くした方向に曲がります。これで試したところ、大型船の全力帆走よりも速い速度が出せる様になりました。」
「魔道ジェットエンジンを飛ぶ為ではなく水上を進む為に使うのだな?いっそ空からだけの方が効率が良くはないか?」
「速度の面ではそうですが、船は大量に物を積めます。人数にも特に制約はありませんし。また、40ミル砲を小型船から発射すれば敵の海賊船や隣国船を向こうの射程外から一方的に攻撃出来ます。」
「なるほどな。飛行機械は積める人数や物資量の制限があったな。確かに空中からあの大砲を撃つ訳にもいかないか。」
実はバレットM95を3座機から発射して有効である事は確認済みなんだが、それを言うとそっち方面の楽な方に依存するのが心配なのだ。
俺が居なくなったり、ある日突然スキル能力が消える場合もあり得るのだし。
そうしたら即座にこの領は詰む。
代替えが無いからな。
そうならない様にこの世界のテクノロジーだけで生産出来る物で解決させる様に誘導しているのだ。
何より他人にやらせると俺が楽だしな!
「その40ミル砲も海の上では波があるので小型船の上からは狙いが安定しません。しかし、それを何とかする安定化装置を作って組み込みましたので、100サブキロム程度離れた海賊船の船尾に連続して当てる事が出来る様になりました。シラハマに配属した3門の内の1門をそれに使いましたので、残りは2門になります。それも近い将来にあと2隻の発注済みの小型船に積む予定です。同時に明日王都に帰って推進器もその2隻に積む分を作って持って来る予定にしています。」
「先々の事まで任せっぱなしで申しわけないな。本当にお前が居てくれて良かったと思う。いや、以前のお前も大事だが、領主としての立場ではそうも言ってはおられぬ。今のお前の働きでこの領とこの国が保たれている事は事実だ。だから家族として、息子として、一人の領民としてお前が今ここに居てくれるのが嬉しいのだ。それだけは忘れないでくれ。」
「父上...私も突然この世界に放り込まれた様なものでしたので、最初は記憶喪失を騙ってしまい申しわけありません。あの時はそれ以外受け入れて貰える方法を思いつかなかったもので。そしてマーティンの体を乗っ取った様になってしまって申しわけありません。私も前の世界で死んだはずですので、こちらのマーティンも事故で死に瀕していたのでそれで引き合って入れ替わったのかもしれません。それ以上は私にも分かりませんので何と言ったらよいものか。しかし、この1年で戸惑いながらも家族として受け入れてくれて感謝しています。私の存在がお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。」
父親はまだ完全には俺という存在を認めてはいないのだろう。
それはそうだ。
それまで次男とはいえ、12年間共に暮らして来た息子なのだ。
それを事故で大けがをして死に瀕していたところで、死ぬ代わりに別人格が入って復活したのだ。
そのまま死んでいた方が良かったという気持ちもあるかもしれない。
それほど俺という異分子の存在は大きいという事だろう。
だが、領主として見た場合、これほど使える手駒は無いはずだ。
俺自身も自分の興味もあるが、そうなる様に誘導していたし。
まぁファジーなギブアンドテイクとしておこう。




