275◇魔道ジェット船試運転3
275◇魔道ジェット船試運転3
===========================
とりあえず船体を確認してもらい、ダメージが無いかどうか見てもらう。
工房主も桟橋から俺の走行を見ていた様で、職人と共に色々話していたそうだ。
まぁ一応外洋にも出られる強度はあるみたいで、嵐でも耐えられると豪語していたのだが俺の走りを見て急に心配になってきたらしい。
その為、想定以上の負荷がかかった様に思えるので少し補強させてくれと言って来た。
「あの動きを毎回されるとたぶん10日も持たないと思いますよ。木造なんで繰り返し力が局所的にかかると木材がだんだん潰れて行って最後には折れるんでさぁ。今回気になった箇所を補強させて頂きやすんで、あまり無茶はしない様にしてくださいね。」
「了解だよ。僕も途中で船体がねじれる様に感じたのでそれ以上はしない様にしてたんだよ。補強をしてくれるのはありがたいね。」
「それで艤装はどうされます?補強のついでにやっちまおうと思いやして。」
「そうだな。雨が降った時に凌げる様な屋根が欲しいね。操船は船尾のこの推進器の所でするからこの上もすっぽり覆う様な屋根があったらいいな。長さも船の半分くらいまで延長して、オールを漕ぐ場所も覆う様にして。それと船首に魔道砲を付けるからそこにも屋根が欲しいな。」
「そうしたらまずその魔道砲を先に取り付けてもらえやせんか?それに合わせて屋根も付けやすんで。」
俺はデビッドに指示し、領兵を4人ほど付けて灯台下の格納庫に40ミル砲を1門取りに行かせる。
管理している砲兵部隊に連絡して鍵を持って同行して貰い、推進器を運搬して来た荷馬車を1台使ってここに運び込む。
帰って来た時にその砲を担当している3人も一緒に付いて来た。
やはり自分の担当している砲がどうなるのか心配なのだろう。
「やぁ、砲兵の君たちには申しわけないんだけど、この砲はここにある船に積むことにしたんだよ。但し、調整が終わったら君たちに船に乗ってこの砲を扱ってもらうからここに居てくれるかな。」
護衛1人、領兵2人の40ミル砲グループの1つだが、いい機会なので最初から見ておいてもらおう。
海上に出たら今度は自分が移動するから今までの待つだけの砲兵ではなくなる。
自分で目標を発見して最適な角度で接近し、砲身を安定させて敵船を狙い撃ちする。
言わば猟犬の様な働きを期待される訳だ。
前世のB29を迎撃する震電みたいなものだな。
敵側には護衛船舶が無く、迎撃手段が弓矢程度なのでワンサイドゲームになるけど。
「さて、モーリスの出番だよ。これを分解してくれないかな。」
「了解だ。まずここで砲身をガワに組み込んでしまおう。先に船に積むと斜めになったりして面倒そうだしな。」
モーリスは王都で試作40ミル砲は見ていたし、図面も渡しているので迷うことなく分解し始めた。
造りは簡単なので5分もあればバラバラになる。
その中から砲身と照準器だけを拾って自在スタビライザーの駐退機のレールに固定する。
砲口の上下動と回転方向の重量バランスをカウンターウェイトを取り付ける事で調整し、スムーズに前後左右にハンドルを持って振れる様にする。
次に制御ボックスに魔石を入れ、ロックキーを外してジャイロのスイッチを3個ともオンにする。
ジャイロは2軸ともゆっくりゆっくり回り始めたので軸にロープを掛けてコマ回しの様に加速する。
5分も経つと実用的な回転数まで上昇した。
「うん、スムーズに回ってるね。ここまでの輸送でちょっとは歪んでいるかとおもったけど中々頑丈だ。」
「てりめーよ。何せ大砲が付くんだろ?ヤワな構造で1発撃つ度に狂うんじゃ実用にはならねぇだろ。」
さすがモーリス。
今までさんざん無理や無茶をさせていただけの事はある。
先読みして最適解をくれるのでありがたい存在だ。
ジャイロの動作確認はしたので一旦停止させ、これで砲身の組み付けは完了とし、全体を船に載せる。
かなり重たいので6人がかりで持ち上げ、船の上に担ぎ上げる。
船首の所にはX字のフレームを固定出来る箇所が無いので工房主にマウントブロックの取り付けを依頼する。
作業台に使う鉄フレームの付いたかなりゴツい板を2枚重ねにし、船の船首付近に横木をかなりの数渡して固定する。
その上に更にX字フレームの寸法より一回り大きい板を固定してやっとスタビライザーを載せる。
うん、何か捕鯨船を思い出させる風貌だな。
エイハブがモービィ・ディックという名の海賊船を撃ちに行くのだ。
当時はまだ捕鯨砲は開発されていなかったけど。
40ミル砲スタビ付きが船に実装されたので早速試射をしに行く。
工房主にまたお願いして船を海に降ろす。
船体の補強は後回しだ。
40ミル砲の試射で何か起きるかもしれないし、先に試しておくのだ。
先ほどのメンバーに加えて40ミル砲兵の3人も連れて来ている。
試射用の弾薬50発分も一緒だな。
今度は職人のオール漕ぎに頼らずに推進器だけでゆっくりと港を離れ、灯台の方に向かう。
砲兵には40ミル砲の弾込めをお願いする。
砲身が何やら不穏な装置に取り囲まれているので尻込みしていたが、モーリスに説明して貰って何とか詰め終わった。
砲身のロック機構を付けていなかったので自在機構でぶらぶらして装填しにくそうにしていたので、モーリスに後から機構のロックレバーを付けて欲しいと言う。
モーリス自身もそれは思っていたみたいで二つ返事で了承した。
装填は終わったが発火魔法陣はまだセットしない様に言い、自分で預かってポケットに入れておく。
そのままオール漕ぎより少し速い速度で灯台の前を通り過ぎる。
湾の内側の波がまだ少ない箇所で試射をしてみるのだ。
灯台の真正面の浅瀬から顔を出している岩礁があるのでそれを狙う。
距離はだいたい100mくらいだな。
舳先を岩礁に向けて停止し、モーリスに船の操船を任せる。
なるたけ停止状態にし、舳先が回転する様ならそちらを打ち消す方向の推進器を一瞬わずかに噴かす。
それを左右均等に行って舳先がずっと岩礁の方に向く操作をしてもらう。
これで照準がだいぶ楽になる。
向きが安定したところでスタビライザーのジャイロを起動し、ロープ巻きで加速する。
5分くらいで定常回転に達し、ハンドルを操作しながら照準器を見る。
人力サーボの効かせ方にはちょっとコツがあり、自分の腕がアクチュエータ兼ダンパーになる様に心がける。
あまり力むと逆に照準がふらつく。
絶妙に力を抜き、船の揺動をいなす様にハンドルに寄り添う。
砲身の照準器は分解する時に外していないのでそのまま使えるはずだ。
まぁ車輪と駐退機という違いがあるからそのまま当たるとは思えないが。
それでも一から照準を合わせるよりは遙かにマシなはずだ。




