269◇魔道ジェット船6
269◇魔道ジェット船6
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原理を自分の目と手で確認したモーリスとエドモンドは40ミル砲の図面を見ながら砲身安定システムを設計し始めた。
図面の寸法から青銅製の砲身の重量を割り出し、それに見合った台座を設計する。
台座にはスライドレールと板バネ、オイルダンパーも付いている。
俺が希望して予め図面の隅に書き加えておいたのだ。
車輪が無いので砲身の駐退機能を付けないと発射の衝撃であちこち壊れるだろうし。
特にジャイロの軸に横方向の衝撃が加わるとまずい。
ピボット軸受けの円錐側面に繰り返し強い衝撃が加わると受け皿の方が割れたりするだろうしな。
ジャイロを駐退装置のフレーム側に取り付け、砲身がその中で前後すれば衝撃はかなり緩和されるだろう。
更に前世の釣り漁船での揺れ具合を思い出し、横揺れに対するスタビライザーも追加する。
要はジャイロをもう1系統積むって事だな。
モーリスは渋っていたが、俺が効能を説いて構造を示すと何とかやる気を出した。
砲身の上下動の抑制だけでなく、砲口の回転方向の揺れ=船の横揺れもキャンセルしたい。
銃砲の照準器は砲身が水平になっていないと狙った方向に弾が飛ばないからだ。
斜めになっていると狙った的から斜めに傾いた方向に逸れていく。
そのためジャイロをもう1系統積み、砲身の照準器が常に水平になる様に動かす。
かなりの重量物になるが、大人4人掛かりで訓練して押さえ込んでもらおうと思う。
人間フィードバックアクチュエータだな。
俺はその後ろで号令を掛けながらその状態に力を加え、照準を合わせる訳だ。
当然当たる様になったら護衛と領兵に移管するが。
モーリスとエドモンドが理解してくれ、早速40ミル砲の砲身のダミーを作ってそれに合うフレームを作り始める。
とりあえず効果は限定的で良いので最初はジャイロフライホイールは軽量に作ってもらう。
直径30cm、1枚5kgで円周の縁に重量が偏った鋳造品だ。
木型を作って砂型に埋め、青銅を流し込んで作る。
最後に外周の溝に鍛造の鉄帯で作ったタガを叩き嵌めて遠心力に対する押さえとする。
これを4枚作って砲身の上下動に2枚、回転動に2枚使う。
タービンも俺が前世で見て覚えていたターボチャージャーの排気側の羽根車とケーシングを図に描き、それを木型に彫って砂型から青銅で鋳造して作っていた。
こちらは直径が小さいし、羽根は根元は太く先端は薄くて軽いので遠心力で割れる事もないだろう。
同じくカタツムリ形状の滑らかな内面のケーシングも木型から鋳造で作っていた。
うん、青銅の鋳造は万能だな。
軸と軸受けはかなり苦労していた。
軸が垂直に立つ方は下側の軸受けを潤滑油まみれにすればいいのだが、軸が水平になる方はその手が使えない。
しかも自重でラジアル方向に大きな荷重がかかるので軸両端のピボット軸受けだけでは10kg以上の荷重を受けながら高速回転はちょっとしんどい。
仕方ないので水平軸の方には左右にコロ軸受を追加する事にした。
精度的には満足出来るものではないが、使っている内に自己研磨されてだんだん振動は少なくなるだろう。
こっちの回転数は少し落としてもいいしな。
そうやってなんだかんだと試行錯誤しながら猛烈な勢いで試作を作る。
モーリスの金属加工スキルは本当に凄いので、固いミスリル鋼がまるで飴細工の様に加工されていく。
魔力をある法則に従って流すとミスリルは特性が変化し、柔軟性が増して鉛くらいの手応えになるそうだ。
鋼との合金はそこまで柔らかくはならないが、それでも純粋な鋼に比べると加工は容易だとか。
エドモンドの方はこれ用の魔道送風機もかなり小型の物を2段にして、小型タービンに必要十分な圧力と風量を確保してくれていた。
制御ボックスも足下に置く平たい箱状にし、フットペダルで始動停止が出来る様になっていた。
うん、素晴らしい。
ただ、送風機を始動してからフライホイールの回転数が上がるのが遅いのは、やはりタービンのトルクの少なさの宿命である。
まぁそれは俺がやった様に軸にロープを巻き付けて引いて初動を助ける事で妥協した。
本当はここにDCモーターを付けたいところだが、魔法で実現する方法が今のところ見当も付かないのでお預け状態だな。
最初に上下動抑制のジャイロが組み上がったのでロープを掛けて引いて回してみる。
結構振動するのでフライホイールのバランスを取る。
円盤の円周はほぼ真円なので回しながら白墨を縁ぎりぎりに近づけると振れた箇所に跡が付く。
そこの内側を少しずつ削り、徐々に合わせ込んでいく。
上下の円盤は軸の両端に付いているので距離が離れており、それぞれが独立して振れるので修正はやりやすい。
この調整にかなりの時間を要した。
組み立てよりも時間がかかったんじゃないかな。
やっとロープで引いて回しても振動しなくなったので、タービンに圧縮空気を送り込んで加速させてみる。
さすがに回転数が上がるとまだ微振動が残っているので、一旦止めて円周の内側にダミーの小さい鉛板を貼り付けて様子を見る。
何回か貼り直すと重心位置がずれている箇所が分かるのでそこをすこしずつ削る。
これもかなり時間がかかったが、最後には最高回転数で連続で回してもほぼ手に感じる振動は無くなった。
後はこの状態を維持する為にピボット軸の摩耗の傾向を見て微調整が要るだろうな。




