267◇魔道ジェット船4
267◇魔道ジェット船4
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製作する船舶用魔道ジェットエンジンセットはだいたい以下の仕様になる。
3座機用魔道ジェットエンジン:自重約30kg、最大推力約200kgf、最大推進時間約3時間。
上記を4基束ねて使用するので合計推力は約800kgfになる。
これが1隻に4セット搭載されるので総合計は3200kgfの推進力となるな。
前世の船の船外機の馬力とスクリュー推進力の関係はだいたい1馬力=25~30Nくらいだった記憶がある。
3200kgfは9.8を掛けると31360Nに換算出来る。
30000N÷30=1000馬力相当の船外機を付けた高速船相当になるな。
前世の70フィート(約21m)クラスのプレジャー系船舶は大馬力船外機を3基積んで1000馬力程度にするのが普通で、これで40ノットで時速70kmちょいは出ていた。
今回発注する量産型の木造船もだいたい20mと聞いているので寸法そのものはこのクラスと同じだな。
なんだ、試算してみると魔道ジェットエンジン4基を4セットはこの世界の木造船には明らかにオーバースペックなんだな。
まぁ1隻だけでなく2隻に分けて搭載する事も出来るので注文どおり4セットは作ってもらおう。
1隻に2セットだけ積んでも500馬力相当なので20ノットで時速35kmは出そうだ。
これなら帆船の全力帆走の約15ノットよりも速いし、風向きにも影響されないので十分対応可能だろう。
まぁ水の抗力はどう働くか分からない部分があるし、木造船の船形が速度を出す様に作られてはいないと思うのでこの計算どおりに行かない可能性が大きいが、エンジンを4セット積めば何とかなるだろう。
そうだ、肝心の搭載砲について忘れていた。
まぁこれは今回は後回しにしよう。
何故ならまだ試験段階なので、とりあえずシラハマに配備してある40ミル砲を1門この船に積めば良いからだ。
波のうねりで脱落しない様に固定方法を少し工夫する必要があるが、海賊船の後方から近づいて100mくらいの距離で一旦停止し、そこから40ミル砲をそのまま撃ち込んでもそこそこは当たるだろう。
20mの小さい船なので波のうねりにはそれなりに翻弄されるが、波にはリズムがあるのでそれに合わせて照準を絞って行けば何とかなるだろう。
場合によってはもっと近寄ってもいいしな。
相手が矢を射掛けて来るだろうが、鉄製の盾を数人で展開して砲手と40ミル砲を保護して撃つ瞬間だけ砲口を開けば十分安全だしな。
だが、前世で知り合いに乗せてもらった15m級の釣り船の記憶が蘇る。
何人かの友人達と一緒に沖釣りに誘われた時だな。
湾内ではそこそこ安定しているが、一旦外海に出ると凪いでいる様に見えても結構揺れがある。
ちょっとでも風が強くなるとかなり揺れて慣れていないと一瞬で船酔いするな。
同行した友人達は軒並みダウンしていた。
俺は揺れには強かったので何とも無かったので今まで忘れていたが。
今回発注した20mクラスの木造船はこれに似た揺れが出るだろう。
凪いでいる時はいいが、いつもそう上手いこと行くとは思えない。
ならばあの揺れでは40ミル砲を当てるのはちょっと難しいな。
そう思い直してどうにか安定させられないか考える。
前世の戦車砲や駆逐艦の艦載砲みたいに電子制御で地形や波の動きに合わせてアクチュエータで砲身が上下に揺動し、見かけ上いつも水平線に対して一定の上下角度を保っているというのが理想だ。
これをこの世界のテクノロジーでやるとなると結構難しい。
これに使えそうな魔法は知らないので、やるなら物理ジャイロが要るな。
砲身の上下動だけ抑制すれば良いので、ジャイロの円盤は水平配置で1個で済む。
まぁ重量バランスを取る為に砲身の横に軸を縦に通して上下に2個の円盤を付けた方が使い勝手は良さそうだな。
円盤の直径は30cmくらいで円周上に大部分の重量を置いたフライホイール形状とし、重さは10kg×2個くらいでいいだろう。
これを高速回転させるのだが、魔道ジェットエンジンの噴射で羽根車を回すタービン形式が使えそうだ。
カタツムリの様なケースを作り、横から噴射を吹き込んで軸方向に排気する。
前世のレシプロエンジンに付けるターボチャージャーの排気側と全く同じ構造だな。
これで連続的に高速回転の動力が得られる。
1個で力が足りなければ2個付ければいいし。
軸受けはミスリル鋼の更に硬度の高いアダマンタイト含有合金があるらしいので、それを使ってピボット軸受けとする。
受け皿側にはサファイヤやルビーなどの宝石を使ってもいいしな。
潤滑油にさえたっぶり漬けておけばそこそこの耐久性はあるだろ。
長い上下の軸で受けるので芯ブレも少ないはずだ。
これもモーリスに相談すると、しばらくうーんと唸っていた。
この世界に今までに無い方法だからだろうな。
魔道ジェットエンジンの量産はエドモンド側がやっているのでモーリス側はそんなに忙しくない。
在庫のエンジン4基を取り付けるフレームもさっさと作って舷側へのマウント金具も完成させていた。
操作アームとそれに付けるブレーキレバー、それで操作される回転方向の摩擦ブレーキも出来上がっている。
試しに地面に1列に打ち込んだ4本の杭にマウント金具を噛ませ、動作テストもやってみたが快調だ。
制御ボックスから出ているワイヤーに繋がっているスロットルペダルの踏み加減で自在に推力を加減出来るな。
一度全開にしたら4本の杭が嫌な音を立て始めたので慌てて止めたが。
推力は確かに200kgf×4の800kgfはありそうだ。




