263◇海賊拠点視察3
263◇海賊拠点視察3
===========================
シラハマ駐屯地の司令官には海賊船に積載している小舟でシラハマまでたどり着く可能性もあるし、追加の海賊船が拠点島に来る可能性もあるので見回りを強化して砲兵にも伝えておいてくれと言って市場に戻る。
とりあえず急いでホタテの串焼きを20本ほど買い、俺のストレージに放り込む。
ガレージの方に放り込んだので時間経過が百分の一になり、10時間くらい経ってもまだ暖かいな。
そのまま灯台の下まで戻ってルークにここの司令官に伝えた事を言い、3人で機体に乗り込む。
すぐに離陸して高度1000mで領都まで急ぐ。
30分足らずで河原横の駐屯地に着陸して兵長を呼ぶ。
機体を格納する様に依頼し、ルークに護衛用の馬車の御者をして貰って領主屋敷に戻る。
「父上!大変です!シラハマの件で至急のお話があります!」
俺は屋敷に入るなり大声で叫ぶ。
ダイニングで午後のお茶をしていた家族はその声に驚くが、父親はさすがに落ち着いたものだ。
「マーティン、シラハマから帰って来たばっかりだろう。何をそう慌てているのだ?」
「海賊です!先日壊滅させた海賊の拠点島は無人になっていたのですが、先ほど偵察に行ってみると別な海賊が拠点を占拠していました。最寄りの港はシラハマですので必ず襲撃に来ます。」
父親は執事に向かって護衛の上層部を呼ぶ様に言いつける。
隊長のマーク、副長のミラー、魔法担当のスティーブだな。
デビッド、ルークは俺と一緒だ。
全員揃うと、父親が俺に続きを話す様に促してきたので報告の続きを話す。
「空になった拠点に新たに入り込んでいた海賊ですが、シラハマ襲撃の懸念があるので私の方で飛行しながら魔強銃で海賊船を2隻とも沈めておきました。ただ、小舟を積んでいると思いますし、別働隊が来る可能性もあるので油断は出来ません。今のシラハマの兵力では心許ないのでこちらの領兵を派兵していただけないでしょうか。」
俺が海賊船2隻をさっさと沈めた事を言うと父親は少し脱力した様に苦笑いをした。
「マーティンよ、手が早すぎはしないか?もはや解決したも同然ではないか。いや、別働隊が居る可能性も考えねばならぬか。マーティンが去ってすぐに追加が来たやもしれんしな。うむ。今から領兵を50人ほどシラハマに進軍させよう。マーク、全権司令官に任ずる。まかせたぞ。」
「はっ。了解致しました。」
マークはポケットから小箱を取り出し、中から全権司令官任命時に付ける階級章を取り出して左肩に付ける。
これは前回のシラハマ防衛時に作ったランバート領全軍の総司令官を意味する肩章だ。
父親から任命されたマークがこれを付けた時から領軍は彼の元で一元化される。
護衛部隊は全て将校扱いで、領兵に対して命令権を持つ。
これは領兵の組織全体に対しても周知徹底してあるのでこの肩章だけで指揮系統が決まる。
「マーティンよ、シラハマには本格的に駐屯所の人員増強と、そして海軍を置くべきだと思うが、どう考える?」
「はい、私もそれはずっと思っていました。海軍は是非とも必要ですね。相手が海賊である以上、こちらも海上の戦力を持たないと効果的に対抗出来ません。幸い先日拿捕した海賊船がありますので、あれを改装して海軍の軍船に仕立てるのもありだと思います。」
「元海賊船を軍船とするのは少し嫌悪感があるが、新造するにもかなりの時間がかかるから致し方あるまい。マーティンよ、何か策があるのだろう?」
「はい、実は魔道エアクラフトの推進装置を船に付ける事を考えていまして。これがうまい事いけばオールも帆も必要無くなりますね。速度も追い風の帆走の2倍くらいは出るでしょうし。」
「それは凄いな。是非やってくれないか。あぁ、学園の事があるか。うーむどうしたもんかな。」
「父上、学業が遅れて1年くらい学園生活が長引いても今この問題に比べたら微々たるものでしょう。まず拿捕した海賊船を軍船に改装し、まず補助動力として魔道ジェットエンジンを付ける事から始めたいと思います。」
いきなり魔道ジェットエンジンを水に沈めて魔道ウォータージェットにするのはちょっと敷居が高い。
水に対する魔道効果も確認しないとならないし、海水に対する耐久性や維持管理の問題もある。
ならばホバークラフトの推進プロペラの様に空気で船を進めれば良いのだ。
勿論船の重量に対して効率が悪いのは分かっている。
ただ、それは最高性能を求めた場合であって、現在の帆と人力オールに対してのアドバンテージを出せれば良いのであればさほど困難は無いと思う。
ぶっちゃけ、数の暴力で魔道ジェットエンジンを大量に舷側に並べれば何とかなるしな。
そうと決まればせっかく魔道エアクラフトで帰って来ている事を最大限に活用する。
王都に帰って魔道ジェットエンジンを量産し、船舶用のマウント金具と共に船に搭載して能力を確認するのだ。
こちらに持って来るのも中将の許可を得られれば3座機を何機か借りる事も出来るだろうし。
「父上、船舶用魔道ジェットエンジンの概略と必要性を書面にしますので、王都の軍部宛に国防に繋がる必要性を書き加えて要望書にして頂けませんでしょうか。」
「うむ。今日中に書いてくれれば明日の午前中には追加で書こう。たのんだぞ。」
これで大義名分が出来たので早速ラフスケッチを描き始める。
3座機用の大型魔道ジェットエンジンをそのまま量産し、制御ボックスとセットで多数用意する。
出来るだけポン付けで使いたいので、船舶用マウント金具に一体化して固定する。
エンジン4基と制御ボックス1個のセットだな。
これくらいが扱いやすいだろうな。
4基同時制御の1本レバーのスロットルもそこに置けば良いだろう。
航空機用みたいにわざわざ分ける必要も無いしな。
船なので集中制御しなくとも、船長の号令で各エンジンに配置された人員がスロットルレバーを操作すれば事足りる。
それよりもなるべくモジュール化して量産し易い様にする方が大事だ。
とりあえずシラハマの中型漁船よりも少し小さいくらいの船を買い取り、実験船とする。
一番数の多い種類だ。
漁港の船大工もこのサイズを一番造り慣れていると言っていたな。
新品の在庫も数隻あったはずだ。
見せて貰ったが、長さは20mくらいでオールは左右に4本ずつ、帆柱は2本だった。
拠点襲撃に使った中型漁船が長さ30mくらいだったので、そこそこ小さい。
だがこれで数日かけた漁をするらしいので外洋にも出られるらしい。
ちなみに海賊船は最初の2隻が40mくらい、後の3隻が45mくらいに見えた。
無傷で拿捕したのも同じくらいだな。
さすがにこのサイズでは魔道ジェットエンジンでは難しいので別な方法も考えようと思う。




