262◇海賊拠点視察2
262◇海賊拠点視察2
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低速で飛びながら高度を更に下げ、拠点島に近づく。
すると、港に前回無かった中型船が2隻停泊していた。
シラハマの漁港で予め拠点島への調査隊の動向を確認して今日は出向いていないのを聞いていたので、明らかに漁船ではない中型船は不審船そのものだ。
何なら軽く装甲板も貼ってある。
明らかに堅気の船ではないな。
港には荷物を降ろしている人影が20人くらい見えた。
俺達が降下して近づくと騒ぎだし、怒号を浴びせながら弓矢を持ち出して矢を射掛け始めた。
これ、明らかに海賊だろ。
前回壊滅させた大規模海賊が居なくなったのでこれ幸いと拠点を乗っ取りに来たらしい。
さすがにこれは放置出来ないのでとりあえず海賊船を沈めよう。
高度と速度を上げて弓矢の射程外に出て操縦を中間席のデビッドに任せる。
まずバッグからスケッチブックと鉛筆を取り出し、船の形状と目測寸法を描く。
見えている人数とおおまかな服装も描く。
デビッドから双眼鏡を借りて人相を見てみると、明らかに堅気では無い風体だ。
一言で言って汚い。
煮しめた様なボーダー柄のシャツを着てまだらに黒ずんだバンダナを頭に巻いている。
無精髭も生え放題で、唾を飛ばしながら何か吠えている。
遠いので殆ど聞こえないが。
海賊という事が決定したので、ストレージから俺専用の魔道ウィンドエバキュレーターの付いたバレットM95を取り出し、12.7mm弾を装填済みのマガジンを装着する。
銃身に巻き付いた魔石ホルダーに規定量の魔石を流し込んで蓋をする。
フォアグリップに巻かれたミスリル銅線ごと握って軽く魔力を流すと、銃口より先の空間がグワッと揺すられて動作しているのが分かる。
今回飛行中に撃つので、ウィンドエバキュレーターの効果が風圧で流されるのを考慮してデビッドとルークにはタクティカル耳栓を着ける様に言う。
真空の空間が横にスライドする様に風で流されて消音効果はかなり低下するはずだ。
俺も強力タイプの耳栓を左耳だけにする。
飛行経路をデビッドに指示する必要があるので右耳の耳栓は撃つ寸前にするのだ。
「先に左側の船を中心とした円弧を描くように距離100サブキロム、高度10サブキロム前後で飛べるかな。速度は時速60キロムくらい出してもいいから。」
距離100mは敵の弓矢の射程圏内だが、時速60kmで飛ぶ物体に当たる訳がない。
逆にM95にとっては至近距離だな。
最初は撃たずにその経路を飛ばせてみる。
通り過ぎると沖側に迂回して反転し、もう一回同じ経路を飛ばす。
少し変形した円を描く様に周回する感じだな。
船に対して等距離の円弧状に飛ぶので銃の狙いは一点固定で良い。
狙い越しが不要なので当てやすいな。
3回飛んで飛行経路が安定したのでM95を撃ちだす。
最初の1発は外したが、次弾から船首の喫水線下に命中する。
20回ほど周回して20発の大半が命中した。
続いてもう1隻の船の方に飛行経路を移動し、同じ様に船首の喫水線下を狙って撃つ。
こちらも20発ほど撃ち込んだ。
最初の船の方に戻ると船首が少し下がっていた。
浸水しているのであろう。
そのまま沖合で旋回し、時間が経つのを待つ。
30分ほどして接近してみると、2隻とも航行不能なほど沈んでいた。
他に船は無い様なのでこれで奴等は拠点島から脱出出来なくなった訳だ。
M95からマガジンと魔石を抜き、ストレージに戻す。
耳栓も外してデビットとルークに言う。
「さて、帰ろうか。奴等は暫くは身動き出来まい。後の事はシラハマに帰って領兵の司令官に報告しておこう。」
「シラハマの領兵だけで対処出来ますかね?そこの埠頭だけで20人くらい居ましたよね。船の中やら奥の家屋にもまだ居ると思いますので、こちらもそれ以上の人数じゃないとまずいのでは?」
「そうだね。シラハマで一旦報告したらすぐに領都に戻ろうか。そこで父上の判断を仰いで派兵するなりして貰えばいいかな。」
操縦をデビッドから受け取り、シラハマの港町に戻る。
帰りは高度を1000mくらいに上げ、左手に見える陸地沿いに飛ぶので迷う事はない。
この高度なら海鳥も殆ど居ないしな。
奴等は飛んでいる物を見ると追いかけてくる習性があるが、連続で時速120kmで飛ぶ物体に追いつける訳はない。
猛禽類ならもっと高度と速度が出るが、海沿いには彼らの獲物が少ないのでめったに見ないな。
直線で30km程なので15分ほどでシラハマの港町に到着する。
灯台横に着陸し、ルークに留守番を頼んで駐屯地の司令官に会いに行く。
「司令官居るかな?マーティンだけど。」
「これはマーティン様。飛行機械で来られたそうで。海賊関係ですかな?」
「そうなんだよ。先ほど漁港の責任者に今日は海賊拠点に出ていない事を確認した後、飛行機械で拠点まで飛んで行ったところなんだよ。そしたら新たな海賊が早速拠点を乗っ取って物資を運び込んでいたよ。」
司令官の顔色がさっと青ざめる。
その拠点からシラハマが攻められたらと思っているんだろうな。
「中型漁船くらいの船が2隻いて、人数も船から降りているだけで20人くらいは居たね。船には装甲板が貼られていたし、近づくと怒声を浴びせながら矢を射掛けられたから明らかに海賊と思うよ。」
「そ、それで私達にどうしろと。駐屯地常駐の5人と見回り巡回の20人しか兵力は居ないんですよ。あ、砲兵の方が9人居ますので、彼らが対処してくれるという事でしょうか?」
「いやいや、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。海賊船は2隻とも沈めて来たし。他に船は無かったので奴等はあの島から動けないね。僕はこのまま領都まで飛んで父上に報告するから、討伐隊はすぐに出せると思うよ。」
俺のその言葉を聞いて司令官は心底ほっとした表情を浮かべた。
海賊がよっぽど怖いんだろうな。




