248◇団長異世界談義2
248◇団長異世界談義2
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差動ギヤについては理解してくれたので次に進む。
次はドラムブレーキだな。
「さて、自走車が高速化、大重量化したら走っている時に素早く停める必要がありますよね。」
「今は車輪の内側にリングを付けて、それの内側に革を張った半円形の板をレバーで引いて押しつけて停めておるのう。これではいかんのか?」
「速度が時速30キロム以下ならそれでも問題ありません。ただ、速度が時速60キロム以上になるとその機構で急減速をするとあっと言う間に焼き切れてしまうんですよ。左右の車輪で均等にブレーキを掛けないと片方だけ車輪がロックして危ないですし。」
「ではどうするんじゃ?先ほどの差動ギヤの構造図ならエンジンに行くシャフトを止めればいいのか。そうすれば後輪が左右均等に減速するのう。」
「それもブレーキの一種です。エンジンブレーキと言いまして、車輪よりエンジンの方の回転数を下げると後輪が差動ギヤ経由でエンジンを無理矢理回そうとしますよね?その時にエンジンが回されない様に回転を抑える制御をすれば減速ブレーキになるんです。」
「ならそれだけで完成じゃのう。エンジンを停止させれば後輪の回転も止まる。これで十分じゃろ。」
「ですが、エンジンそのものは停止状態を保持する力はそれほど無いですよね。そもそも停止させるには魔力を加え続ける必要がありますし。」
「そうじゃのう。坂道で停止した時に常に魔力を供給せねば留まれないとなると不便じゃのう。」
「それを解決する為に、後輪の左右にそれぞれ独立でブレーキを付けるんですよ。これは鉄製の鍋の様な構造でして、鍋を左右の車輪の内側に固定します。そしてその鍋の内側全体に内側から広がって接触する様な半月状の摩擦板を押しつけて止めるんですよ。」
前世のドラムブレーキである。
シューのライニングが難物だが、他は単なるメカなのでそんなに敷居は高くなないだろう。
とりあえず一番構造が簡単なリーディング・トレーリング形式とする。
左右の連動はワイヤー引きにしてスプリングテンションでバランスさせよう。
もちろん、ABSなんて物は無い。
「なるほど。2枚の半月型の板の表面に熱に強い石綿を膠で固めた物を貼り付けておき、それをこちらの斜めの板をこじる事で広げて鍋の内側に押しつけるという訳か。」
さすが団長、理解が早い。
だがこれの真の目的は減速だ。
「これは自走車を止めておく時はレバーを引いたままにしてベルトで括って止めておけばいいですが、本来の目的は高速度からの安全な減速なんですよ。レバーは手ではなく力の入る足で踏んで効かす様にし、その踏む力を加減する事で左右均等に摩擦がかかって速度が落ちるという訳ですね。」
「なるほどのう。鉄鍋は熱に強いし、車輪と共に回転するから空気で冷える。内側の半月板も石綿と膠ならかなり熱に耐えるのう。これならかなりの速度や重量があっても安全に止められるという事かいのう。」
「そうなりますね。欲を言えば前輪にもこの鉄鍋タイプのブレーキを付ける事をお勧めします。なぜなら速度が上がったり、重力が重くなると後輪のブレーキだけでは車体を止められなくなるからですね。前輪はエンジンに繋がっていませんが、車体の重量は受けていますのでブレーキを付ければそれだけ安全性が向上します。」
「うむ。言いたい事は分かった。いくら速く走れても止まれなければ事故になるしのう。ブレーキは優先して開発しようぞ。」
ふぅ、エンブレとドラムブレーキの概念の説明もいい加減面倒だな。
まぁ団長はちゃんと理解してくれるのでやりがいはあるのだが。
ディスクブレーキはまだ時期尚早なんで今は話さない様にしておこう。
「次はコロ軸受けにしますね。今の馬車の車輪は車体側の鉄軸に青銅製の筒を嵌め、車輪側の青銅銅製の筒の内側に溝を彫って動物のや魔物の油脂などを擦り込んでいますよね。車体側の鉄軸を中空にし、青銅製の筒と共に小穴を開けて軸の内側に油脂を詰めて摩擦熱で溶けて流れ出て長時間潤滑されるなど、結構高度な事をやっていますが、速度が上がって来るとこれでは潤滑が足らなくなりますよね。」
「そうじゃな。常に油脂は補給し続けなければならんのう。少しでも切れかかると異音がしたり引きずったりするからすぐに分かるが。」
「更にこの構造だと軸と軸受けが油脂は挟んではいますが直接触れていますよね。車体を浮かせて車輪だけ回しても10回転もしないで止まりますし、摩擦による抵抗がかなり大きいと思うんですよ。これをなんとか減らしたいと思いまして。」
「これはさすがにお主の描いておいた概念図で分かったぞい。確かに滑らすよりも転がす方が抵抗が少ない。コロそのものの強度がかなり要るが、ミスリル鋼の配合を調整すればかなりの硬度が出せる。受ける方も同じ材質で作れば軸とコロは全て転がりで、車輪の回転を支えるから摩擦が少ないという訳ぢゃな。」
「そうですね。それに加えて、軸に対して前後方向の力も受ける必要がありますので、そこにはミスリル鋼の板を2枚ずつ入れてそれで力を受ける様にしましょう。本当はここにもテーパー状のコロ軸受けを入れたいところですが、製作が困難でしょうし。」
「うむ。これはすぐにでもやってみよう。今現在の馬車の足回りに追加で付ければ馬の曳く抵抗も減るし、油脂を軸受けに補給する間隔を延ばす事も出来そうじゃのう。」
まぁそのうちローラーベアリングとしてパッケージ化する様に進化はさせよう。
ボールベアリングは真球を鋼で量産する事が今の技術では不可能なので当分お預けだな。




