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魔法使いは自衛隊で無双したい  作者: 賽の目四郎


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245/261

245◇バリスタ兵・砲兵

245◇バリスタ兵・砲兵

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「マーティン、凄いな。これほどまでの命中率があるとは。着弾点の土塁の土煙の量からしても威力もありそうだ。そうだ、バリスタも同じ条件で撃ってみてくれないか。」


中将はバリスタ兵を振り返り、指示をする。

対抗心に燃えたバリスタ兵は4人掛かりでハンドルを回して弦を巻き上げ、槍の様に太い矢を番える。

照準を何度も確認しながら100m的から撃っていく。

100mはさすがに60点圏内に入る。

200m的は初矢は外れた。

焦った様に再度ハンドルを巻き上げ、次弾を撃つと今度はかろうじて20点圏に引っかかった。

まぁこれでも当たりは当たりだ。

次に300m的を狙うがこれまた当たらない。

5本目でようやく10点圏で的ぎりぎりに刺さった。

しかし続けて5本撃っても的に当たったのは2本だけだった。


参考までに、王国で使われている的はその半径を10等分した幅で仕切る様な同心円が描かれており、中心が100点、最外周が10点となる。

その間に8個のリングがあり、中心から10点ずつ下がっていく。

ずいぶん細かい区切りだと思うが、これが競技会などになると更に各リングの中で中心から測定して10等分し、1点単位で点数を競うらしい。

その際に着弾の点は開けられた穴の中心を治具を差し込んで確認し、同心円上ならひとつ上の点数枠になる。

同心円も幅が狭いので遠くからは見え辛く、狙う場合は的全体のシルエットを基準にするそうだ。


バリスタ兵達は色々苦労している様だが、どうやらバリスタは毎回発射条件がかなりブレる様だ。

巻き上げ機の停止位置、弦の抵抗、何より矢の製造のばらつきの多さだ。

一応ミスリル入りの鋼管を使用し、矢尻は鍛造、矢羽根は大型の魔物鳥の尾羽で作ってある。

まぁこの矢羽根が曲者なんだろうな。

前世のアーチェリーでは矢羽根は全てプラスチック成形品で作られていたのでもの凄い精度が出ていた。

それでも矢が軽いので100mを超えると急激に命中率は落ちるんだが。


「どうやら勝負はあった様だな。どうだ兵長。国軍にこの40ミル砲を装備させるのは。」


中将は隣に居た指揮官の様な服装の人に聞く。


「そうですね。命中精度はかなりのものですね。これなら敵の攻撃を防ぎつつこちらの命中率で相手を圧倒出来そうに思えます。」


近距離での威力はバリスタの方があるだろう。

なにしろあの巨大な矢尻だ。

矢全体で数kgはあるので、運動エネルギーは400g程度しか無い40mm砲弾よりもかなり大きい。

しかしバリスタの300m的に対する矢の軌道を見ているとかなり山なりになっており、弾着時の矢速は遅い。

矢自体が巨大なので空気抵抗が大きく、それが減速の主な原因なんだろうな。


最終的に300m地点での貫通力はどちらが優れているかは分からないが、高い命中率で多くの弾数を目標に対して浴びせられるので40mm砲に分があるだろう。

おまけに発射体のコストは圧倒的に40mm砲の方が安い。

何せ鋳造でパッパッと作れる直径40mmの鉛の塊に過ぎないもんな。

命中精度を出すには表面仕上げにちょっとだけ手間をかける必要はあるが。


バリスタ兵の方を見ると、悔しさの表情もあるがそれよりも40mm砲に対する興味の方が上回った様で、担当の4人全員がじっと砲を見ている。

それを見ていた中将はバリスタ兵に40mm砲の手ほどきをしてくれないかと言って来た。


「マーティン、命中率は十分に分かった。君の言う海賊船を200サブキロムから沈めたのも納得だ。この40ミル砲を軍に試させてもらえないだろうか。それには操作方法や手入れの方法を教えてもらわないとならない。どうだ、やってくれぬか。」


「はい、その為に持って帰った様なものです。喜んでご指導させていただきます。」


俺はザンドとデビッドと共にバリスタ兵に装填、照準、発射、清掃、分解の指導をした。

大勢の兵や士官が囲んでそれを見ている。

魔道銃担当の兵も見ながら、あれは同じだなとつぶやいていた。

まぁ原理構造は同じだもんな。


指導時に特に安全性についてはくどいくらいに念入りに言う。

幸い魔道銃、魔道砲は発火魔石粉に発火魔法陣さえ触れさせなければ発火しない。

それさえ外しておいて、最後にハンマーに取り付けるという事を厳守すれば非常に高い安全性は保たれる。

火縄銃みたいに静電気や煙草の火で発火なんてことはしないのだ。


砲身内の清掃については重要性を説いて確実に実施する様に言う。

これを怠ると砲口から砲弾を詰める時に途中で引っかかってそれ以上押し込めなくなるし、取り出すにしても尾栓部分を全バラシしてそちらから残滓を削り出す必要があるので非常に時間がかかって戦闘時には致命傷になると言う。

一概に何発おきにとは言えないが、20発くらいが限度なのは変わらないとも言う。

そして清掃すると命中精度が上がり、砲兵としての評価も上がるだろうと言っておく。

これくらいの煽りなら言っておいてもいいだろう。


何回か装填から清掃までのルーチンを繰り返してバリスタ兵に覚えさせる。

的は一番近い100mの物を使う。

4人とも懐から手帳と鉛筆を出して図入りであれこれ書き込んでいる。

聞くと、バリスタは条件によって照準が変わるのでそれを記録して役立てているのだとか。

特に気温と湿度については敏感だと言っていた。

まぁあれだけ大きな躯体なので熱膨張もあるだろうし、木材のフレームの湿度による変化もあるんだろうな。

弦も消耗品だから定期的に交換するらしいが、弦そのものにもかなり個体差があるので命中率に影響するそうだ。

それに比べて40mm砲は鉄と青銅の塊なので殆ど外乱の影響を受けない。

発火魔石粉も予め発火効率と合わせて調合して袋詰めしてあるのでこちらもバラツキは少ない。

それらが合わさってあの命中精度だと言うと、その場に居た全員が納得していた。


ひととおりの指導を終えたので、バリスタ兵だけで撃ってもらう。

照準の付け方はバリスタと似たような所はあるが、やはり独自の部分も多いので覚えてもらう。

特に砲架が水平になるのを確認する様に言う。

重りを付けた糸を持って来て、それを尾栓にぶら下げるとその下の尾輪とのずれで水平が分かると説明する。

俺は既に経験で水平が分かるのでそれは使っていないと言い、必要と思えば自分達で用意する様にと進言した。


そうこうしているとバリスタ兵の4人は景気よく40ミル砲をぶっ放し始めた。

4人掛かりで手際よく分業し、弾込めから清掃までのルーチンを熟していく。

俺が調整済みの300mの照準があるので300mの的にも半分くらいは当たる。

俺がやった時より命中率が下がったのはやはり照準器の狙いの付け方の熟練度の差だろうな。

射撃の度に反動で大きく下がるので照準は毎回付け直しになる。

その時の照準器の見方がまだ未熟なのだろう。


30発撃ったところで弾薬が品切れになった。

俺もまさかこんなにバカスカ撃たれるとは思っていなかったので予備も持って来ていない。

仕方ないのでランバート領に伝書鳩便を飛ばして40ミル砲用の発射薬と弾丸、フェルトを100発分発注すると中将に言う。

まぁこれはセールスプロモーションの一環なんで俺の自前としておいた。


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