239◇訓練飛行3
239◇訓練飛行3
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あとは慣熟飛行である。
俺は中間席で操縦桿には一切手を触れないから好きに飛んでみてくれと言う。
デビッドは俺が教えたルーティンをなぞりながらあれこれやっていた。
1時間ほど過ぎた頃にはもうだいぶ自由自在に飛べる様になっていたな。
やはり操舵方法は違うとは言え、複座機で飛んでいた経験は生きるものだと思う。
アプローチアングルなんてのは経験が無いと最適角はすぐに決められないものだが、デビッドは数回のチャレンジですぐに自分で決めて来た。
まぁモーターハングの自由度からするとかなり狭いんだが、それでもいい精度で降りて来る。
減速のフレアの使い方も絶妙になって来た。
離着陸も見ていて不安感無く熟せる様になって来たので一旦休憩とする。
滑走路に着陸して格納庫の方に向かっていると何やら騒がしくなっていた。
低速でタキシングしながら格納庫のドアを潜り、駐機位置に止めてサイドブレーキを引く。
スロットルレバーのロックキーを差し込んで機体から降りる。
ここら辺の手順もデビッドには教習済みなので自分でやってくれた。
機体を離れて格納庫の奥の休憩所付近を見ると、何やら大勢の人が集まっている。
何事かと行くと、中将と団長が少し距離を空けて立っていた。
「やっと帰って来たと思ったらここに居ったんじゃな。探したぞ。アレの説明をせんかい!」
「先ほどからの飛行、見てたぞ。明らかに複座機よりも性能がいいな。で、あの報告書は何だ?」
同時に話しかけないでほしい。
俺っちみたいなガキンチョは対応に困るではないか。
「えーと、どちらからお答えしたら良いんでしょうか?」
「ふん、まぁ情報局は契約もあるから譲ってやろう。先にやるがよい。」
「ありがとうございます。では私から。マーティン、お帰り。ランバート領ではえらい事になってたみたいだな。2度の海賊の襲撃を退け、おまけに盗賊も全滅させたとか。是非その話を聞きたい所だがまずは3座機だ。発注した5機が完成した事は聞いていたが、試験飛行が済んでいないので引き渡しが出来ぬとの事だったな。しかもマーティン以外に操縦出来る者が居らぬのでスカイコンドルの連中もどうしようもないと来た。しかしそこに居る者達に聞くと試験飛行は昨日済ませてくれていたみたいだな。そこは感謝する。そして飛行教習も君自身が君の護衛を練習台にして教える側の鍛錬をしていると聞いている。君の護衛はもう仕上がったのかい?」
「いえ、一応一通りは教え込み、一人で操作して飛べはしますがまだ不安な部分はあります。後は繰り返し操作して習熟すれば安定性安全性も上がると思います。それはさておき、私自身の教官としての教え方は満足出来る程度にはなりました。どこまで任せるか、どこまでの範囲で禁止すべきかも分かって来ましたし。」
「それは重畳だ。で、5機の方の試験飛行結果は如何なものか?」
「昨日最大荷重を含めた試験飛行をし、若干の手直しはありましたがいつでも引き渡し可能な仕上がりになっています。」
「うむ。機体については了解した。ただ、そのまま引き渡されても誰も乗れないので乗り手の訓練が必要だな。それはすぐにやってくれるんだな?」
「もちろんです。スカイコンドルの人たちにまず訓練をしてもらい、その後は彼らが教官になって他の兵士達を教育出来る様にしたいと思います。」
「スカイコンドルは国境に2機残してこちらに1機戻って来ている。 まずその2人から訓練を付けてもらえないか。」
中将の後ろに控えていたスカイコンドルの1番と2番が一歩前に出る。
「お久しぶりです、マーティン様。1号機の1番と2番です。ご指導よろしくお願いします。」
もう自己紹介まで1号2号になってるな。
さすがに番号札までは付けていないが。
「おー久しぶりですね。偵察業務は順調ですか?」
「はい、あの機体は非常に扱いやすいので思うがままに飛べますね。でも今度の機体は少し難しいとか。私達に出来るのでしょうか?」
「全く問題無いよ。片足で立ってそのまま5歩くらい飛べる人なら誰でも操縦出来るね。」
片足ケンケンで5歩飛べる程度の平衡感覚は要るな。
まぁ普通の健康人なら飛べて当然なので、逆にこれに引っかかる方が少ないと思うが。
それすら無かったら上空ではヤバい。
複座機までなら強力な復元機能で墜落する方が難しいが、3座機は操縦ミスをすると普通に墜ちる。
リカバリは容易なんだが、墜ちている感覚が分からないとそれもままならないし。
「では今から教習をしましょうか。今日中に2人が飛べる様になれば僕は解放されますし。」
「何を言っているのかな?君には最低でもスカイコンドル以外に10人は訓練して欲しい。合計16人だな。それには来週の1曜日から5日間君には学園に行く代わりにこちらに来て貰う事になる。学長にはこちらから要請しておくから、君の出席状態には影響無い様にしておくよ。なに、1ヶ月も遅れたんだ。ついでに1週間遅れるのも誤差と思うがね。」
無茶を言いやがる。
まぁ分からんでもないけど。
それだけ隣国との状況は悪いって事だろうな。
中将は3座機の偵察以外の能力についても恐らく気がついているだろうし。
「分かりました。では飛行訓練は明日からという事でお願いします。飛行兵の選抜は出来ているのでしょうか?」
「その点についてはスカイコンドルで確認済みだ。複座機に乗せて、高所やパニックに強い者を選別してある。」
なるほど。
そこまで準備が整っているのなら仕方がない。
来週1週間で3座機5機を使える様にしてやろうではないか。




