236◇遊覧飛行
236◇遊覧飛行
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3座の1号機を滑走路横の倉庫、いやもう格納庫と呼ぼう。の、滑走路側の大扉を開けて4人で押し出す。
俺は飛行装備をするが、モーリスとエドモンドは作業着のままだ。
一応高度は1000mを上限とし、速度も時速80km程度に抑えるからゴーグル無しでも何とかなるだろ。
「ではとりあえず席に座って。シートベルトをするからね。掛け方は覚えておいて。外し方も。そう、調整代があるから体型に合わせてちょっときつめになるくらいに絞って。そう、それでいいよ。では飛ぶね。」
2人を中間席と後席に乗せてシートベルトでしっかり縛り、俺は前席に乗り込む。
シートベルトはいわゆる5点式で、両肩、両腰、股下からベルトが出て腹の上で金具で結合する。
これには拘った。
普通車と同じ3点式の構造でもとりあえずは問題無いんだが、そこはそれ、一応飛行機なので万が一にも振り落とされる危険性は無くしておくに越した事はない。
誤操作で1箇所外れても残りの4箇所もそれぞれ操作しないとならない様な構造にしておいたので、不慣れな人がパニックに陥ってもとりあえずはパラシュート無しスカイダイビングを防止出来る。
まぁ今後作るであろう旅客機タイプになると変更すると思うけど。
それには密閉に近いキャビンが必要だな。
振り返って中間席に乗っているモーリスに操縦桿にもスロットルにもキルスイッチにも決して触れない様に念を押す。
足下にも前輪操作用の小さいペダルが両隅に設置してあるので、それにも足を乗せない様に言う。
前輪の操舵は離着陸時に絶対に要るので、一応中間席にも付けてあるのだ。
但し、不用意に踏まない様に足下の両サイドに離して小さな棒状のペダルにしてある。
さすがに作った本人なんで不用意に触った場合の危険性は理解しているな。
エドモンドは何も操作系が付いていない後席なので特に注意はしなかった。
「では飛びまーす。」
ちょっと気の抜けた合図をして滑走路の風下に行き、機体をUターンさせて風上に機首を向ける。
4連スロットルを7割くらい開けるとするすると走り出し、30mくらい滑走したくらいで機首をゆっくり上げる。
上昇角度も10度くらいに押さえ、工場の縁をなぞる様に左旋回しながら高度を上げる。
振り返ってみると、モーリスもエドモンドも機体の左側から身を乗り出す様にして下を見ている。
機体はそこそこバンクしているのでそんなに身を乗り出すと真下が見えて怖くないのかなと思ったが、2人とも「おー」とか「あー」とかの感嘆符を言いながら食い入るように下を見ている。
うん、高所恐怖症じゃなくて良かった。
今後訓練するにしてもすぐに馴染めるな。
「どう?怖くはない?」
風切り音がうるさいので大声で後ろに問いかける。
「すげーなこれ。こんなに飛ぶってのが気持ちいいとは思いもしなかったぜ!」
「俺もだー!魔道ジェットエンジンの唸り声も心地よいぜぇー!」
さすがエドモンドだな。
自分で作って念入りにテストしたジェットエンジンの4重奏だ。
微妙に違う4基の音がハーモニーを奏でている様に聞こえるのかな?
この調子ならゆっくり飛ぶ必要は無いのでスロットルを全開にする。
するとグンと加速して30度くらいの仰角で上昇し始める。
高度1000mを超えた辺りで水平飛行に移り、最高速度を試してみる。
エンジンチルトを調整しながら操縦桿を手放しで水平飛行する位置を探し出す。
対地速度を目視で見ると恐らく時速180km程度は出ていると思われる。
さすがにこれ以上は機体構成とエンジンの噴射速度がネックになって出ない様だ。
この噴射速度もエドモンドと要相談だな。
おそらく噴射速度も現状だといくらノズルを絞っても時速200kmを少し越えた程度だろうな。
ここに多段接続してやればノズル部分の噴射速度はかなり上がるだろう。
圧力も上がるのでそれに耐える構造にしないとならないが。
水平飛行は太陽を目印に東向きに飛んでいたので迷う事は無い。
10分ほど全開で飛んで引き返す。
一応眼下の地形も覚えておいたので、太陽を背にして来た空路を見間違うことなく引き返せるな。
でもやっぱりなんらかしらの位置情報取得システムは欲しいと思う。
コンパスはあるので、ピトー管による対気速度と方角で移動距離と方向は分かる。
それを地図に当てはめて自動的にナビゲートしてくれる様なシステムは難しいよなー。
なにしろ電子回路が丸っきり無い。
だが真空管くらいなら作れそうである。
まぁたとえ作れてもそれで演算回路なんてエニアックみたいなビル1棟規模になっちまうし。
それよりも真空管を作れれば無線通信が可能になる。
複数の山頂にビーコン局を作ってそれぞれ違う周波数で電波を流し続け、指向性アンテナでそれぞれ拾えば三角測量の原理で現在位置は分かる。
何よりそのビーコン局同士で搬送波を変調すれば音声通信が可能になるではないか!
ぶっちゃけ戦前戦後のアマチュア無線局みたいなもんだな。
あの時代は真空管は既にラジオの普及などで一般売りしていたので、それらを流用して回路を自作して通信するのが一般的だった。
もちろん完成品もあるが、庶民では到底買えぬくらい高額であったので一般人は自作が普通だったのだ。
その頃の回路は何となく覚えているので、今度真空管作りにチャレンジしてみよう。
バッテリーをどうするかだが、これも鉛蓄電池くらいなら作れそうだな。
鉛なら魔道銃の弾丸に散々使っているし。
硫酸が必要だが、たぶん魔法団が知っているだろう。
それとなく聞いておこう。
それと発電機だな。
この世界で継続的な動力と言えば水力だ。
川辺で水車を回して粉挽きをするあれだな。
そこにギヤで回転数を増速して模型用DCモーターと同じ構造の物を接続する。
永久磁石をどうするかだが、コンパスがあるので磁石の概念はあるだろ。
最初はミニ四駆程度のモーターでもいいからとにかくDC10Vくらいの電圧を作りたい。
これなら1セル2Vを3セル直列にしたDC6V鉛バッテリーが充電出来るしな。
回転力ならゴーレムエンジンもあるし、ジェットエンジンからの蒸気機関もどきもある。
これで発電しながらDC電源として使えばバッテリー不要で電力が確保出来るな。
まぁかなり大きなコンデンサを入れないと脈動とノイズを防げないだろうが。




