233◇スカンクミーティング+++
233◇スカンクミーティング+++
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工場の裏門から出て10分も馬車を走らせると王都の繁華街の裏筋に出る。
表通りは貴族向けの高級店ばかりだが、一歩裏通りに入ると庶民向けの店が所狭しと並んでいる。
ザンドとデビッドにお勧めの店を聞いて案内してもらう。
「ちょっと高くてもいいから美味い店にして。もちろん僕の支払いで。」
「分かりました。では遠慮なくたまにしか行けない店にご案内します。」
ザンドが嬉しそうに馬車の向きを変える。
デビッドもつられてにやけているな。
よっぽど美味いんだろう。
「ここですね。いつもは給料の出た時にしか来れませんが。」
見るとハンバーガーの店であった。
だが、ショーケースに並んでいるサンプルはかなり大ぶりな肉が挟まった長目のパンズだ。
どっちかいうとホットドッグっぽい。
かなりいい匂いがするな。
デビッドに5人分買う様に指示して領収書も貰う様に言う。
一応業務だもんな。
デビッドが立て替えておくと言うので代金は領収書と引き換えに後で払うが、これは俺のポケットマネーから出す。
彼らにはスカンクワークスの必要経費で落とすと言ってあるので遠慮はしないだろう。
俺が奢ると言うと彼らは遠慮するだろうからこういう手を使う。
なに、経費計算が面倒だから本当に俺のポケットから出すけどな。
5人分の金額は結構した。
一人当たり4千円相当だな。
たかがハンバーガーと思って舐めてたら庶民のディナーより高い。
まぁそれでも繁盛しているのは貴族街との境目にあって、貴族の使用人と思しき人も結構入っていたからだ。
これなら味も期待出来るかな?
ザンドとデビッドも月一には必ず買うくらいだし。
作るのに30分くらいかかるとの事なのでデビッドを店の前に残して俺とザンドは馬車に戻る。
この貴族街と庶民街の境目というのは両方からの客が見込めるのでかなり立地条件が良く、家賃もそれなりに高いそうだ。
ちなみに貴族街の商店は個人持ちが多いが、庶民街の商店は殆どが賃貸物件だ。
庶民には資金力があまり無く、アイデアと品質で勝負するので店を買う余裕は無いからだそうだ。
しかもよっぽど売れていないとこの境界付近の立地の良い賃貸店舗は借りれないらしい。
何でも借りる時に商業者協会の審査があり、それに合格すれば格安で良い立地の貸店舗を借りられるが、審査結果が渋かったら条件がそれなりに悪くなるとか。
その結果、境目付近には名店と呼ばれる店が残るのだそうだ。
そういう事を馬車の側で貴族の使いっぽいオッサンが声高に話していた。
相手の庶民っぽいオッサンは顔馴染みらしいが、ちょっと迷惑そうに頷いている。
その内容は庶民側には周知の事実の様で、周囲の人たちはちょっと呆れた表情をしていたな。
そうこうしていると俺たちの分が出来上がり、デビッドが大きな紙袋を抱えて戻って来た。
冷めない内に帰りましょうと言うと車内のザンドに袋を渡して御者席に飛び乗り、馬車をくるりと転回して来た道を引き返す。
心なしか速度が速い。
8分ほどで工場に戻り、モーリスとエドモンドを呼ぶ。
2人で協力して車輪を付けていた様で、枕木を噛ませて持ち上げた1号機のフレームの下から這い出して来た。
「やけにいい匂いがするな。ひょっとしてあそこのハンバーガーか?」
「そうですね。貴族街との境目にある「デリッシバーガー」ですね。そこの代表的な奴を買って来ました。」
「あそこは美味いんだよな。結構高いからあまり頻繁には食えないから月一くらいだな。」
みんな考える事は同じみたいだ。
これは期待が持てるな。
「では早速食べようか。」
工場の宿泊室に行き、お茶を淹れてもらって皆に配る。
テーブルに着き、皆でハンバーガーを頬張る。
うん、確かに美味いな。
ハンバーガーと言うよりはステーキ肉をそのまま挽肉にして炭火でミディアムに焼き上げ、それを挟んだ様な食感だ。
前世でもハンバーグの得意なステーキハウスの目玉メニューになっていたな。
そこもステーキに使われる肉をそのまま挽いて捏ねて味付けしてハンバーグにすると言うのを売りにしていた。
俺も好きで、それこそ月一でわざわざ遠回りしてでも食いに行っていたな。
たしかブランコビリーだったかブリンコビリーだったか...
買って来たハンバーガーは結構大きく、一般的なハンバーガーの2個分はあった。
長細いのでサ〇ウェイのサンドイッチをそのまま大きくした様な感じだな。
ハンバーガーのパテも分厚く、前世の24時間店の2倍以上はある。
噛むと肉汁がじわっと染み出してパンズを湿らせる。
うん、旨い。
皆黙々と齧ってあっという間に完食してしまった。
俺も少し遅れて完食する。
確かに人気店になるのも分かるし、たとえ月一だとしてもリピーターになるのも分かった。
「さすがみんなのお勧めだけあって確かに美味しいね。これから毎日これにしようか?」
「いや、それは勘弁してくれ。たとえ奢りだったとしてもこれは毎日食うもんじゃないんだ。」
「そうだな。月一くらいに食べるのが丁度良いんだ。それなら俺たちにも手が出せるしな。」
なるほど。
奢って貰って毎日食べるとこの旨さの有難みが減るんだな。
自分で稼いだ金で食ってこそ、この旨味が感動に変わるんだとか。
その意見には4人とも一致して同意していたな。




