210◇父親参観日
210◇父親参観日
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風呂から上がって部屋着に着替え、夕食の席に着くと兄が居なかった。
そう言えば今日の朝出発で王都に戻ると言っていたな。
朝食後すぐにガーソンの所に行っていたので気がつかなかった。
「父上、兄上は王都学園に戻られたのですよね。私はまだ暫くはこちらに留まってやる事があるので母上とシンディーには説明しておきたいのですがよろしいでしょうか。」
「うむ。私から言おう。ウェンディ、シンディー、マイケルは王都学園の新学期になるので今朝出発したな。だがマーティンがまだここに居ることに疑問を持ったと思う。これは先日の海賊襲撃があった事も関連しているのだが、マーティンの作る物がこの領の安全の為にはどうしても必要になるのだ。しかしまだ十分に準備が出来ていない。そこでマーティンには王都学園に行くのを遅らせてもらい、しばらくここで準備に協力してもらう事にしたのだ。」
「母上、ご心配には及びません。おそらく10日ほどで私の協力は終わると思います。終わり次第学園に戻りますので学業の方もさほど影響は受けないと思います。」
「まぁマーティンがそう言うのなら仕方ないわね。領の安全は最優先というのも分かるけど、怪我だけはしないでね。」
母親は俺が飛んだり撃ったりして危険な事をしてると思ってるんだろうな。
そのとおりなんだけど。
「はい、十分に気をつけて動いていますのでご心配なく。父上にも色々援助していただいていますのでそんなに時間はかからないと思います。」
まぁ実際には俺が主体で動いているので、効率を上げるにはいかに作業を他人に振るのかが重要になるな。
やっぱり領都にも技術的な事が出来るブレインが必要だ。
王都にはスカンクワークスという学園公認の俺用のワークエリアがあり、魔石のエドモンドとメカのモーリスという殆ど専属みたいなブレインが居る。
彼らは役割分担でそれぞれ得意分野で能力を発揮するのでもの凄い効率を上げている。
あれはホントに凄いと思う。
俺は殆どアイデアを出すだけで形になるもんな。
こっちにもハンスという魔法特化のブレインなら居るんだが、ちょっとメカに弱いんだよな。
発火魔石では無類の強さを発揮していて非常に助かっているんだけど、それ以外はあまり頼りにならない。
その点はガーソンがかなり頼りになるが、彼は独立した工房の主なんでブレインというよりは頼りになる外注業者なんだよな。
まぁそれでも今のところうまく回っているので恵まれている方ではあるんだけど。
その日は疲れたので夕食後にすぐにベッドに寝転がって色々考えているとブレインどうこうのところで記憶が途絶えた。
次の日の朝は朝食後にすぐに父親にせかされて出発する。
まるで父親参観日の朝に父親にせかされる小学生みたいだな。
俺馬車に父親、俺、ザンド、デビッド、ハンスの5人で乗ってガーソン工房に行く。
「ガーソンおはよー。試作の40ミル砲を持って出るよー。」
「マーティン様いらっしゃい。あ、これはご領主様、いらっしゃいませ。今日はマーティン様のお役目をご覧になられるのでしょうか?」
ガーソンが慣れない敬語をつかって変な言い回しになってるな。
「そのままでよい。今日はマーティンに40ミル砲とやらを撃つところを見せてもらいに行くのだ。これが海賊を退治できる切り札になるらしいしな。」
「それはよろしゅうございます。せっかくなので午前中だけでも私も同行させていただきやす。」
ガーソンが父親のご機嫌を取っているな。
あまり長い時間出られても作業が滞るだろうが、昨日の様子だと午前中は弟子の作業待ちになるから都合が良いのだろう。
ガーソン自身も一度自分の作った物がどういう効果を出すのか見てみたいのだろうし。
「ではガーソンも一緒に馬車に乗って行こう。6人までなら乗れるんでちょうどいいしね。」
俺がそう言うが、ガーソンは遠慮して自分の荷馬車で行くと言う。
なら御者席に乗ってくれと言うと渋々承知した。
俺馬車のリアキャリアに試作40mm砲をロープで結び、早速出発する。
ザンドとガーソンが御者席で、他は室内だ。
歩く速度でゆっくりと進む。
父親になぜこんなにゆっくり進むのかと聞かれて、これは試作機なので振動で狂うと検証出来なくなるからだと言う。
まぁ本チャン機でも馬車の巡航速度で曳くとあちこち壊れそうなので、シラハマに移送する場合は分解して荷馬車に積んで行くが。
重量はだいたい250サブタン程度に収まっているので、モーリスから借りた馬車に3門は問題無く積める。
40mm砲は簡単に分解出来るので、砲身、台座、車輪に分ければ積むのも容易だ。
15分ほどゆっくり走り、河原の射場に到着する。
まず的の後ろのバックストップをアース系魔法で修復する。
俺、ハンス、デビッドの3人で分担してやるとあっという間に終わる。
そして的台にストレージから出した的を2個並べて置く。
いつもの直径が約1mの奴だ。
木の枠に同心円の描かれた紙が貼ってある。
まぁ俺以外が撃つと木の枠もボロボロになるんだが。
的を置くと馬車に乗って100m地点の目印まで下がる。
そこで昨日と同じように準備し、照準器をそのまま信用して初弾を撃つ。
撃つ前に父親とガーソンに消音効果の高い方の耳栓を渡して強く耳に押し込む様に言う。
紐が付いているので耳奥に引っかかって出て来なくなることもない。
俺達はタクティカル耳栓をする。
連携に会話が必要だからだ。
父親は40mm砲の後ろ20mの位置に停めてある馬車の陰に案内して顔だけ出す様に言う。
ガーソンはその後ろで馬車から顔を横に出している。
馬にもイヤーマフの様な耳栓をしてあるので最近は驚きもしない。
俺達は40mm砲の5mほど後ろで盾に隠れて発射紐を引っ張る。
最初はわざとウィンドエバキュレーターを発動しなかった。
さすがに5mの距離でタクティカル耳栓だけではきつく、少し耳鳴りがする。
後ろで親父殿が絶叫しているな。




