201◇休暇延長
201◇休暇延長
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早速叔父上に伝書鳩便を送る準備をする。
こちらの騒動はまだ王都には伝わっていないので書く内容には気を使う。
父上によると最初の海賊船2隻の事もまだ王都への報告は保留しているそうだ。
その後すぐに追撃の相談が始まったもんな。
バレットM95や89式を使った事を誤魔化す細工もまだ不十分だし。
なので俺が新学期登園が遅れる理由は、こちらで魔道銃の生産に関する問題点の解決に時間がかかる事にする。
魔道銃の延長で40mm砲を作るんだから嘘は言っていない。
一応書き上げた物を父親に見せる。
夏期休暇延長だが、期間は書いていない。
海賊の事も一切書いていない事を見て苦笑いしているな。
まぁまだ父親自身も領として王都に送る報告の内容を決めていないんだからこれでいいのだ。
早速伝書鳩便で王都の叔父宛で送った。
王都への帰還が遅れる連絡は学園だけではなく、情報局と魔法団とスカンクワークスにも行く様にしている。
いずれも俺ががっちり噛んでいるので一応言っておかないと騒ぎだすだろうしな。
さて、銃器はある程度詳しいが、砲についてはうろ覚えだ。
先込め式には違いないので魔道銃と構造は一緒で良いと思うが、強度が判断出来ない。
記憶によると青銅製や黄銅製の大砲が主流の時代もあったらしいので更に混乱する。
鋳鉄を作るのに鉄を溶鉱炉で十分溶かせられればよいが、ランバート領での技術ではちょっと無理だ。
魔道送風機で効率よく鉄を赤熱化させるのが関の山だし。
鉄対応の溶鉱炉はあったとしても王宮魔法団の秘匿領域だろうから教えてはくれまい。
たとえ教えられても高炉なんて指定されたら作れる気がしないしな。
まぁ一言で大砲と言っても種類は様々だ。
戦車砲や戦艦の大砲みたいなライフル銃をそのまま大きくした様な物もあれば、榴弾砲の様に空高く打ち上げて相手の頭上に砲弾を降らせる物もある。
はてまた迫撃砲みたいな一種の噴進砲みたいなロケット紛いもあるし。
一応この世界にも青銅はある。
錆びると緑の粉を吹く奴だな。
銅と錫の合金で、古くは刀にも使われていた。
前世でも紀元前から使われていたくらいだし。
今でも鉄ほど強度の要らない物は鋳造し易い青銅製の物が多い。
ならば40mm砲の砲身もまず青銅で作ってみようと思う。
鉄に比べて融点が低いので炭火と送風機で容易に鋳造出来るのが1番のメリットだ。
弱点は鉄に比べて表面硬度が低いので摩耗し易いのと、強度そのものが低いので薄く出来ない事だな。
それを補う為に鉄とのハイブリッド構成にしようと思う。
まず魔道銃と同じ技法で平板を鍛造で曲げて内径40mmの筒を作る。
その外側に巻き金を巻いて強度を出す。
この時の板厚は魔道銃と同じ位にすると製作難易度はそこまで高くならない。
尾栓も魔道銃と同じ技法でネジ止めとする。
しかしこのままでは40mm砲としての威力を出す時の強力な内圧に耐えられないので、この外側に青銅を鋳造で巻くのだ。
巻くというよりは鋳込むというべきか。
鋳造は砂で鋳型を好きに作れるので、厚みは銃口は薄く尾栓付近は厚くする。
鉄で作った尾栓も内圧による抜け止めとして、尾栓の後ろに青銅の鋳造で閂状の入る角穴を追加する。
ここに鉄製の閂を横から差し込み、くさびを打ち込む事でがたを無くす。
これで弾詰まりの時のリカバリが容易になる。
砲身内部の清掃もし易くなるしな。
砲身を据える台座は仰角の調整がネジ送りで出来る様にする。
方向は砲自体の向きを変える。
台座の両脇に馬車用の車輪を付け、尾栓の下辺りに左右に振れる様に横向きのブレーキ付き車輪を付ける。
これで1人で方向を振って固定出来るな。
照準器をどうするかだな。
初速の速いライフル砲的に使いたいので砲身の上に照星と照門を付け、照門を距離に応じて大幅に高さを変えられる様にしよう。
前世のタンジェントサイトを参考に砲用にアレンジするか。
うん、だいたい構成が固まって来た。
とりあえず図を描いてガーソンに見せよう。
「ガーソン居るー?」
ガーソン工房の横の搬入口に勝手に入り、声をかける。
もうガーソンとは気安い仲だ。
ストハン鍛造機と魔道送風機で絶大なる恩を売っているので俺の事は下にも置かない扱いをしてくれる。
「はいはい、マーティン様。よくいらっしゃいました。鍛造機と送風機は絶好調ですよ。あれから打つ速さを抑えてじっくり形を整える方に注意を向ける様に徹底したら空打ちが無くなって無駄な競争も減り、品質も一段上がりました。」
「うん、進言を聞いてくれてありがとう。王都では次の鍛造機と送風機も製作中だからもう少し待ってね。」
モーリスとエドモンドにはあれから進捗を聞いていないが、まぁやってくれているだろう。
3座機製造との兼ね合いもあるのであまり無理はさせられないしな。
「ところで今日は新たな魔道銃について相談しに来たんだよ。まず図面を見てくれないかな。」
俺は先ほど描いた40mm砲の図面を広げる。
各部毎の製造方法も描いているので見ただけで分かる様にしている。
それでも作る目的などは書いていないので口頭で説明する。
「これは海賊船の様な大きな目標に対して有効な武器だよ。今の魔道銃では大型の海賊船には全く通用しないんだ。それで魔道銃の構造を大型化して威力を20倍くらい引き上げる物を描いてみたんだよ。作れるよね?」
ガーソンは図を見て「ううむ」と言ったきり返事が返って来ない。
図面を食い入る様に見ているな。
暫くするとポツポツ質問し出す。
「マーティン様。この内径で魔道銃と同じ様に鍛造するとの事ですが、そう簡単に出来ますかねぇ。使う鉄板もかなり大きくなりますし、何よりこの長さの物は作った事がありません。」
「いや、使う鉄板の厚さは同じでしょ?なら力は多少余分に要るかもしれないけど、やってやれない事はないよね?」
「うーん、まぁそう言われると同じことは同じですが。分かりました。まず私がやってみましょう。」
ガーソンは俺の熱意に折れた様で、早速作ってみると返事をした。




