199◇領都凱旋
199◇領都凱旋
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一夜明けて港は平静を取り戻した。
昨晩の乱痴気騒ぎの跡もきれいに消され、通常業務に戻る。
違うのは冒険者協会の倉庫の中だ。
先発の3隻60人に加え、拠点で捕縛した18人が追加される。
かなり広い倉庫だが、むさ苦しい男の密度はかなりのものになった。
水だけは与えるが、もはや尋問もせずに領都に移送するのを待つばかりだ。
当然縛られているので前も後ろも垂れ流しで異臭が漂っている。
支部長曰く、倉庫の床は漁で獲った大物の魔物を捌く事もあるので水洗い可能とのことだ。
どうりで躊躇せずに汚い海賊を放り込んだわけだ。
午前中に現地での色々な確認や処理があったので俺達はそれに奔走させられる。
拿捕した海賊船の寸法の確認や概略図の作成、海賊拠点の構成や港の状況、中型漁船2隻をチャーターした事の詳細、海賊拠点での俺達5人と護衛10人の行動の詳細、保護した人質のリスト作成など。
これらをマークとスティーブが主体になって報告書の形式にまとめ上げた。
射撃に関しては全面的に俺に質問される。
狙撃による海賊船3隻の半沈没に至るまでの経緯の詳細、護衛10人による拠点襲撃時の銃の扱いと制圧結果など。
まぁ実際にこれが無かったら今回の攻撃は成功していなかったのだからメインパートとも言える。
後は港町の各部署の動きや事故などの記録も報告書にまとめる。
報告書が完成したので俺が父親に届けるべく先発で港町を出発する。
報告の説明に必要なのでマークも俺馬車に乗る。
6人になるが、車内に4人御者席に2人乗れば何とかなるな。
荷物も増えるが、俺のガレージに放り込む事で対応した。
そう言えばバレットM95の狙撃セット5組もそのまま放り込んだままだったな。
領都に帰ってから整理しよう。
俺達が出発する少し前に海賊移送用の荷馬車の準備も完了した。
海賊達は16人ずつ5台に分散して詰め込まれる。
まぁ5時間程度で着くだろうからそれまでに死なない様に耐えてくれたまへ。
俺達6人は途中の道の駅もどきのトイレ休憩以外は走り続け、まだ日が高いうちに領都に到着した。
早速6人で父親の執務室を訪れ、マークが報告書を渡して口頭で概略を説明する。
父親もまさか本当に海賊を壊滅させたとは思っていなかった様で、驚きと嬉しさが混ざった表情をしていた。
「マーク、本当にごくろうだった。ここまでやってくれるとは思ってもみなかったので嬉しいぞ。」
「いえ、これは全てマーティン様の采配と装備の提供があったからこそです。我々だけの力では到底なしえませんでした。」
「そうだな。マーティン、今回もご苦労だった。お前が居なかったら今頃シラハマの街はどうなっていたか分からんしな。」
父親には俺の事は全てバレているので素直に褒められる。
そして先日と今回の海賊襲撃について推測を含めた解説をする。
「海賊は今までは微妙なバランスを保って襲撃していた様です。主に外国船を狙い、我が国と領の直接の反撃を牽制していました。それに加えてシラハマの漁民達にもちょっかいをかけていなかったのでシラハマの街から海賊討伐の強い意見は出て来なかった様です。それが私が直接攻撃して先発隊を撃滅する事によってさすがに海賊も自尊心も耐えられなかったのでしょうね。そういう意味ではある種の賭けだったと思います。」
「マーティンよ、実際のところお前は賭けなんぞとは思っていないのだろう?これだけの成果を誰一人欠ける事無く達成したのだ。しかも戦闘で海賊も一人も殺していないというではないか。こういう事は圧倒的な戦力差が無いと出来ないことだぞ。」
まぁそれは狙ってやったことなんですけどね。
元現代日本人としてはやはり戦争とはいえ殺人はなるべく避けたいのですよ。
米軍ですらベトナム戦の時は大量のPTSD(心的外傷後ストレス障害)患者を出したらしいし。
軍の訓練で至近距離で直接相手を殺害する方法を指導され、実戦でそれを実行した結果精神を病んでしまうのだ。
俺もそうはなりたくないので、よっぽど自分が危険に晒されて正当防衛に近くならないとやらないだろうな。
以前は強がって「転生したこの世界なら殺し合いは普通だぜ」と粋がっていたが、実際の局面に立たされると躊躇するものだ。
「そう言っていただいて嬉しいです。私の方針に間違いが無い事が確認出来たので安心しました。」
「後の事はこちらでやっておこう。マーティンは一旦この件から離れても良いぞ。本来お前は夏期休暇のはずだしな。」
本当だよ。
なにが「なつやすみ」だ。
とんでもない事の連続でかなり疲れたな。
まぁそれでも人や領の役に立つ事が出来たので満足感はあるな。
夕食時には海賊討伐の噂は屋敷中に広がっていた。
日暮れ前に到着した海賊移送用の荷馬車5台とそれに乗せられている人相の悪い男達が領民に見られていた様で、領兵とのやりとりも合わせて今回の戦果が漏れた様だ。
それが出入りの業者を通して屋敷にも伝わり、多少尾ひれが付いて俺が一人で無双した事になっている。
やめてくれよぉ。
何でそんなこと言うかなぁ。
まぁやろうと思えば俺一人でも出来たかもしれないんだが。




