192◇岬特訓5
192◇岬特訓5
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船関係の妄想をしているとハンスが呼びに来た。
時計を見ると11時少し前だった。
あわてて妄想を書き散らした紙をストレージに放り込み、ハンスと共に市場奥のフードコーナーに急ぐ。
11時なのでまだフードコーナー周辺は混んでいなかった。
テーブル席も3割程度しか埋まっていない。
魔法組3人と護衛10人は全員揃っていた。
「やぁお待たせ。小舟2隻はどうだった?」
「はい、言われたとおりに揃えられました。3時間ほど順番に漕いで連携の練習もしましたのでそれなりの速度は出ると思います。2隻はこの市場の海側の埠頭に係留していますのですぐに使えますよ。」
「ありがとう。先にちょっと早いけどまず昼飯を食べようか。今日は僕の奢りで好きな物を注文してね。後で申告してくれたらその分を払うから食べた分を覚えておいて。」
マーク以外の12人の浮かれる護衛達は歓声を上げて一斉に店に散らばった。
これからの重労働の為にも今のうちにたんまり食っておきたまへ。
マークとハンスも嬉しそうに店に行く。
俺も今回は自分で買いに行く。
さすがに好みは分かれるので昨日みたいに一括で取って来られると途中で飽きるしな。
固定店の方は汁物や煮物が多いが、屋台の方は殆ど焼き物だった。
中でも目を引いたのはメニューが焼きそばそっくりな店だった。
とりあえず一皿注文して近いテーブル席に着いて食べる。
口に入れて一瞬詰まったが、何とか食べられるのでそのまま完食した。
ソースではなく、魚醤を焦がした様な味に鰹節を細かく砕いたものを散りばめ、青のりっぽい緑の粉末もかかっていた。
要はソースが少し癖のある醤油に変わった様なもんだな。
前世でも焼きうどんの「だし醤油味」がこんな味だったので、そう違和感なく食べられたのは良かった。
麺はちょっとスパゲッティっぽかったけど。
次に違う屋台でホタテの串焼きを買う。
前世でもこれが好きだったのでスーパーの惣菜コーナーでよく買っていたな。
大粒が3個串に刺さってタレの様な液体がかかっている。
囓るとこれも魚醤ベースでどうやらハチミツを混ぜてある様だ。
ちょっと微妙な味だが、ホタテそのものの食感で満足する。
懐かしくて2本買ってしまった。
別な店ではお好み焼きの様なものを売っていた。
この市場なので当然海鮮具材たっぷりである。
まぁ小麦粉と葉物の千切りと海鮮具材が卵をつなぎに混ぜてあるだけなので、似てくるのは仕方がないのだろう。
だが仕上げに上に塗ってあるタレがまた魚醤ベースだ。
なんか前世のサバ缶の醤油味の汁みたいな味だな。
マヨネーズがあったら良かったのにと思う。
これも中サイズを注文して食ってみたが何とか完食した。
もうこれで腹一杯なのでこれ以上食えないぞ。
屋台にコーヒー屋があったのでホットでブラックを頼む。
木のカップに入った状態で出してくれ、カップを戻せば半額返金すると言われる。
近くのテーブル席に座って飲むと、ぎりぎり許容範囲だった。
挽き方がまずいのか煎り方がまずいのかちょっと渋みが強すぎる。
淹れ方にもまだ改善の余地があるな。
ちびちび飲みながら時間を潰し、護衛達が食べ終わるのを横目で眺める。
最後の一人が皿を見せに返すタイミングで俺もコーヒーカップを店に返して半金を貰う。
店の店主は俺みたいな年齢でブラックコーヒーを飲むのを珍しそうに見ていたな。
全員食べ終わったので集合をかけて埠頭に向かう。
その前にマークが精算をお願いと言って来たのでストレージから紙とペンを出して全員に名前と金額を書いてもらう。
今やってもお釣りや小銭が無いので無理だし。
宿かホテルで両替してもらおう。
皆で埠頭の方に歩いて行き、3分くらいで2隻の小舟が見えてくる。
意外と大きいな。
前世の6人乗りゴムボートは全長3mくらいだったが、これは全長5mくらいに見える。
まぁ木造なんでぎりぎりの寸法で作れないからこれくらいの大きさになるんだろうな。
これのオールが乗っていない方に乗り込み、ストレージから予備の折りたたみテーブルを出して船の中央に置く。
テーブルの足下を船底とアース魔法で固めて別に出したロープで舷側の金具と結んで安定させる。
その上にこれまたストレージから出した直径1mくらいの護衛が使っているのと同じ的を2個取り出し、テーブルの上に並べて置いてこれもアース魔法で固めて下の方に穴を開けてロープを通し、テーブルに巻き付けて固定した。
これでかなり撃ち込んでも穴だらけになるのは防げるだろう。
もし小舟に当てたら弁償だな。
的の後ろは射角からして舷側の上になるので的にちゃんと当たれば被害は出ないだろう。
小舟同士の100m牽引ロープは既に結ばれていた。
オールが5本載っている方の船尾の金具と、的を載せた船首の金具に結ばれている。
今は漕ぐ方に丸めて置いてあって、2隻の間隔は3mくらいだな。
ロープには所々に浮きが付いているので沈まないから海底の岩などには引っかからないだろう。
「的の準備は出来たんでいつでも漕ぎ出していいよ。昨日言った手順でお願いね。」
「了解しました。まず私とこの4人が乗って先行します。」
マークが護衛を4人引き連れて先頭側の小舟に乗り込み、マークが舵を握る。
「残りの5人はここで待機。しばらくかかるので市場のフードコーナーで待つ事を許可する。我々が見えたら即時にここに戻ること。」
マークがそう指示し、オールを持つ4人に出発と合図する。
マークは昨日ルートを書き込んだ海図を持っているので、岬を過ぎる前にロープを展開するのだろう。
港を出るまでは2隻間のロープは短いままだった。
俺達5人はすぐに岬に向かって歩き出し、少し小走りで20分くらいで着いた。
海を見ると手漕ぎでは歩く速度と大して変わらないのでまだ岬の沖に着いていなかった。
しかしロープはもう展開している様で、的の小舟はだいぶ後ろにあった。
急いで昨日ガレージに放り込んだバレットM95セットを5組取り出す。
位置も順番も昨日と同じにした。
とりあえず全員にチャンバーから実包を抜いた後にセーフティを掛けさせて、5発装填されたマガジンをM95に装着させる。
これは万が一にも先頭の小舟が眼前を横切る時に発射出来ない様にする為だ。
スコープの倍率を最大の24倍にして後ろの小舟を見ると結構な速度で視界を横切る。
それでは狙いにくいので12倍くらいに戻し、全員に同じ様にさせる。
目標をスコープの中心に捉え続ける様に銃を振るのを「流し撃ち」、 スコープの十字を的の進行方向の少し先に向けるのを「狙い越し」と説明する。
M95標準の2脚では流し撃ちがし辛いので折りたたみ、土魔法でテーブルの上に台座を作ってその上に載せて回す様に言う。
的船が岬の少し手前まで来たのでまず俺が撃ってみる。
小舟は時速5km程度なので30cmほど狙い越しをする。
流し撃ちの姿勢は辛いが、足をよじる様にすることでそこそこスムーズに的を追える。
3発撃って全て船首側の的に当たった。
他の4人はスコープで追ってそれを見ている。
そこで俺の左右の2人ずつに小舟上の2個の的に前後で分散して3発撃つ様に言う。
狙い越しは30cm程度と言っておく。
殆ど同時に4発が鳴り響き、それを3回繰り返して2個の的にいくつか穴が空いた。
スコープで見ると、船首側の的に追加で4個、船尾側の的に3個の穴が開いていた。
まぁまぁだな。
いずれも穴は船尾側に集中していたので狙い越しが少し足りないのかもしれない。
的舟が崖下の海上を通り過ぎたので引き返して来るのを待つ。
その間にチャンバーの実包を抜いた後にセーフティを掛けてマガジンに5発装填させる。
こんな時、魔道ジェットエンジンを搭載して光る魔石通信を応用した魔道ゴーレム操作のラジコンボートがあったらなと思う。
原理的には今思った構成で十分可能だろう。
小舟に実装しても人が乗らないので軽量で速度も出るだろうし、何より安全だ。
うーん、これまた妄想が捗る。
ちょっとだけメモに追記しておこう。
15分ほどして小舟が引き返して来た。
やはり100mのロープの扱いが手間の様だ。
だが安全の為には仕方がない。
そこで再び同じ様に今度は5発ずつ撃ってもらう。
今度は前12個穴追加、後ろ13個穴追加だった。
少し命中率が上がったな。
狙い越しの要領が分かってきたのかもしれない。
今ので1往復なのでマークのこの組はあと2往復だ。
1往復で約30分かかるので3往復で1時間半だな。
次の組も1時間半とすると、日が暮れるまでに4セット12往復24ショット出来る事になる。
さすがにそれだけ撃つと的が穴だらけになって命中が分からなくなるので3往復毎に俺が的の交換に行く。
その前に一往復する度に的に開いた穴に白い紙を貼ってくれと言い、小瓶に入った事務用の糊とメモ用紙の束を渡しておく。
これでだいぶ分かり易くなるだろう。




