177◇さらば僕のなつやすみ
177◇さらば僕のなつやすみ
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冒険者協会の支部長には我々は今日は領主別荘に泊まるが、明日の朝に領都に戻ると言う。
支部長は海賊は今夜は縛ったまま監視付きで近くに転がしておき、明日の朝荷馬車に積んで領都に向かうと言っていた。
本当ならあと2日はこちらに居たはずなのが、自分が原因で強制終了させられた様ななので同行の3人には少し申し訳なく思う。
特にアンナは祖父母の家に行くと言ってたもんな。
まぁ今晩は最後の夜としてちょっとしたディナーを3人に奢ろう。
俺も食いたいしな。
「では一旦ここを離れる。明日の朝また声を掛けに冒険者協会に来るからその時に海賊の状態を教えてほしい。」
「分かりました。今日はこれから海賊どもの聞き取りと水の補給をしておきます。夏なので一晩放っておいても死ぬこたぁありませんし。」
俺達は支部長に挨拶し、冒険者協会から出た。
アンナが別荘に戻っているはずなので俺達も一旦戻るとしよう。
中央通りから別荘街の方に登って行くと、冒険者の漕ぐ小舟4艘が岸壁に着くところだった。
岸壁前に集まっていた30人くらいのガタイの良い男達は、小舟がロープで引っ張ってきた40人近い大量の海賊を前に戸惑っているな。
まぁ冒険者と湾岸作業者の合計70人くらい居るんで順番に海から上げながら縛ってゆけば問題あるまい。
沖の方を見ると相変わらず30cmほど船縁を残して2隻の海賊船は浮かんでいた。
海賊旗がむなしくはためく。
漁船と覚しき船が何隻か拿捕しに向かっている様だ。
無人で放っておいても邪魔になるし、岩礁で砕けでもしたら破片が漁の網を破ったりするしな。
別荘のすぐ下の道を登る頃には小舟の後ろのロープを手繰られて海賊が一人ずつ水揚げされていた。
陸に上がると同時にガタイの良い男4人によってたかってロープで梱包されている。
暴れる海賊は袋叩きにされてぐったりした所を縛られる。
まあ海賊と言っても港湾労働者の腕力には敵わないんだろうな。
各個撃破みたいなもんなんでまだ海中に居る海賊は諦めた様感じでうつむいていた。
別荘に戻り、皆を集める。
ザンドが簡単に説明し、俺が補足する。
この港を出港する外国の大型船が岬を通過する前を狙って、外から海賊船2隻が襲撃して来たこと。
冒険者協会から冒険者が20人くらい小舟4隻に分乗して応戦に出たが、到底勝てそうになかったこと。
俺と護衛2人で岬の突端の崖の灯台の下まで走り、そこで領都で試作中の強力な魔道銃で海賊船を撃ったこと。
30発ずつ撃ち込むと海賊船は船底に穴が空いてほぼ沈没したこと。
外国の大型船はその横を通って無事外洋に出航出来たこと。
海賊は冒険者の4隻の船から攻撃されて降参し、小舟から垂らしたロープに掴まって引かれ、岸辺で個別に縛られて全員捕縛されたこと。
明日、冒険者が荷車に海賊全員を乗せて領都の監獄に移送すること。
俺達4人もそれと同時に領都に帰って父親に報告すること。
「残念だけど今回のバカンスはここまでだね。さすがに明日の早いうちに父上に報告しないとならないだろうし。」
「では今日はこれからどうするんでしょうか?」
「せっかく来たんだ。まだ日は高いのでまた港町に繰り出してお土産を買ったりディナーを楽しんだりするぞ!」
「そうですね。我々の事は支部長しか知りませんので、このまま街に出ても誰もこちらを気にしないと思いますし。」
「そういうことで、ニックとエメリーとアニーには悪いんだけどまたこの4人で出かけさせてもらうよ。」
「はい、承知いたしました。お帰りは夜の8時くらいまででしたでしょうか?
「うん、それくらいまでには帰るからよろしくね。」
まぁディナーを食べられなかったらアンナが膨れるだろうしな。
俺もランチ以上の海鮮を食いたいし。
明日の朝は早いだろうから今日中にお土産も買っておかないとならないだろうな。
再び4人で歩きで街まで降りる。
一瞬馬車で行こうかと思ったが、ドアにウチの紋章が描かれていることを思い出して諦める。
そんな物を見せたらどんな服を着ていても領主一族と判断される。
うん、電動アシスト自転車が欲しいな。
これこそ魔道ゴーレムエンジンの出番ではないのか?
いや、その前に自転車だな。
いやいや今はお土産と海鮮料理だ。
考えるのは後にしよう。
丘を下って中央通りに出て商店の集まっている所に向かう。
海竜亭を過ぎ、冒険者協会の前を通ると建物の横に馬車止めがあり、その隅の塀で囲まれた所に海賊40人が押し込まれていた。
さすがに水揚げした海岸縁に置いておくと、人目に付いて観光都市としては体裁が悪いということだろう。
後ろ手に縛られ、10人ずつくらいの単位で数珠つなぎになっている。
冒険者が何人か聞き取りと補水をしていた。
まぁ口の広い桶に水を入れて頭を突っ込んで飲ませるんだけど。
とりあえずそことは道路を隔てて距離を空けて進む。
少し進むと山側にホテルが何軒かあり、道を隔てて海側に市場があった。
入り口近くに屋台が10台くらい出ているな。
強烈に美味そうな匂いが漂って来る。
俺達は少々運動して腹が減っていることもあって、まずアンナがふらふらと屋台の方に吸い寄せられて行った。
俺も半分無意識に着いていく。
さすがに護衛2人は顔を見合わせて肩をすくめて後ろから着いてきたが。
「おっちゃんこれ...あっ!し、失礼しました!」
アンナがほぼ無意識に屋台で美味そうな焼ける匂いをたてているイカの丸焼きを注文しようとして意識を取り戻す。
俺の方を振り返り、ばつの悪そうな顔をして下を向く。
「おっちゃんこれ、4人前!」
俺が改めて4人分注文すると、何とも言えない表情をして預けてあるお金から支払いをする。
それぞれ1本ずつ受け取り、まず俺がかぶりつく。
それを見て3人も上品に頭の先端からかじり始めた。
うん、美味い。
醤油や味醂の代わりに魚醤と味噌の様な物で味付けしてあるが、日本の屋台で食ったイカ焼きに勝るとも劣らぬ風味がある。
イカ自体も少し違う様に見えるし、それに合わせた調理法なんだろうな。
イカ焼きをあっという間に食べ尽くし、次は小魚の串焼きを買って食べる。
今はだいたい4時くらいなのでディナーにはまだ時間があるのでこれくらいはいいだろう。




