164◇荷馬車満載
164◇荷馬車満載
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前日は早めに寝たので今日も夜明け前には目が覚めた。
周囲を見ると既に全員起きて着替えをしていた。
「おはよう。みんな早いね。」
俺が言うと皆ギョッとした様に俺を見る。
なんでやと思うと、変装が解けて素顔になっていた。
寝て意識が途絶えた時に解除されたらしい。
うーん、これは魔法陣の助けを借りて寝ている間も常時発動する様に要改良だな。
早速マーカス君になって皆を安心させる。
「さて、朝食をもらって出発しましょうか。」
マークの掛け声と共に急いで着替え終わり、荷物を持って食堂に行く。
ジェイムスによって朝食は既に用意され、スープが湯気をたてていた。
「皆さんおはようございます。冷めないうちにお召し上がりください。」
ハリーが声をかけ、4人で席に座って朝食を食べる。
ハリーとジェイムスは昨日と同じ様に部屋の隅に控えて立っている。
まぁマークの身分がバレてるもんな。
平民が苗字持ちと同じテーブルに座るのはリスクでしかない。
封建社会はそういうもんだ。
ハリーは前日にマークに質問を封じられたので今日は何も聞いて来ない。
まぁ俺のことを訝しそうにチラ見していたが、変装に気付かれた様子は無かったので一安心だ。
マークは俺のことを気遣う様に話しかけて来て俺もそれに応えてそれっぽい会話をする。
うーん、完全に親戚の子供だな。
ミラーやスティーブも微笑ましそうに見ていた。
嘘なんだけどな。
食後にハリーとジェイムスに礼を言い、出発の準備をする。
荷馬車の馬4頭は馬屋に入れられてジェイムスが世話をしてくれていた。
荷馬車のワイヤーロックを外し、旗布カバーを外して荷台にまとめて括る。
マーク達が馬を馬車に繋いで準備をする。
用意が済むと、世話になったとマークが言い、俺たちも会釈する。
そして2人に見送られながら管理棟を出発した。
「ふぅ、やっとひと段落だね。これで気兼ねなく話せるね。」
「でもハリー達にはこの空の荷馬車の事は説明していませんでしたよね。かなり不審に思われていたのではないでしょうか。」
「そうだね。だけどあの量をハリー達の目の前で出す方がリスクだよ。13歳の子供がいくら魔法が得意でも保持出来る量じゃないしな
ね。」
「それ、マーティン様が言いますか?まぁ私たちは慣れていますから今更ですが。」
そうなんだよな。
既に散々やらかしているから今更この程度は誤差と思われている節があるんだよな。
まぁ俺自身前世の35歳だった頃の意識がまだ強く残っているから、13歳相当に振る舞う事に未だにちょっと抵抗感があるんだよ。
それで抑えているつもりなんだが、思わずやらかしてしまうんだよな。
さて、今日も良い天気で汗ばむくらいだ。
荷馬車に幌を付けて来なかった事が悔やまれる。
これは本来工作部の近距離輸送用なんで本当に荷台だけなんだよな。
前世の平ボディ(荷台)の1.5トン積みトラックみたいなもんだな。
寸法もそれくらいだし。
馬も元気でポクポクというよりはパカパカ走る。
空荷なんだから当然なんだけど。
そして昼になっていつもの空き地でいつもの昼食を摂る。
ホントにレトルトカレーとご飯パックお願いしますよ神様。
いや、この世界に来てから神という存在に会ったこともないし感じたこともない。
確かに教会があって宗教もあって神事としてのステータスの開陳行事もある。
だがそれが神像の魔道具だってことはアイリスの失言で分かっちまってるしな。
まぁこの点に関しては前世と同じだ。
あっちも言い伝えによる神の奇跡はあるが、今生きている者で見た者は一人も居ない。
でも俺が転生して前世の記憶を持っており、それで散々やらかして成功しているのは事実なんだよな。
トランプや花札みたいに明らかに前世の名残を感じさせる物まであるんで、俺以外にも転生者は居そうだし。
さて、昼飯も済んだことなので荷物を出しますかね。
マーク達に荷台の旗布やロープワイヤー類を退かせてもらい、「ガレージ」の中身を確認して獲物を出す用意をする。
この時点で出すのは少しは時間経過させておかないといくらなんでも不審がられるからだ。
要は夏の直射日光で少し腐らせるってことだな。
先に旗布の半分を荷台に敷いて血垂れの受けとする。
防水処理がしてあるので漏れることはないだろう。
モーリスも貸した荷馬車が生臭くなるのは嫌だろうしな。
仮想ハンドでレッサーベアー特大を掴んで荷台の中央にそっと置く。
サスペンションがあるので端に置くと大きく傾くからだ。
そのすぐ前に同じく大を置く。
その後ろに小を置き、グレイウルフの大と中をまとめて置く。
最後にキラーバード一式を前の方に置く。
これで約1.7トンくらいだろう。
人が4人前方に乗るとちょうど前後のバランスが取れる。
馬がレッサーベアーの匂いを嗅いで少し怖がっているな。
3人がしきりに鼻ツラを撫でて抑えていた。
馬が落ち着いたので全体に旗布を被せ、ロープで固定する。
前後には板を噛ませて少し隙間を空け、中の空気が澱まない様にする。
少しでも腐敗するのを遅らせるためだそうだ。
まぁずっとガレージに入れてあったので新鮮過ぎるんだけどね。
一般の冒険者がどうやっているのかとマークに聞くと、パーティー内の魔法使いにアイス系魔法のフリーズを使ってもらうらしい。
範囲を指定してその中に入っている物の温度を下げるというものだとか。
魔力量と範囲指定内の質量によって下げられる温度と持続時間に制限があり、普通は気温からマイナス15度くらいが限界だそうだ。
俺はアイス系はまだハンスに教わっていなかったので使えない。
だが、前世の知識を利用して熱の移動を意識してみる。
ペルチェ素子に電流を流す感じだな。
自分の手の平にかけてみるとじんわり冷たくなっていった。反対の手で周囲の空気を触ってみると少し熱い。
ウィンドで熱くなっている空気を吹き飛ばすと手の平が急激に冷えていった。
うん、完全に熱移動だな。
原理が分かったので馬車を一旦止めさせ、旗布の前後の隙間を閉じさせて密閉状態にする。
熱移動を意識して旗布の内側の熱を外に移動する様にイメージする。
同時にウィンド系で旗布の上下に常にそよ風が吹く様にした。
これで1時間ほど走ってみて経過を確認しよう。
2つのイメージを常に意識する必要があるのでちょっと辛いが、探索魔法ほど面倒ではないので数時間の持続は出来るだろう。




