157◇冒険者
157◇冒険者
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昼食後、自室で計画書を書き上げた。
同行者はマーク、ミラー、スティーブの3名。
王都より持ち帰った荷馬車で行く。
明後日の早朝に出発して以前行ったことのある魔の森116番ゲートの管理棟で一泊する。
次の日の早朝に魔の森に侵入し、狩りを行う。
獲物はレッサーベアー5頭相当までとし、その量に達したら狩りは終了とする。
魔の森の中で宿泊は行わず、必ず日没までに管理棟に帰還する。
帰還後は管理棟で一泊し、次の日に領都まで帰って来ること。
領都に着く前にガレージより獲物を出し、荷馬車に積み直す。
領都の冒険者協会でマークの冒険者登録証を使って獲物を換金する。
まぁ俺の自由にできるハンティングの初回はこんなもんだろ。
無理をせずに同行者にもメリットがある。
全員89式は使い慣れているので、実戦訓練にもなるしな。
そして俺の事は領主次男ではなく、マークの甥ということにしてもらった。
夏季休暇で遊びに来てハンティングの見学という程だ。
イメージスタンプを俺の顔に転写することで俺だとは全く分からなくなる。
一種のプロジェクトマッピングだな。
常時展開しても消費魔力量は微々たるものなので馬車に乗ったら直ぐに発動することにする。
ここまで書いて父親のところに持って行った。
父親に見せると呆れていた。
「本当にお前一人で行く様なもんだな。護衛の3人には苦労をかけるな。しかも顔まで変えて身分も偽るとは。その顔をイメージスタンプで変えるというのを今やってみることは出来るか?」
「はい、こんな感じですね。」
俺は胸ポケットに入れてあるイメージショットの魔石に記録してある同級生のジャックの顔を少し変形させて自分の顔に投影する。
基準座標は俺の両目と顎に指定してあるので、かなり激しく表情を変化させたり首を振っても投影がずれる事は無い。
「うむむ、完全に別人だな。あの魔石にこんな使い方があったとはな。」
「この方法は内密にお願いします。同行する護衛にも言っておきますので。」
「確かにな。これが広まると犯罪に使われたりするだろうしな。」
「私だけの秘密が増えて申し訳ありません。今回はこの計画でどうでしょうか?」
「うむ、文句の付けようが無いな。だが油断せず気を抜かずにやるんだぞ。」
「はい、念入りに準備をして行って来ます。」
父親のOKが出た事で承認のサインが入った計画書を持って護衛詰所に行く。
マークにミラーとスティーブを呼んでもらう。
「父上から許可が出たよ。これが今回の計画書で僕の立場はマークの甥ということにするから。夏季休暇で遊びに来て、ハンティングの見学について行くという形だね。」
「いやいやいや、マーティン様は有名人ですよ?顔を見れば一発でバレるではないですか。それに私に甥なんていませんよ?」
「顔は変装するから問題ないよ。ほら、こんな感じで。」
魔石のデータを元にプロジェクトマッピングする。
瞬時に俺の顔が変わったので3人共ギョッとする。
表情を変えたり首を振っても違和感は出ない事を見せて元に戻す。
「方法は秘密にさせて。父上には方法を話してこれで許可を貰っているから。あと甥は単なる設定なんで親戚の子でもいいよ。」
「はぁ分かりました。甥ではちょっとまずいので従姉妹の子ということにさせてもらいます。」
「うん、よろしくね、おじさん。」
なんかマークが疲れた様な表情になっているな。
何故かミラーとスティーブが同情の目でマークを見ている。
「では、冒険者について今回に関係しそうな事を教えて。」
「そうですね。まずこの領の冒険者協会は繁華街から東側に少し外れた街道沿いにあります。これは冒険者が獲物を持ち込みやすい様に配慮した立地と聞いています。魔の森で獲物を狩った冒険者は荷車で運んでここに併設されている解体場に直接持ち込みます。持ち込まれた獲物はまず体表の傷や焼け跡を確認し、体長を測定します。次に牙や顎の下の皮膚の状態でおよその年齢を特定し、皮を一部切って武具への適用性を判断します。これで肉以外の査定は終わりです。肉は実際に解体してから鮮度や健康度合いと、市場での供給具合を勘案して重量当たりの単価が決められます。」
「結構しっかりとした評価体制になってるんだね。もっと大雑把なもんだと思ってた。」
「需要と供給のバランスで買い取り金額は変動しますからね。この後には商業者協会が待っているので手は抜けないのですよ。」
「直接肉屋に卸すんじゃないんだ?」
「そうですね。直接卸すと大手の精肉業者が買い占めてしまい、価格も釣り上げられて末端まで行き渡らなくなります。それを憂いた何代か前の協会長同士で話し合い、規模に応じてある程度公平になる様に枠を決めて卸す様になったのです。」
「それで小さい食堂でもちゃんと肉が出せるんだね、」
「それが狙いですね。領民にある程度の公平感を持たせた方が統治しやすいですから。」
共産主義の管理経済政策に見えるが、そもそもここは封建社会だ。
中間でのさばる悪徳商人を抑えるのも領主の人気取りになるんだろな。
「なるほど。では僕らが狩った獲物は領都に着く前にガレージから出して荷馬車に積んで、冒険者協会の解体場に直接持ち込んだらいいんだよね。」
「え、そういえば狩った獲物の持ち帰る方法を聞いていませんでしたが、冒険者がよく使う小型の荷車を何台か魔の森に持ち込むんですよね?」
「え?僕のストレージ魔法のガレージに収納するから荷車なんて要らないよ?」
「でも荷馬車は使うんですよね?」
「あ、説明を端折ってごめん。最初から話すね。まず魔の森には僕が王都から乗って帰って来た荷馬車を使います。あれなら平均的なレッサーベアーをギリギリ5頭くらいは積めます。魔の森の中での獲物は僕のストレージ魔法「ガレージ」に入れます。レッサーベアーなら5頭くらいは入るのでこれで管理棟まで持って帰ります。管理棟で一晩そのまま泊まり、次の日の朝に発って領都の冒険者協会を目指します。昼休憩が済んだ時にガレージから獲物を出し、荷馬車に積みます。これで僕のガレージがバレずに済みます。」
うん、モーリス作の荷馬車に2.5トンは積みすぎだが、サスペンションを半分固定すれば耐えるだろ。
魔法で板バネと車輪の一時的強化も出来るし。
護衛達が呆れた表情をしていたが、俺に付き合うんだからアキラメロ。




