109◇高高度偵察機
109◇高高度偵察機
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魔法団を訪問してのじゃエルフ団長に散々絡まれた後に協力を約束してもらったのでそれはそれで良しとする。
魔法団の高性能馬車はあまりよく見られなかったが、板ばねサスペンションと皮の摩擦によるフリクションダンパー、弾力性のある車輪表面材質による石畳とのソフトタッチが合わさって実現している様だ。
これまた前世の最初期の自動車っぽい構成だな。
実用的な出力を連続で出せるエンジンさえあればすぐにでも自走できそうだが。
そう言えば馬なし馬車?を見せてくれるって言ってたけど結局忘れられちゃったみたいだな。
まぁ忙しい団長様のことだから仕方がないのだろう。
さて、次の日にエドモンドから魔道コンタクターを搭載した機体が仕上がったという連絡をもらったので軍部工場に行く。
護衛2人と俺専用馬車で行くが、これも改良したくなったな。
機会を見て魔法団に打診してみよう。
「出来たぜ。セレクターの接点容量もチェック済みだ。魔道コンタクターもセレクターに接点列を追加してそこで制御線を断続しているが、正常に動いている様だな。補助回路の方に手持ちの魔道ライトを繋いでその点灯具合で見て確実に接点の切り替え時には切れていることも確認した。魔道バイメタル?もスロットル全開では動作しないが、事故などでエンジン筐体と短絡した場合にはちゃんと切れることも確認済みだな。さっきまで機体に積んだままで全開テストをしていたところなんだ。」
「ありがとう!こんなに早く出来るとは思わなかったよ。魔法団に魔道コンタクターをせびった甲斐があったね。」
「うん、だが魔道バイメタルは気温によって動作点が大きく変化するんで最初どうしようかと思ったぞ。魔石部の屋内なら問題にならなかったが、風の吹く屋外ではちょっとしたことですぐに冷えてまともに動かないんだ。君が予熱線を組み込んだ恒温ボックス?の話をしていたのを思い出して組み込んでみたらうまいこといったよ。さすがだな。」
「いやいや、ちょっとした思いつきなんだよ。手は動かないけどアイデアを出すことだけは得意だからね。」
まぁ俺のチートは知識ベースなんで現地のテクノロジーと職人技に全面依存するんだよな。
それでも魔法があるから想定以上の結果になる場合もあるんだけど。
「さて、試験飛行してもいいかな?前回飛んで手応えを感じたんで飛びたくてたまらないんだよ。」
「俺は作るのは好きだが、飛ぶのはどうもな。でも君が楽しそうに飛んでくれるから作った甲斐があるんで嬉しいよ。」
やっぱりエドモンドは高所恐怖症なのかな?
まぁ無理矢理乗せてトラウマにでもなったら今後に差し支えるから無理強いはしないけど。
俺とエドモンド、護衛の2人の合計4人で格納庫から押し出す。
重量が300サブタン(kg)を超えるのでちょっと人力では扱いにくくなっている。
そのうち動力付きのトーイングカーでも作ろうかな?
装備を身に付けて最前席に乗り込む。
あれ、中間席にも操縦桿が付けられている。
操作してみると前席と全く同じ動きをするので今度は中間席に乗って試してみる。
同じ様に前席の操縦桿が同じ動きをする。
最後席には付いていなかったが、そこまでは要らないだろう。
さすがモーリスだな。
前後バランスからして、1人乗りの時は中間席がいいかもしれない。
まず前席に乗って離陸する。
前回やったテスト飛行のパターンを一通りやり、高度1000mくらいで全開テストを始める。
かなりの速度が出るな。
エンジン自体が大型化しているのもあり、1人乗りの時の加速がすごい。
エンジンが大径化しているので効率も上がっているのだろう、最大加速が感じられるノズル絞り径でも騒音がかなり少ない。
これなら高高度での吸排気効率もいいだろうな。
最高速度付近での機体の安定性はまずまずだな。
あれからモーリスには舵角を3割ほど小さくしてもらっているので過敏さも減っていい感じだ。
全遊動式昇降舵の速度域による主翼の擬似的仰角補正も上手いこといっている様で、三角翼の先端の位置でよく分かる。
操縦桿の手応えだけで自然に補正される感じだな。
急旋回をすると少し巻き込む癖はあるが、まぁカイトプレーンだもんな。
エルロンが無いんで機体を急速にバンクさせることが出来ないためだ。
これは操縦の禁則事項で何とかしよう。
高度さえ十分ならリカバリーは割と容易だし。
一旦降りて今度は中間席に座り、離陸する。
ほんの僅か重心位置移動による飛行特性の差を感じるが、感覚で自然に補正できる範囲だな。
一旦着陸して今度はデビッドを乗せる。
高度ナビをして欲しいからだ。
双眼鏡をストレージから出して渡し、工場の建屋の寸法で高度を測って欲しいと伝える。
工場の建屋の長辺は200サブキロム(m)なのは予め中将に工場の図面を見せてもらっていたので知っていた。
事前計算で高度3000m、2500m、2000m相当の時の双眼鏡内部のスケールメモリの数を紙に書いて渡し、この高度になったら声をかけてくれと言う。
デビッドは慣れたもので装備をさっと身に付けて中間席に乗り込んだ。
2人乗るとさすがに差を感じるな。
明らかに動きが重くなる。
まぁ300kgしかない機体に70kgくらいが追加されるのだ。
そりゃー鈍くなるわな。
それなら3人乗ったらどうなるんだ?
後でザンドを後席に乗せて試してみよう。
スロットルを8割程度に開けて旋回しながら上昇し、2500mくらいの高度をデビッドに確認してもらってしばらく周回する。
デビッドは特に気分も悪くないと言うことなんで高山病にはなりかかっていないな。
俺自身も何ともない。
更に高度を上げて3000mにして周回を始める。
デビッドがほんの僅か気分が悪いと言い始めたので高度を2500mに落とす。
やはりこの世界でも2500mを境に高山病は出るんだな。
俺は何ともないんだが、まぁ鍛えられるものでもないので無理は禁物だ。
まぁ高高度偵察は2500mで必要十分としておこう。
最後にザンドも乗せて3人乗りで飛ぶ。
こりゃー貨物機だな。
動きがかなり鈍く、操縦桿も重い。
まぁ重心位置は許容範囲内にちゃんと入っているので補正舵は殆ど当てなくても良いので直線飛行は楽だが。
それでも速度はそれなりに出る。
複座シリーズよりは速いんじゃないかな。
ピトー管は要るな。
今度モーリスに相談してみよう。




