108◇魔通信
108◇魔通信
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のじゃエルフ団長に誘導尋問受けまくっているが、今日来た理由は無線通信だ。
「銃の話は今度実物を見ながらゆっくりしませんか。実は今日来た目的は魔道エアクラフトと地上との間の通信についてなんです。」
「おお、そういえばアポにそう書いてあったのう。今はどうしちょるんじゃ?」
「今はまだ使っていません。先日の国境紛争の時に戦闘中に上空を飛び、敵の伏兵を見つけてその真上で急旋回することで味方にその居場所を教えるということをしました。その時はたまたま兵士の誰かがその意味を汲み取ってくれたので成功したのだと思います。これが例えば声を遠く離れた地上の指揮官に届けられればもっと確実性が上がると思いませんか?」
「確かにのう。声をそのまま離れた所に届けられたら画期的じゃのう。魔法団でも似た様な事は出来るが、予め魔力を登録した相手だけにしか届けられんし、そもそも0.1キロムも届かん。しかも片方向なんで会話にならんし。」
ぞれは確かに使い物にならないな。
一応ランバート・キーとランバート符号を紹介しとくか。
「これ、もうご存知でしたら申し訳ありませんが、光る魔石を使った双方向通信の方法なんですよ。」
俺は昨日書いておいた概念図を見せる。
片方は航空機上で、もう片方は地上だ。
地上局も馬車に搭載して動ける移動局とする。
「試作した物がこちらになります。これは片方しかありませんが、2組使うことである程度長距離の通信が可能になります。」
試作は魔石を贅沢に使ってあるし、光→音変換の段階でだいぶ増幅してあるので飛距離は3キロム程度はある。
実際に送信側のキーを叩いて受信側の音が断続することを聞かせる。
そして、ランバート符号表を取り出して実際に打ってみせる。
「この符号表を覚えるのに少し手間はかかりますが、一旦覚えると受信側で耳で聞きながら紙に書き取れます。これを双方向でやることにより会話が成立します。」
「うーむ、確かにやっていることは従来技術の組み合わせだが、少しの訓練で双方向の意思伝達が確かに出来とるな。よし、これを王宮魔法団で採用しよう。これの権利関係はどうなっとる?」
「一応両方とも王都の商業者協会本部の「商業者新規商品保護登録」に登録済みです。試作は構いませんが、業務に使われる場合は使用の申請をしていただくとありがたいです。」
「うむ。早速試作を作って量産時には申請をさせてもらおう。」
「ありがとうございます。ただ、今回訪問したのはこれの発展型のご相談をしたかったからなんですよ。実はこれの最大の欠点である「対になった光る魔石同士」でしか信号が伝わらないのを何とかしたくて。」
「うん?これで十分なんではないのか?ちゃんと実用的な距離で伝わっておるではないか。」
「それはそれで使えるんですが、例えばこれを魔道エアクラフトに積み、複数箇所の発着場を移動するとしますよね。その場合、魔道エアクラフト側は発着場の数だけ、発着場側は魔道エアクラフトの数だけ対になった組み合わせを持つ必要があるんですよ。今はまだいいんですが、将来的に数十、数百になった場合に実質的に無理ですよね。」
「なるほど、そう言うことか。要はどの魔石間でも同じ信号を送れる様にしたい訳じゃな。魔石を割る時に何か基準になる治具でも作ってそれで合わせると出来るかのう?」
うーん、まどろっこしい。
ちょっと方向性を変えるかな。
「まだ机上案なんですが、魔法陣で光る魔石の同調を変えられませんか?魔力波に干渉する魔法陣なら干渉させると任意の魔力波に変換出来そうな気がするんですよ。これを使えば魔法陣の一部を変更することで同じ魔力波グループにすれば複数の光る魔石同士で伝達が出来る様になると思うんですがどうでしょう。」
「うーん、それはやったことがないから分からんのう。まぁ試してみようぞ。あと、複数が同時に送ると混ざって意味が分からなくならんか?」
「もちろんその懸念は承知していますが、運用上で解決可能です。まず送信側に全て固有の記号を振ります。送信する場合はまず自分の固有記号を送信しその後すぐに返事をして欲しい相手側の固有記号を送信します。適合する受信側はそれを受信したらその送信側固有記号を復唱し、その後で受信側の固有記号を送ります。この時点でお互いに自己紹介と通信開始の合図が済んだ事になります。これを受信した他の機器は邪魔をしない様に送信は控えます。必要な情報を送り合って通信が終了したらその合図をお互いにすれば、混乱することもなくその他の機器も順番に通信は可能になると思います。」
「えらい手間をかけるんじゃのう。それは前世の記憶からか?」
「はい、前世では電気を高速で振動させることで光る魔石と同じ効果を出していました。その時の最初期の段階の意思疎通方法がこれになります。」
実はアマチュア無線モールス通信のアレンジだが、まぁ使っている内に洗練させればいいだろう。
「うーむ、実績があるということか。まぁ訓練だけで何とかなる話じゃからやれば出来るな。うむ。やってみよう。」
「あと、信号の飛距離も問題なんですよ。今のところ私の試作で3キロム程度しか飛ばないので、それも何とかしたくて。」
「それこそどうすんじゃ?巨大な魔石を使えば距離は伸びるが、持ち歩きが困難になるぞ。」
「これも先ほどの魔法陣の応用なんですが、拡声の魔法陣や魔道具ってありますよね。あれは声を受ける魔法陣が受けた空気の振動を魔力の振動に変換し、それをミスリル線で伝えて振動拡大の魔法陣の入力に繋ぎ、再度空気の振動に変換して大きな声にしてますよね。これの振動周波数を思いっきり上げれば光る魔石の送信信号も大きく出来ませんか?あと、ミスリル線を送信魔法陣の後に接続し、長さを適切に合わせればさらに送信出力も大きくなると思うんですよ。逆に受信側もミスリル線で信号を導いてやれば受信感度も上がって通信可能距離が伸びると思うんですが。」
変調・同調とアンテナによる利得だな。
電気回路の原理がどこまで通用するか分からないが、相手は魔法の専門集団なんで焚き付ければやってくれるだろう。
「うーむ、難しいことを言うのう。これは儂も即答は出来ぬのう。だが有用な事は分かった。魔法団の研究課題に入れておこう。」
「ありがとうございます。私一人では行き詰まっていましたので助けていただけるとありがたいです。」
「いやいや、もしこれが実現したら魔法団にも軍部にも多大なメリットがある。お主の異世界の発想が我らの良い刺激になるのう。」
のじゃエルフ団長はまたもやカッカッカッと笑いながら賛同してくれた。




