106◇魔信号
106◇魔信号
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さて、魔石ジェットエンジン関係の作業を振り終わったところで、以前に実用化を計ったランバート・キーを情報局に打診しよう。
情報を伝達するのにやはり無線に勝るものはない。
前世でもワイヤレス全盛だったしな。
今は冒険者組合に預けてあるが、それとは別系統で軍部に打診することにする。
「ねぇ、以前に冒険者協会に預けたランバート・キーってあるでしょ?あれどうなったか知らない?」
エドモンドに聞くと一瞬何のことだという様な表情をしたが、すぐに思い出して預けた相手にその後の事を聞くのを忘れていたと言う。
まぁ俺自身も忘れていた様なもんだから人の事は言えないが。
「冒険者協会に預けたのはそのままでいいから、あれをもう2組作れないかな?ちょっと工夫もしたいんで新たに図面も描くから。」
そう、偵察機と地上との通信をしたいのである。
それには形状をコンパクトにし、機上側のレシーバーはヘッドホンにする必要がある。
逆に地上側は大型化し、アンテナの様な感度向上方法がないか確認したい。
ミスリル線を十文字に張ってその交点にレシーバーを繋げばそこそこ感度は上がる気がするんだよな。
電波の特性とは違うと思うんで、そこら辺は試行錯誤だが。
紙に大体の構成を書き、エドモンドに説明する。
もうそれだけで何をしたいのかは分かってくれた。
通信の基礎となる光る魔石も金には糸目を付けず市場から探してもらうことにし、飛距離を稼ぐ為に2組使って全二重通信とする。
光る魔石は割り方で同期信号の飛距離がかなり変わり、以前中央図書館で調べた時に見つけた本には送信側3に対して受信側1の比率で割ると送受信方向の飛距離が最大になると書かれていた。
これを2組でクロスする様に使って実験する。
「やっぱり上空から地上に連絡出来ないと偵察の効率が悪いんだよね。地図を元にべったり偵察して書き込む時はまだいいんだけど、ちょっと前にあった国境紛争なんかの時に空中で偵察しながらその場で地上の部隊に連絡出来たら敵軍の弱い所を突けたり引きどころを判断する材料になったりすると思うんだよね。あと、地上から偵察機に指示出来ると地上部隊も見たい所の状況が分かるんで有利に戦えると思うんだよ。」
「なるほどな。実際に体験した者の感想は説得力があるな。その時はどうやってたんだ?」
「あの時は大声で叫んでも届く高度じゃなかったから、敵の小隊が側面から忍び寄っている真上で何回か急旋回してみたら意図は伝わったみたいで、何とか対応してくれたね。」
そうなんだよ。
これから半固定翼機化するとハンググライダー系みたいな小回りは効かなくなるので、空中で旋回しても中心位置がよく分からなくなるだろうし。
ただ、光る魔石の大きな欠点である割った対でしか信号が伝達出来ないというのを何とか解消しないと汎用航空通信としては使いにくくなる。
何せ機体の数だけ地上に送受信セットが要るということになるし。
「光る魔石以外にも離れた所に何か伝える魔法か魔道具ってないの?」
「そうだな、高位の魔法使いならコミュニ系魔法のトークで声を伝える事が出来るらしいが、これも相手を特定する為に予め相手の魔力パターンを直接認識する必要があるみたいなんだ。一般人には無縁の能力だな。いや待てよ、以前に光る魔石を魔道具を組み合わせることで代用したという話を聞いたことがあるぞ。確か王宮魔法団が使っていたとか。」
また王宮魔法団か。
でも代用するくらいだから性能はそこそこ出てるんだろうな。
早速情報局の中将に聞いてみよう。
「王宮魔法団には先日伝手が出来たんで聞いてみるよ。僕と直接話してみたいとも言っていたんで、会ってみて話題に出せば食いついてくるかもしれないし。あ、光る魔石の件はそれを聞いてからにするからちょっと待ってね。」
早速中将に手紙を書く。
相手は王宮魔法団の団長様だ。
面識があるとはいえ、アポを取らないと会ってはくれまい。
まぁ相手も俺と「膝を突き合わせて語りたい」と言っていたので無碍にはされないだろう。
中将経由でアポ依頼を出せば国防関連と思ってくれるだろうし。
相手の準備もあるだろうからアポの目的も書く。
現在、魔道エアクラフトで偵察しているが、地上もしくは僚機との連絡手段が無い。
光る魔石で一応簡単な意思表示は出来るが、対になった魔石どうしでしか伝わらないので今後の汎用航空通信を考えた場合に使い辛い。
これを何とかする方法はないか相談させてほしい。
うん、これである程度は食いついてくれるだろ。




