100◇半固定翼機
100◇半固定翼機
============================
次の日の朝、俺専用馬車で情報局に行き、複座1号機を受け取って学園の格納庫まで飛ぶ。
ザンドとデビッドには馬車で学園まで行ってもらった。
学園と言っても授業ではない。
スカンクワークスの部室だ。
部屋に入るとモーリスとエドモンド、その他数人の関係者が図面を見ながらあーだこーだと言い合っていた。
俺が入るなり一斉に何か言ってくる。
どうどうと落ち着かせ、まずエドモンドから話を聞く。
「マーティン、魔石ジェットエンジンのことだが、推力と燃費の両立に困っているんだ。何かいい案はないかい?」
「具体的にはどの部分がネックになっているの?ひょっとして推力を上げるとエンジンに内蔵した魔石の稼働時間が落ちるってこと?」
「おお、そうだよ。何故分かるんだ?エンジンに入れられる魔石の数には限界があるだろう?なのに推力を大きくしろと機体側から要望があるんだ。しかもエンジンの個数は増やさずに航続距離もそのままにだ。無理だろう?」
「うーん、外部魔力貯蔵庫ってのはどうだろう。エンジンの中に入っている魔石に外部から魔力を供給出来る様にする方法だね。魔石が推力を発生している最中は外部からの魔力供給を受け付けないので、エンジン内部の魔石を8分割くらいにして順番に一つだけ推力発生を止めてそこだけに外部からミスリル線で魔力を補充するってのはどうかな。これをぐるっと円周方向に順番に切り替えていくと全体の推力は途切れないでしょう?これなら8分の1は推力は落ちるけど、外部に持った大きな魔石から途切れることなくエンジンに魔力を補充出来ないかな?」
「おお、その発想は無かった!早速やってみるよ!」
エドモンドは部下を引き連れて魔石部の部室に走って行った。
8分割の切り替え制御はどうするんだろ。
魔道シーケンサなんてものがあるのかな?
まさか手動でなんてやらないよな?
「今度は俺の番だ!3人乗りの機体なんだが、これ一人の人間の腕力では扱えないんだよな。色々試作して工夫してみたんだが、2人が乗っている時までは何とか操縦できるが、3人乗ると一人の腕力ではどうにもならなくなる。2人で力を合わせれば操縦出来るんだが、2人の息がぴったり合っていないと危なっかしくて乗っていられないんだ。これ、どうしたらいい?」
試験飛行はスカイコンドルのメンバーが協力しているとのことだが、彼らでも操縦は難しいとのことだ。
やっぱりな。
3人乗りになると機体重量も格段に増える。
翼面積増大とそれに伴う補強。
吊り下げるキャビンの重量増。
エンジン推力不足を補う高出力化による重量増加など。
そろそろ人力でのコントロールバー操作に限界が来るんじゃないかと思っていたら案の定か。
吊り下げ可動結合部の強度にも不安があるしな。
仕方がないな、半固定翼機とも言うべき段階に進めるか。
「その事については僕も以前から考えていたんだ。元々が凧を基本としているからね。凧は2本の糸の操作だけで操縦するから誰でも簡単に飛ばせられるんだ。だけどその凧を大きくし過ぎると一人の人力では扱えなくなるよね。ならば凧はぶら下げる重量物だけを支える役目に限定して糸の端を地面に固定し、小さい凧をくっつけてそれを別な糸で操作すれば自在に操縦出来ると思わない?」
「うーん、言ってる意味は何となく分かるが、実際にはどうしたらいいんだ?」
こうなったらもう出し惜しみをしても仕方がない、やるか、カイトプレーン。
前世のその系統の機体の構成を思い出しながら紙にラフスケッチを書いていく。
主翼は現在の拡大版をそのまま流用。(二重旗布で翌断面は一応作る)
主翼とキャビンを固定する。
キャビンの後方を延長し、水平尾翼と垂直尾翼を付ける。
主翼の中心桁を後部に延長し、垂直尾翼の上端と固定する。
水平尾翼は垂直尾翼に対してT字配置として魔石ジェットエンジンの噴流を避ける。
垂直尾翼の後端には方向舵を付ける。
水平尾翼は全遊動式とし、主翼の仰角補正の代わりに使える様にする。
動翼はワイヤーで遠隔操作できる様に操縦席まで引き回す。
操縦桿として目の前に手で回せる大皿くらいの円盤を付け、左右回転で方向舵、前後倒しで昇降舵の操作とする。
魔石ジェットエンジンは仰角を手動調整可能とし、最適な推力方向を決められる様にする。
こんなもんかな。
本来操縦桿の回転はエルロンなんだが、カイトプレーンにはエルロンが無いので方向舵に割り当てる。
まぁ完全な固定翼機が出来たらまたその時に工夫しよう。
主翼はあくまで今現在の三角形の布張りの翼を使う。
見た目が変わるとせっかく作った複座シリーズが陳腐化して見えるし。
現在の複座2号機から4号機もそのうち翼断面にはしといてあげよう。
あくまでも重量物を支える為に仕方なく取った構造ということにしとこう。
実際に操縦の難易度は上がると思うから、最初は墜落事故も起きるかもしれない。
まぁあまり過保護にしなくてもいいとは思うんだけど。
そこまでラフスケッチを描きながら原理も含めてモーリスに説明すると一発で理解してくれた。
この構造の飛行機なら学生時代にエンジンラジコン機で飛ばしたことがあるから普通の固定翼機よりは安定性はあるのは知っている。
だが、コントロールバーを使うモーターハンググライダーよりは直感的に操作出来ないので操縦ミスで墜落する可能性はそこそこあるな。
その代わり、翼布の許す限り機体を大型化出来る。
目標の6人乗りフライングミニバンも夢ではないな。
「大将、おみそれしたぜ。俺の頭ではついぞ出てこなかった解決策があっという間に手に入った。早速この構造で作ってみるぜ!」
モーリスは部下と一緒に俺の手描きラフスケッチを握りしめて走って行った。
工作部の専用馬車に機材を積み込んでいるな。
たぶん軍部工場の試作機を突貫工事で作り直すんだろう。
出来たら飛ぶ前に見せて欲しいと言っておいたので、致命的な間違いは飛ぶ前に気付けるな。
たぶん昇降舵の接続を反対にするだろうし。




