第10話/通算20話「世界一の百貨店を、俺は小さくする」
第2シーズン「千店舗連合編」
世界一の百貨店を作れば、みんなを幸せにできる。
直人は、そう信じてきた。
人間も、魔族も、エルフも、ドワーフも。
作る人も、売る人も、買う人も。
誰か一人が得をするのではなく、みんなが明日も商売を続けられる店を作る。
そのために、失敗して、学んで、それでも店を開き続けてきた。
けれど、第2シーズンで直人を待っていたのは、これまでとはまったく違う敵だった。
悪徳商人ではない。
巨大な陰謀だけでもない。
直人自身が成功させた、魔王城百貨店。
安くて、便利で、品揃えもいい。
そんな「正しい店」が広がった結果、小さな店が消え始めていた。
さらに現れた、日本語で書かれた《世界流通再編計画》。
この世界には、直人以外にも日本を知る者がいるのか。
そして、世界中の店を巻き込む巨大な流通網の目的とは。
第2シーズンのテーマは、
「店は、誰のものなのか」
世界一大きな店を作る物語から。
世界一多くの店を、生かす物語へ。
直人、リリス、そして仲間たちの商売は、ここから新しい段階へ進みます。
『転生バイヤー、魔王城百貨店をはじめますⅢ』
第2シーズン「千店舗連合編」
開店です。
千店舗連合との戦いは、終わった。
正確には。
戦うのを、やめた。
昨日まで俺たちは、同じ客を奪い合っていた。
魔王城百貨店は大きすぎる。
品揃えが多すぎる。
物流が強すぎる。
だから小さな店が潰れる。
その事実を突きつけられて、俺はようやく気づいた。
世界一の百貨店を作る。
その夢が。
誰かにとっては、世界一迷惑な店を作ることになるかもしれない。
だから俺は決めた。
「魔王城百貨店を、小さくします」
会議室が静まり返った。
リリスが俺を見た。
ゼファーも俺を見る。
千店舗連合の代表たちも、全員こっちを見ていた。
誰も笑わない。
……いや。
ゼファーだけは、ものすごく嫌そうな顔をしていた。
「店長」
「はい」
「昨日、ようやく新しい収益計画を作ったところです」
「知ってる」
「徹夜しました」
「ありがとう」
「今から小さくするんですか?」
「はい」
ゼファーが目を閉じた。
「殺意という感情が、少し理解できました」
「経理担当が覚えちゃいけない感情だと思う」
リリスが口元を押さえた。
笑っている。
よかった。
たぶんまだ殺されない。
昨日の商談で、魔王城百貨店は「店の王様」ではなく「店を支える店」になるという答えへ辿り着いた。
今日は。
それを、本当に形にする日だった。
大きくしないという拡大
「まず、確認します」
俺は地図を広げた。
千店舗連合に参加している店が、赤い印で示されている。
千店舗。
改めて見ると、とんでもない数だ。
これを全部。
魔王城百貨店の支店にする。
少し前の俺なら、それを成功だと思っただろう。
千店舗買収。
千店舗統合。
千店舗すべてに同じ看板。
想像するだけで胃が痛い。
主にゼファーの。
「千店舗を吸収しません」
俺は言った。
「看板も変えない」
代表の一人が聞く。
「商品は?」
「統一しません」
「値段は?」
「それぞれの店が決める」
「仕入れ先は?」
「それも店が決める」
「では、何を統一する?」
「統一しません」
「……何?」
「つなぐだけです」
地図の上へ線を引く。
街。
村。
港。
倉庫。
工房。
市場。
そして魔王城百貨店。
「物流をつなぐ。必要なら共同仕入れを使う。倉庫も貸す。修理も、配送も、決済も支える」
昨日までなら。
店そのものを増やそうとしていた。
でも。
店を増やさなくても。
道は増やせる。
「小さな店が一軒で荷馬車を出せば、運賃は高くなる」
俺は続けた。
「でも十店舗、百店舗、千店舗の荷物をまとめれば安くなる」
代表たちが地図を見る。
「仕入れも同じです。必要なら一緒に買う。でも、何を仕入れるかは店が決める」
「百貨店は命令しない?」
「しません」
「本当に?」
「そこは契約書に書きます」
俺はゼファーを見る。
「お願いします」
「そこで私を見るのは正しい判断です」
「成長したでしょ」
「普通です」
評価が厳しい。
でも。
普通になれたなら、それはかなりの成長かもしれない。
「もう一つ」
俺は言った。
「魔王城百貨店だけで、物流網を支配しない仕組みも作ります」
空気が変わった。
昨日、連合側から突きつけられた問題だ。
今は俺が店長だからいい。
でも。
十年後は?
次の店長は?
物流を握った魔王城百貨店が、突然手数料を十倍にしたら?
誰も逆らえない。
支える仕組みは。
大きくなりすぎれば、支配する仕組みにもなる。
「連合側にも運営へ参加してもらいます」
「我々が?」
「はい」
「百貨店の物流なのに?」
「だからです」
俺は笑った。
「俺たちだけで決められないようにする」
ゼファーが小さく頷いた。
「共同運営組織にするのが妥当でしょう」
「名前は?」
リリスが聞いた。
「名前?」
「必要でしょう」
考える。
千店舗。
魔王城百貨店。
物流。
共存。
支援。
世界。
「世界商業共存物流連合」
沈黙。
リリスが言った。
「長いです」
「じゃあ世界物流連合」
ゼファー。
「大きすぎます」
「千店舗物流同盟」
「戦争を始めそうです」
「店を守る会」
「急に町内会です」
難しい。
「名前はあとで決めよう」
「店長」
「はい」
「そこは丸投げです」
「名前で物流は止まらない」
「会議は止まります」
確かに。
結局。
仮称《共同物流網》。
ものすごく普通の名前になった。
でも。
たぶん。
それでいい。
世界を変える仕組みに、必ず格好いい名前が必要なわけじゃない。
必要なのは。
ちゃんと動くことだ。
千店舗を、千店舗のまま
昼を過ぎても会議は続いた。
揉めた。
かなり揉めた。
倉庫料金。
配送費。
共同仕入れの最低数量。
事故が起きた時の責任。
商品が壊れた時。
届かなかった時。
代金が払われなかった時。
「店長」
「はい」
「昨日の方が楽でしたね」
リリスが小声で言った。
「昨日は理念だけでよかったからね」
今日は現実だった。
世界を変えるのは格好いい。
料金表を作るのは格好よくない。
でも。
たぶん世界を本当に変えるのは、料金表の方だ。
「この地域は配送費が高すぎる!」
「山道なので」
「それでも高い!」
「では冬季だけ共同便を増やします」
「倉庫利用料を下げてくれ!」
「下げられません」
「なぜだ!」
ゼファーが答える。
「倉庫番の給料が必要だからです」
強い。
夢も理念もない。
だから強い。
「店長は無料にしてくれそうなのに!」
代表の一人が俺を見る。
俺は首を振った。
「しません」
ゼファーが俺を見た。
少しだけ目が優しくなった気がした。
たぶん気のせいだ。
「無料にしたら、魔王城百貨店の従業員が食べていけない」
第17話。
あの言葉を忘れない。
店長は街を救うことばかりで、俺たちを見ているのか。
あの時。
俺は自分の正しさで、自分の店を壊しかけた。
だから。
今度は間違えない。
「皆さんの店を守るために、うちの店を潰すつもりはありません」
代表たちは黙った。
「両方が残る方法を作りましょう」
簡単じゃない。
むしろ。
どちらかが我慢する方が簡単だ。
でも。
簡単な答えを選んで失敗したから。
俺たちはここにいる。
夕方。
ようやく。
最初の契約書が完成した。
代表が署名する。
俺も署名する。
千店舗連合。
魔王城百貨店。
敵だった二つの名前が。
同じ紙の上に並んだ。
「これで」
代表が俺を見る。
「我々は魔王城百貨店の店になるのか?」
俺は首を振った。
「違います」
「では?」
「皆さんの店は、皆さんの店です」
それだけは。
絶対に変えない。
パン屋はパン屋。
鍛冶屋は鍛冶屋。
薬屋は薬屋。
親から子へ渡された看板も。
常連客が座る椅子も。
店主が何十年も使った作業台も。
全部。
魔王城百貨店に変える必要なんてない。
「千店舗を」
俺は言った。
「千店舗のまま残しましょう」
代表はしばらく俺を見ていた。
やがて。
手を差し出した。
「よろしく頼む」
俺はその手を握った。
「こちらこそ」
こうして。
魔王城百貨店は。
一店舗も増えなかった。
なのに。
世界で一番大きな一歩を踏み出した。
世界一の意味
魔王城へ戻る途中。
馬車の窓から街を眺めた。
小さな店が並んでいる。
灯りがついている。
客が入っていく。
店主が笑っている。
その景色を見ながら。
俺はずっと考えていた。
世界一の百貨店。
俺は何を目指していたんだろう。
一番大きい店。
一番商品が多い店。
一番客が来る店。
一番売上が大きい店。
もちろん。
それもすごい。
でも。
もし。
世界一になるために。
世界中の店を潰さなきゃいけないなら。
そんな世界一に意味はあるのか。
「店長」
向かいに座っていたリリスが言った。
「難しい顔してます」
「格好いい?」
「便秘みたいです」
「もう少し言い方なかった?」
「悩んでいる顔です」
「先にそっちを言って」
リリスが笑う。
その隣でゼファーが帳簿を見ている。
「ゼファー」
「何でしょう」
「世界一の百貨店って何だと思う?」
「利益が世界一の百貨店です」
即答。
「聞く相手を間違えた」
「なぜです?」
「いや。君はそれでいい」
俺は窓の外を見る。
店が一軒。
また一軒。
馬車の後ろへ流れていく。
「俺はずっと、一番大きな店を作りたかった」
誰に言うでもなく呟く。
「でも、違うのかもしれない」
リリスが俺を見る。
「一番多くの店を生かせる店」
昨日。
俺が見つけた答え。
第2シーズンで直人が辿り着くべき「世界一とは一番大きい店ではなく、一番多くの店を生かせる店」という結論でもある。
「それが世界一でもいいのかもしれない」
リリスは少し考えて。
「直人らしいですね」
言った。
俺は固まった。
「……今」
「はい?」
「直人って言った?」
「言いましたけど」
「普通に?」
「普通に」
「もう一回」
「嫌です」
「何で!?」
ゼファーが帳簿から顔を上げた。
「うるさいです」
「今、重要なイベントが」
「利益になりますか?」
「ならない」
「では静かにしてください」
この男。
恋愛イベントを損益計算するのやめてほしい。
リリスは窓の外を向いている。
耳が少し赤かった。
俺はそれ以上言わなかった。
いや。
言えなかった。
でも。
馬車が魔王城へ着くまで。
俺はたぶん。
ずっと笑っていた。
店の外で
その日の夜。
仕事を終えた俺が帰ろうとすると。
「直人」
呼ばれた。
止まる。
やっぱり。
慣れない。
振り返る。
リリスが立っている。
「何?」
「食事」
「え?」
「忘れたんですか?」
忘れてない。
第10話。
二人で食事へ行くはずだった。
でも。
火事が起きた。
それから。
世界流通再編計画。
千店舗連合。
売上急落。
従業員の反発。
危険な調査。
色々ありすぎた。
「今日?」
「嫌ですか?」
「行きます」
即答した。
リリスが笑う。
「早いですね」
「こういう判断は速いんだ」
「商売でもお願いします」
「善処します」
「信用できません」
二人で街へ出た。
護衛も。
商談相手も。
帳簿もない。
ただ。
俺とリリスだけ。
「何食べる?」
「何でも」
出た。
世界で一番難しい注文。
「肉?」
「昨日食べました」
「魚?」
「昼に」
「麺?」
「服に跳ねます」
「何でもじゃないじゃん」
「何でもいいです」
「条件が多いんだよ」
結局。
小さな食堂に入った。
魔王城百貨店ではない。
千店舗連合でもない。
夫婦でやっている、小さな店。
席は十席くらい。
メニューも少ない。
でも。
うまかった。
「こういう店」
俺は料理を食べながら言った。
「残したいな」
リリスが呆れる。
「仕事の話は禁止です」
「今の仕事?」
「完全に」
「じゃあ何を話せばいい?」
「普通の話です」
「普通って?」
「好きな食べ物とか」
「仕入れ?」
「違います」
「原価?」
「もっと違います」
難しい。
俺。
店がないと会話できない人間になってないか?
リリスが笑った。
「じゃあ聞きます」
「どうぞ」
「店がなくなったら、何をしたいですか?」
前にも聞かれた。
あの時。
答えられなかった。
世界一の百貨店を作る。
それ以外の人生を考えたことがなかったから。
でも。
今なら。
少しだけ違う。
「旅かな」
「旅?」
「うん」
「どこへ?」
「知らない街」
「何をしに?」
考える。
「店を見る」
リリスが頭を抱えた。
「結局、店じゃないですか」
「仕方ないだろ。好きなんだから」
口にして。
俺自身が少し驚いた。
商売が好きだ。
商品が好きだ。
店が好きだ。
でも。
世界中を自分の店にしたいわけじゃない。
知らない店を見たい。
知らない商品を見たい。
知らない人が。
何を欲しがって。
何を作って。
何を売るのか。
それを見たい。
「でも」
俺はリリスを見る。
「一人では行かないかな」
彼女の手が止まった。
「……どういう意味です?」
「そのまま」
「誰と?」
「そこまで言わせる?」
「聞いてます」
強い。
逃げられない。
「リリス」
名前を呼ぶ。
彼女が俺を見る。
「一緒に行ってくれる?」
告白。
ではない。
たぶん。
でも。
仕事の話でもない。
リリスは少しだけ目を伏せた。
それから。
「仕方ありませんね」
と言った。
「一人だと、また無茶しますから」
「そこ?」
「あと、値切りすぎます」
「それは商人として」
「あと、食事を忘れます」
「忙しい時は」
「あと、危険な場所へ一人で行こうとします」
「……」
反論できない。
リリスが笑った。
「だから」
少しだけ。
声が柔らかくなる。
「一緒に行きます」
胸の奥が。
変な音を立てた。
俺は水を飲んだ。
「直人」
危うく噴き出しかける。
「何?」
「最近、私が店長って呼ばないの、気づいてました?」
プロットで温存されていた「店長」から「直人」への呼び方の変化は、二人が恋人から人生のパートナーへ進む重要イベントとして位置づけられている。
「気づいてた」
「嫌ですか?」
「いや」
即答した。
「むしろ」
危ない。
この先は。
たぶん俺の人生でかなり重要な発言になる。
「嬉しい」
言った。
リリスが黙る。
俺も黙る。
隣の席で、老人が盛大に麺をすする。
ずぞぞぞぞ。
雰囲気が死んだ。
リリスが吹き出した。
俺も笑った。
まあ。
俺たちらしい。
小さくなった百貨店
翌朝。
魔王城百貨店の会議室。
壁に新しい地図が貼られた。
千店舗。
でも。
どこにも魔王城百貨店の看板は増えていない。
線だけが増えている。
物流。
倉庫。
仕入れ。
修理。
配送。
決済。
店と店が。
線でつながっている。
「店長」
ゼファーが報告する。
「新体制での利益予測が出ました」
「どう?」
「以前の拡大案より低いです」
「やっぱり?」
「ただし」
ゼファーが紙をめくる。
「安定性は上がります」
「へえ」
「個々の店舗が存続する限り、物流、倉庫、決済などの利用が続く」
昨日、俺が考えた通りだ。
相手を潰して儲けるんじゃない。
相手が生きるほど。
こっちも生きられる。
「悪くない?」
俺が聞く。
ゼファーは少しだけ口元を上げた。
「商売として成立します」
最高の褒め言葉だった。
リリスも地図を見る。
「本当に小さくなりましたね」
「うん」
店舗数は増えていない。
売場面積も増えていない。
看板も増えていない。
なのに。
できることは増えた。
届けられる場所も。
守れる店も。
選べる商品も。
増えた。
「世界一の百貨店を小さくしたら」
俺は笑う。
「前より世界が広くなった」
地図にない国
その日の夜。
俺は一人、会議室に残った。
いや。
正確には。
すぐにリリスが戻ってきた。
「また一人で何かしてる」
「まだ何もしてない」
「その台詞を信用した結果、何回大変なことになったと思ってるんです?」
「数えない方が幸せだと思う」
「私は数えてます」
怖い。
机の上には。
《世界流通再編計画》。
黒外套の男。
日本語。
誰が書いたのか。
何のために作られたのか。
まだ分からない。
第19話の時点でも、《第三実験地域へ移行準備》という記述だけが残されていた。
俺は千店舗連合との事件で分かった物流経路を地図へ重ねていた。
「ここ」
リリスが指を置く。
「変ですね」
「やっぱり?」
商品が集まっている場所がある。
でも。
そこから先へ流れていない。
「倉庫?」
「だと思った」
けれど違う。
記録上。
何度も商品が送られている。
大量に。
食料。
布。
工具。
薬。
生活用品。
なのに。
販売記録がない。
「街じゃない?」
「地図にはありません」
リリスが別の地図を持ってくる。
重ねる。
国境線。
街道。
河川。
山。
何度見ても。
そこには何もない。
「……待って」
俺は計画書をめくった。
第二段階。
競争構造形成。
大型店舗と小規模店舗の対立。
商業依存度上昇。
そして。
第三段階。
一枚。
紙が張りついている。
剥がす。
下に。
文字があった。
日本語。
俺の世界の文字。
《第三実験地域》
その下。
たった六文字。
《商業活動禁止》
「……商業活動、禁止?」
意味は分かる。
だから。
意味が分からなかった。
「何て書いてあるんです?」
リリスが聞く。
「商売を」
喉が乾く。
「してはいけない地域」
「……そんな場所が?」
分からない。
でも。
計画書にはある。
商品が送られている。
なのに売られていない。
地図上には国境すら存在しない。
黒外套の男の声が蘇る。
世界中が一つの店になる前に。
潰す。
俺はずっと。
あいつが魔王城百貨店を潰そうとしているんだと思っていた。
でも。
もし違うなら?
世界中が一つの店になる。
その「世界」の方を。
変えようとしているとしたら?
「直人」
リリスの声。
俺は顔を上げた。
「行くんですね?」
質問じゃなかった。
「うん」
「危険かもしれません」
「うん」
「また一人で行くつもりなら」
「行かないよ」
リリスが止まる。
「一人では行かない」
俺は笑った。
「約束したから」
彼女も少しだけ笑う。
「成長しましたね」
「最近よく言われる」
俺は地図を見る。
何も書かれていない場所。
商業活動禁止。
商品が売られない。
店がない。
商人もいないのかもしれない。
俺は異世界へ来てから。
ずっと。
商品を売ってきた。
届かないなら届けた。
高いなら買える方法を作った。
店がないなら作った。
小さな店が潰れるなら支えた。
商売には。
人を幸せにする力がある。
そう信じてきた。
でも。
もし。
商売をしないことで成り立っている国があるなら?
商品を売らなくても。
店がなくても。
人が暮らしている国があるなら?
そこで俺の知っている「正しい商売」は。
何の意味を持つ?
答えはない。
だから。
行く。
世界一の百貨店を作った俺は、その日初めて。
「店が一軒もない国」へ行くことになった。
第20話 完
第2シーズン「千店舗連合編」完
次回 第3シーズン開幕
世界一の百貨店が辿り着いたのは、
商品を売らない店ではない。
店そのものが存在しない国。
値札がない。
広告がない。
商人がいない。
なのに。
人々は暮らしている。
そこで直人は、生まれて初めて問われる。
「なぜ、お金を払わなければ物をもらえないんですか?」
世界一のバイヤーが。
商売そのものを知らない国に、負ける。
第3シーズンへ続く。




