五十嵐圭太郎の鬱屈③
前回までのあらすじ、俺こと五十嵐圭太郎は神がかり的美少女こと神庭海凪になんやかんやで殺害予告された、以上!!
——というメタ発言はひとまず置いといて、神庭海凪の方はというと残念ながらガチで殺りかねないくらいに殺意の波動に漲っている。
——どこぞの英霊バトロワ系作品のキャラが、「真の英雄は目で殺す」みたいなセリフを言ってたのを思い出す(なお、そのキャラは目からビーム撃つ)が、今の神庭海凪なら本当にできてしまうかもしれない。そのくらいの凄みがあった。
「いいぜ?どうせ出来レースだ。どんなトリックを見せてくれるか、せいぜい楽しみにしてるよ」
——神秘の実在を証明するとは大きく出たが、どうせ単なる手品に過ぎない。暇つぶしくらいにはなるかもな?
久しぶりに面白そうなイベントだ。殺害予告さえされてなければもっと楽しめたものを……
「あぁ、それと吾輩からも言っておく事がある」
「なんだよ?」
どうせくだらねー戯言だ、テキトーに聞き流して——、
「貴様の不幸や諦めを他人に強制するな。己の人生がつまらないのは、貴様自身がつまらない存在であるからと知れ!!」
——今のは流石に聞き捨てならない。すぐにでも何か言い返そうとしたが、そんな気持ちとは裏腹に何一つ言葉が出てこなかった。神庭海凪が去った後には仄かな敗北感だけが心に残る。
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結局、神庭海凪から言われた言葉は授業中も頭から消える事なく俺を苛んだ。お前に何がわかる……??
最も尊敬していた存在を、目標としていた存在をくだらねー理由で失った俺の、何がわかると言うんだよ……!!!!
——怒りだけはどこまでも湧いてくるのに、俺はあの時の言葉を否定する為の材料一つ見つけられないでいた。
そのまま時間だけが過ぎて放課後、言われた通りに屋上へと向かう。もうなんだっていい。神庭海凪が何をしようとも、それを否定すれば終わる話だ。
仄暗い怒りを心の内に秘めて、屋上への階段を一歩ずつ上がっていく。今の俺には、神庭海凪がどのような証拠を提示しようと否定する気しかない。
すなわち、最初から神庭海凪の勝ちはあり得ないという事だ。ざまあみろ。
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「来たか……では、さっそく始めよう」
そう言うが早いか、神庭海凪はおもむろにフェンスをよじ登り始めた。
「ッ!?お前何やって——」
「この高さから落ちれば普通は死ぬ。だが、この下には花壇があり、場合によっては助かる。ならば、カミサマの友達である吾輩が死ぬ道理はない!!」
——この女、イカれてんのか!?いや、最初からイカれてたわ!!電波系だし!!
「ふざけんな!!とりあえずそこを動くなよ!?」
あぁ、もうふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな!!!!
こいつは、こんなくだらねー事の為に命を賭ける気なのか!?そしてその責任の一端は俺にあって……あぁもうそんな事はどうでもいい!!!!もうくだらねー理由で誰かが死ぬなんて嫌なんだよ目覚めが悪いだろ……!!
気が付いたら俺はがむしゃらにフェンスを乗り越えて神庭海凪へと手を伸ばしていた。
「俺の負けだよチクショーめ……!!だからもう馬鹿な真似は——」
神庭海凪の手を取りながらそう言った直後、俺にも奴にも予想外な事が起こった。
——簡潔に言うと、俺が足を滑らした弾みで、神庭海凪の手を掴んだまま、二人とも転落した。
これはガチでマズい!?くだらねー意地の張り合いで二人まとめて死ぬとか、笑い話にもなりゃしない。
たぶんカップルの心中事件として扱われて3流週刊誌に面白おかしく特集されるに違いない。マジふざけんな……
——と、半ば諦めムードだった俺だが、
「ハンブラビっ!?」
なんかプロレス技でもかけられたような激痛で現実に引き戻される。プロレス技というか、これ……
「うわァァーー!?屋上からカップルが振ってきて彼氏の方がキン肉バスターかけられてるぞ!!!!」
——たまたまグラウンドに出ていたと思われる一般生徒の絶叫で事態を把握した。
つまり、神庭海凪と俺は花壇の上に着地して無事だが、不思議な事に俺は神庭海凪にキン肉バスターかけられているって事だ。
奇跡には違いないが、理不尽にも程がある。




