五十嵐圭太郎の鬱屈②
——カミサマの友達?こいつはいったい、何を言っているんだ?最早困惑を通り越して、思考回路が木っ端微塵に吹き飛ぶくらい馬鹿馬鹿しい。
——目の前にいる神がかり的美少女こと神庭海凪を一瞥する。
すらりと伸びた細長い手足に背丈、日本人形を思わせる端正な顔立ち、絹のような黒髪と体格に対して適正な大きさの胸部装甲(←ややぼかした表現)。
見た目だけならまさしく神がかり的な美少女ではあるが、何らかのバランス調整の為なのか言動にマイナス修整が加えられてるかのようだ。
——天は二物を与えずって、はっきりわかんだね。なんか変な笑いが出てきそうだ。
「訳のわからん誇大妄想も程々にな?それじゃ〜俺はここで失礼」
君子危うきに近寄らず、別に俺は君子でもないけど見えてる地雷を自ら踏み抜きに行く程馬鹿でもない。
さて、別に急いではないけど変人はスルーして早く学校に——、
「誰が誇大妄想か貴様〜〜〜〜〜!!」
「ビグ・ザムっ!!」
神庭海凪に背を向けてその場を立ち去ろうとしたところ、思いっきり助走をつけた自転車に体当たりを食らった。明らかに故意だ。
「痛てーなコノヤローふざけんな!!俺は命の恩人じゃなかったのかよ!?」
——理不尽な襲撃に対する怒りと鈍い背中の痛みが綯い交ぜになりながらも振り向いて毒づくが、向こうは悪びれる素振りすらない。
「吾輩を馬鹿にするだけなら別に良い。だが!!貴様は吾輩の友達を否定し、嘲笑った……たとえ命の恩人と言えども許せぬ!!!!」
どうやら、見えてる地雷を避けたつもりが逆に地雷を踏み抜いたようだ。神庭海凪は明らかに怒り心頭と言った様子で、こちらを睨んでいる。友達ねぇ……本当にくだらない。さっき自転車で轢かれたのもあって、無性に腹が立った。
「よほど大切なイマジナリーフレンドだったみたいだな?悪い悪い、お詫びにいい心療内科を紹介してやるよ」
「貴様ッ!!」
「お前さぁ……カミサマなんて本当に居ると思ってるのか?もし居るなら証明してみろよ……」
——仄暗く鬱屈とした感情に任せて残酷な言葉を紡ぐ。単なる八つ当たりでしかない事はわかってたが、くだらない幻想に縋って己の世界観だけで生きてる神庭海凪をどうしようもなく否定したい——、それしか考えられなかった。
しかし、神庭海凪の反応は俺の予想とは大きく異なっていた。
「わかった……この世に神秘は存在すると、証明してみせる!!放課後、屋上に来い。もし逃げたら……貴様を殺して吾輩も死ぬ……!!」
——新学期早々、神がかり的美少女と出会った。そして、殺害予告を受けてしまった。実に嫌なボーイミーツガールだ……




