第八部 第三章
「な、なんで? 」
<疾風>さんが驚いた顔で聞いてきた。
「いやいや、<トゥルーラブ>は脳筋だろ? 過去の<トゥルーラブ>の記憶の映像で見ると、どう見ても<剣聖>は冗談で言っているのに、普通の三倍はある太い木剣を1日に1万回素振りとか言うと、本当にやるんだ。だから、知らないうちに無茶苦茶強くなって……」
「あ、あああああ。空気が読めないからな……」
「冗談で取らないで、手のひらが血まみれになっても振るのよ。しかも、痛みとか感じない性格らしくて。元々は<剣聖>に挑戦してくる煩わしい新人の剣士の相手役にするつもりで、初めて弟子を持ったみたいなんだけど、本当に<剣聖>は人に教えた事が無いらしくて、自分も求道者で無茶な訓練をしていたせいか、かなりの無茶振りの訓練を<トゥルーラブ>にやらせるんだけど、全部素直にやるの、この人」
そう俺が<トゥルーラブ>を指差した。
<疾風>さんとかリリーとかは<トゥルーラブ>と面識があるから、まだなんとなくわかるだろうが、<剣鬼>は明らかに動揺していた。
その顔は見ていて分かる。
多少はスキルコミニュケーターも動いているので、その動揺と衝撃が流れ込んで来る。
多分、<トゥルーラブ>が凄い嫌いなんだと思う。
どうやら、<剣鬼>は<剣聖>と似たような考えで、剣を求道として追及しているらしく、こんな女性を引っかける様な奴は生理的に合わないのだと思う。
それで<剣聖>は怒りで身を震わせている。
しかも、それが納得いかないような目で<トゥルーラブ>を見ているようだ。
「しかし、じゃあなんで、こんな性格に? <剣聖>の性格だとこんな奴は大嫌いだと思うのだが……」
「こんな性格になる前の話だから。素直で脳筋で言う事を聞く性格だったからね」
「ううむ、なるほど」
あんまり変な人なんで、三回目に会った時にスキルコミニュケーターで心を読んで過去を調べたから間違い無いなのだ。
「なぜ! そんな糞な性格になったのだ! 」
何故か剣鬼>が前のめりだ。
「いや、人の過去だし! あまり喋るのも良くないでしょ? 」
「話せぇぇぇぇ! 」
剣鬼>が絶叫した。
いやいや、困ったな。
それで<疾風>さんとリリーを見たら、二人ともコクリと頷いた。
いやいや、あんたらが許しても、本人はどうなんだ?
「口外はせぬ! 話せぇぇぇぇ! 」
剣鬼>が叫び続ける。
殺気立っているから困ったもんで。
どうやら、それなりに俺が過去とか人の心を見れると言うのはヨハンネスに聞いていたらしい。
ついでに、<疾風>さんとリリーも俺に喋れよって顔をしていた。
「<剣聖>を倒してしまった事を悔いている時に、それを慰めてくれた男爵家の寄り親の大貴族の娘さんと一世一代の恋をするんですよ」
「誰? 」
「ダレダ? 」
「言えっ! 」
皆の圧が凄い。
仕方ない。
「失脚した王弟陛下の婚約者」
「「「ふあぁぁああぁぁあああぁぁああぁぁぁぁぁ? 」」」
全員が絶叫した。
あまりにも衝撃的な事実だったのだろう。




