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第八部 第二章

 流石の安定のアホである。


 <剣鬼(シュベーアトガイスト)>がいるのに、ドンドンと歩いて行く。


 それで、あっさりと見つかった。


「なんだ、捕まったのか。残念。<悲鳴(シュライ)>を倒したと聞くから、あんたと戦えるのを楽しみにしていたのだがな。<アチアチカップルのアニサキス>」


 笑いもせずにぼそっと呟くように俺を見た。

 

 凄まじい殺気だ。


 しかも、強すぎる。


 凄腕のリリーと<疾風>さんですらビビるラインだ。


「いや、違うっ! あんたが戦うのは<トゥルーラブ>だ! 俺達を守ってくれるんだ! 」


 俺がそう宣言する。


 ぶっちゃけ、その異様な殺気を引っ込めてくださいと言う気持ちを込めて言った。


 何、この人。


 無茶苦茶怖い。


 真面目に記憶で見た<悲鳴(シュライ)>と戦った時より強くねぇ? 


 なんなんだよと思いつつも、それに勝てるとしたら<トゥルーラブ>しかいないのだ。


「なんだ、お前、裏切ったのか? いや、テンフィンガーだから、裏切ってないのか」


 そう<剣鬼(シュベーアトガイスト)>がイラっとした感じで<トゥルーラブ>を見た。

  

 いい感じだ。


 イライラしているのが良く分かる。


「ああ、そうか。すっかり考えないようにしていたが、<トゥルーラブ>は<剣聖(シュベーアトマイスタ)>の唯一の弟子だったな」


 <疾風>さんが思い出したのか呟いた。


 そうなのである。


 誰もが信じられなくて、それを忘れている傾向があるが、それが事実なのだ。


「馬鹿なっ! あの<剣聖(シュベーアトマイスタ)>の弟子だと? この女たらしのゴミがか? 」


 うわぁ、やはり<剣鬼(シュベーアトガイスト)>が動揺しておられる。


 普通に剣を志す者なら誰もが憧れて、尊敬していた存在が<剣聖(シュベーアトマイスタ)>である。


 剣に命を懸けて、地位も名誉もいらず、最後まで清貧で、憧れの存在だ。


 その存在の唯一の弟子。


 それが<トゥルーラブ>である。


「いや、ガチだよ。ちなみに最後の真剣な練習試合で<剣聖(シュベーアトマイスタ)>を倒したのもこいつ」


「はあああああああああ? 」


「ええええええええ? 」


 何故か、俺が<トゥルーラブ>の記憶で見た話をしたら<剣鬼(シュベーアトガイスト)>だけでなく<疾風>さんも衝撃を受けていた。


 まあ、知られていない事実だからな。


「アレハカタイナカノケンセイダゾ? 」


 そう言う風に、リリーが言う通り、片田舎の剣聖と呼ばれてたんだよな。


 でも、<トゥルーラブ>の記憶を見ると、想像されているのと違う感じだ。


 名誉を嫌って田舎に引っ込んだのではなく、挑んで来る若い剣士が無茶苦茶いて、しかも老人なので、自分の老化から相手にするのが厳しかったからだ。


 日本の剣聖も大多数が皆が老人になり隠遁生活するのはそれだ。


 塚原卜伝もそれ。


 老化する身体で、伸び盛りの若い奴を相手に出来なくなって来るからだ。


 それでも、田舎に引っ込んだのに、そういう勝負を目指してくる奴が多くて、それで困っていたら、才能あふれる男爵家の次男坊と会ったと言うのが真実だ。


 つまり自分の代わりに挑戦者の相手をさせるために鍛えたと言うのが本当だろう。


 <トゥルーラブ>は鈍感なんで気が付いて無いが。


「まあ、確かに、お年を取られていたから、そう言う部分はあるが、そんな事ってあるのか? <トゥルーラブ>だぞ? 」


 疾風さんが異を唱えてきた。


「いや、マジです。過去の記憶で見た。真面目に<剣聖(シュベーアトマイスタ)>の木剣をへし折って重傷を負わせて勝っているんだ」


 そう俺が答えると、<疾風>さんやリリーだけでなく<剣鬼(シュベーアトガイスト)>も凄い顔をしていた。

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