第八部 第一章
ようやく、二階層の一階層へ上がる場所へ来た。
一階層はさらに広々としているから、俺達が一階層に上がれば、すぐに<剣鬼>は気が付くだろう。
すでに連絡が行っている可能性もある。
それで、一階層に行くのを躊躇していた。
そうしたら、来た。
「おいおい、<アチアチカップルのアニサキス>っ! どうして呼んだ時に出て来なかったんだ? 」
来てしまった<トゥルーラブ>。
全力で走って来たらしくて軽く息を切らしているが、脳筋らしく笑顔だ。
「いや、出ていたら殺されていた」
「そんな事は無い。俺がいるんだし」
などと<トゥルーラブ>がほほ笑んだ。
なんだよ、この自信。
こういう所が良く分かんねぇんだよな。
「イヤ、アレハテキダゾ」
などとリリーが話す。
「ワッセナー商会はギルドキングダムの最大最高の商会だぞ? そこの息子さんの<ワールドハイドゥ>の話なんだから、そんなはずは無い」
「ディーデリック・カスペル・ワッセナー伯爵からの話で動いてたんだ。神聖帝国のスパイが<ワールドハイドゥ>に入り込んでいると」
「いやいや、それは取引き相手だから」
「だから、そうじゃなくて、取引先だけど、敵なんだよ」
「リザもいるし、そんな事は無い」
などと<疾風>さんが必死に話すのに話がかみ合わない。
「そうでなければ、俺達が逃げないようにダンジョンの入口を<剣鬼>で塞いだりしない」
「あの神経質な奴か」
「会っとるんじゃないかっ! 」
俺が思わず突っ込んだ。
「当り前だろ。一緒に来たし。<ワールドハイドゥ>のヨハンネスさんがわざわざ呼んだらしい。最強の剣客とか言うけど、あんな神経質じゃなぁ」
などと<トゥルーラブ>が失笑した。
いや、お前が失礼な事をしたんだろうと思いつつ、ある事を思い出した。
<悲鳴>と戦うために徹底的に心を調べたが、<剣鬼>の事をカッとなってイライラしたりしたら、剣がズレる奴と見ていた。
厳しい修練で剣は強いものの、精神が未熟と言う評価だ。
実際、そうなのだろう。
剣先がズレたので、<悲鳴>は助かったのだ。
<剣鬼>の性格が変わっていないのなら……というか、この<トゥルーラブ>のおっさんが神経質な奴って言うって事は、多分、<剣鬼>の性格が変わって無いという事だ。
そもそも、このおっさんは人に配慮するのが無理だから、<剣鬼>が神経質にキレてたんなら、間違いなくブチ切れさせているはず。
あれ?
ひょっとして、<トゥルーラブ>って最強の<剣鬼>を唯一倒せるおっさんなんじゃね?
このおっさん、実はギルドキングダム全体で多分、一番強いかもしれない存在なのだ。
誰もがそう評価したくないので、そう言う事をいう奴はいないが……。
「あのさ……じゃあ、お願いがあるんだけど」
「なんだ? 」
「スキルコミニュケーター、我が言葉をもとに我々を守り通せ。お前の愛を<剣鬼>に見せてやれ」
「……分かった」
かかった。
そうしたら、<疾風>さんとリリーが唖然として俺を見ていた。




