第七部 第九章
「おい! 奴に会う時は気をつけろ! 奴のスキルは非常に特殊だが、恐らく精神コントロールだ! 道理で怪物呼ばわりされるはずだ! 数十年に一度くらいしか、この世界に使える奴が現れないような特殊なスキルだ! 」
ヨハンネスがその渋い声で全員に警告する。
それで、追跡の動きが若干遅くなった。
「参った。ばれた」
俺が呻く。
しかも、こんなしょうもないスキルとか思ってたんだけど、数十年に一度くらいしか、この世に使える奴が現れない特殊なスキルなんて初めて知った。
しょうもないスキルじゃ無かったんだ。
「ソウナノカ! ドウリデワタシガアヤツラレタワケダ」
横でリリーが驚いている。
追手の速度が落ちたので<疾風>さんが地面に耳をつけて探った。
「地下の神聖帝国の特殊部隊の奴等が一斉に上がって来た。まずい! 」
それでさらに走る。
「待て待て! 俺が呼んでくるよ! 説得して連れて来るから! 」
などと低音のイケボイスが響く。
<トゥルーラブ>が言っているらしい。
「ふうむ。良し! 全員はスピードを落として、顔を会わせないようにしろ! <アチアチカップルのアニサキス>が持っているスキルが危険すぎる! なあ、<トゥルーラブ>さん! 仲間の説得だ! 頼めるよな! 」
などとドスの利いた声でヨハンネスが<トゥルーラブ>に言っているらしい。
語気を強めて言っているから、脅しも含まれているんだろうが、そりゃ無駄だ。
「分かってる! 分かってる! 大丈夫だから! 俺の言う事はすぐ聞くから! 」
それに対して、全く気にしないで、低音のイケボイスで答えていた。
「女を紹介とかそう言う事は効くけど、<トゥルーラブ>に脅しとか効かねぇのにな」
などと<疾風>さんが走りながら苦笑した。
「バカダカラカ? 」
リリーが走りながら聞いてきた。
「だから、もう、それだけなんだけど、馬鹿みたいに強いんだよ。あのおっさん」
そう俺が話すとリリーが驚いていた。
糞馬鹿だが、それを補うくらいに強いのだ。
だから、どんな最凶の犯罪組織だろうが、下手したら敵意が丸出しの千人くらいの軍の部隊が目の前にいても平然としている。
「運が良かったのか悪かったのか、これで追撃されずに済みそうだ」
<疾風>さんが地面に耳をつけて確認して、馬鹿みたいに走ってきている<トゥルーラブ>の気配を察知してほっとした声をした。
「いや、どうだろう。これで俺達がダンジョンから逃げたら困るわけだから、何か対策していると思う」
そう俺が答えると同時に、声が聞こえた。
「なんで、俺達がやったらダメなんだ? 」
「奴の持っているスキルが特殊過ぎるからだ」
「逃げられたらどうする? 」
「入口に<剣鬼>がいる。逃げれはしないさ」
「は? 」
「え? 」
ヨハンネスの言葉に俺と<疾風>さんが衝撃を受けた。
この世界で最強の剣の使い手がいると言うのだ。




